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第10話 ミノタウロスロード

「おぅ……女将さん……おすすめはなんだい?」

「おすすめですか? タラのシチューですよ!」

「そうかい……ふふふ……」


 ……なんだ? なんか不気味な声がするな。

 ……ふと後ろを振り向くと、虚ろな目をした男が、女将さんに向かって話しかけていた。

 なんだろう、怖いな……。


「おぅ……女将さん……あんた……『美味しそう』だなぁ?」


 お、美味しそう? 何言ってるんだろうこの人。


「なんだい? ナンパなら他所でやってくれ、あたしゃ売春婦じゃないんだよ」


 ……女将さんは男の言う事を軽くあしらった。

 この男……なんか怪しいぞ?

 ……そんなことを考えていると、男が突然、カウンターを思いっきり叩いた。

 私を含め、客は皆男に注目した。


「な、なんでしょう、あの方……」


 ロープも怯えた表情で男を見つめている。

 あの男、普通じゃない……。


「ちょっとアンタ! 他の客に迷惑だから出て行ってくれ!」


 女将さんは男に向かって怒鳴った。

 彼女の言う事をはもっともだった。

 だが、男は……。


「そう言わないでくれよ……俺は……ここにいる全員を……味わいたいんだああああああああああああああああ!!」


 ……突然叫びだし、頭から角が生え、服がはち切れ灰色の体毛を露わにした。

 男は……屈強な体に牛のような顔の姿に変貌したのだ。

 私はその姿に見覚えがあった、アレは……。


「……ミノタウロス?」


 間違いない、アレはミノタウロスだ。


「きゃあああああああ!!」

「に、逃げろ!」


 店内にいる客が、出口に向かって走り出した。


「さぁ……味合わせてくれよ……」


 ミノタウロスに変貌した男が、そう口にする。

 喋るモンスター……ということは、さっきのゴブリンの仲間!?

 ……って、女将さんが危ない! 何とかしないと!


「とりゃあああああああああ!!」


 すると、突然ロープが走り出し、ミノタウロスに向かって蹴りをお見舞いした。

 ミノタウロスはそのまま吹っ飛ばされ、壁に打ち付けられた。

 す、凄いな……。


「女将さん! 早く外へ!」

「あ、あんたは……」

「いいから早く出て!」

「は、はい……」


 女将さんはロープに誘導され、外へと出た。

 ……こうしちゃいられない! ここは私も!

 私は腕輪を付け、カードを取り出す。


『ジョブチェンジャー!』


 腕輪から軽快な音声が鳴る。

 ……私は剣が描かれているカードを腕輪にスライドさせた。


『ジョブチェンジ! 剣!』


 剣と鎧を装備し、私は攻撃に加勢した。


「ぐはぁ……痛い……痛いよぉ……」


 剣をミノタウロス目掛けて振り下ろすと、奴の体に切り傷ができた。

 奴は呻き声を上げ、苦しみだした。

 攻撃を与えることはできたが、ここじゃ狭いな……。


「ロープ! 外に連れ出そう!」

「はい!」


 私たちはミノタウロスを掴み、出口へ向かって蹴りを入れ、外へと出した。

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