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4 最悪な事態

 俺が家に帰ると、リビングで父さんと杏樹がテレビを観ていた。

「お帰り」

「……」

 黙って俺は、その横を通って店に出た。たいてい、夜は店の手伝いをしている。バイト代もしっかりともらっている。


 キッチンで洗い物の手伝いを始めると、母さんが小さな声で聞いてきた。

「聖。あなた、少し無理してない?」

「え?何が?」

「菜摘ちゃんのこと。結構わざとらしかった」

「何?何が?」

「桃子ちゃんと二人で、行動させてくれって…。見ていてちょっと無理してるなって」

「そのことか…」

 俺は、そのまま黙って洗った食器を拭き出した。

「ね。桃子ちゃん、もしかして、あなたのこと好きなんじゃないの?」

「え?!」

 俺はびっくりして、思わず拭いていたお皿を落としそうになった。


「な、なんで?」

「だって、見ていてそう思ったのよ。それを、あなたが二人で行動したいなんて言ったら、桃子ちゃん勘違いしない?あとで、傷付くんじゃない?」

「……」

 俺は、また黙り込んだ。

「どうするの?こんな形でまるで付き合っているみたいになって、あなた、どうする気なの?」

「どうするって、別に。桃子ちゃんとは付き合うよ。ちゃんと」

「あなた、自分が何をしているかわかっているの?そんな、菜摘ちゃんの代用品みたいに」

「代用品?」

「あ、言い方が悪かった。そうね、代わりじゃないわね。あ、でも、もっと悪いんじゃない?桃子ちゃんのこと利用してる」

「…利用?」

「いくら、菜摘ちゃんのことを忘れるためとは言え、桃子ちゃんのこともちゃんと考えて」

 利用?俺が?桃子ちゃんを?

 しばらく黙って、俺は食器を片付けながら考えた。母さんはオーダーが入り、すぐにそれを作り始めた。その横で、俺はぼ~~っとしながらずっと考えていた。


 客がみんな帰って、店の片付けを俺と母さんとパートさんとでしていた。それが終わるとパートさんは帰って行き、母さんはリビングに上がり、俺にもコーヒーを淹れてくれてひと息ついた。

 だけど、俺はまだ考え込んでいた。

 そうなんだ、一回考え出すとずっと悩んでしまう。だから、いつもそうなる前にリセットをする。

 でも、今回はもう悩み出しちゃっていた。


 黙ったままテレビをぼ~っと観ていると、それになんとなく気付いたた父さんが、

「疲れたのか?」

と聞いてきた。杏樹はどうやら、風呂に入っているようだった。

「いや、別に」

「悩み事か?」

 父さんに聞かれたけれど、何も答えなかった。すると、黙って俺のことを見ていた母さんが、

「桃子ちゃんのこと、まだ考えてた?」

と口を挟んできた。


「桃子ちゃんって、あの小さくて可愛い子か」

 俺が何も答えず黙り込んでいると、父さんは母さんにそう聞いた。

「桃子ちゃんのこと、ちょっと気になって」

「くるみも?」

「ええ。菜摘ちゃんのためにとは言え、桃子ちゃんのこと傷付けたりしないかしらって」

「ああ、そうだな。俺も少し気になった。お前の態度…」

 そう言うと父さんと母さんは、同時に俺のほうに向いた。

 何だよ、父さんまで…。


「あのさ…」

 なんか、だんだん頭に来た。

「俺の問題だし、口出さないでくれない?」

 そう言うと、父さんはそうかって顔をしたけれど、母さんは一気に怖い顔になった。

「聖、自分が傷付かないようにするために、誰かを傷付けるのはよくないわよ」

 いつになく、母さんの口調は荒かった。

「くるみ。そんなに怒らないでも」

 父さんが、そう母さんを宥めようとしたけれど、

「桃子ちゃん、すごく可愛くてとても健気で、それなのに聖は平気で傷付けるようなことを」

と母さんは、言葉を止めずにそのままの勢いで話を続けようとした。


「ちょっと待って!」

 その勢いに負けずと俺は口を開いた。

「傷付けてないから!」

「でも、あんな態度取ったら、桃子ちゃんが勘違いする。あなたが桃子ちゃんのことを好きだって」

「……」

 俺は、多分その言葉に赤くなった。

「なんだ、そういうことか」

「え?」

 母さんは、父さんの言葉に振り返り、父さんを不思議そうな顔で見た。

「ふ~~ん…」

 父さんは、意味深な微笑を浮かべて俺の顔を見ている。


「何?なんなの?爽太」

 母さんは、俺と父さんの顔を交互に見た。

「桃子ちゃんと付き合うの?お前」

「多分…」

「多分って、あなた」

 母さんがまた、俺を怒ろうとしたが、

「くるみ。口出すのはやめようよ」

と、父さんが優しい口調で止めた。

「でも…」

「俺、そんなに生半可な気持ちじゃないよ。そりゃまだ、俺の気持ちは桃子ちゃんに言ってないけど」

「え?気持ち?」

 母さんは目を丸くして、

「でも、あなた、菜摘ちゃんのことが…」

と疑いの目で俺を見た。そして、俺の目をじっと見つめて、心の中まで見透かそうとしているのがわかる。

「そうなんだけど…さ」

 俺は、言葉に困ってしまった。


「これも、全部必要で起きていることだ。ま、流れに任せてみようや。ね、くるみ」

 父さんは、優しく宥めるように母さんにそう言った。

「…そ、そうね」

 母さんは、いまいち納得がいかないようにも見えたけれど、父さんのにっこり微笑んだ顔を見て、

「そうよね。わかった。聖のこと信じる」

と、きっぱりとそう断言してくれた。


 俺は、杏樹の後に風呂に入り、それから2階に上がった。そして、部屋でぼ~~っとしていると、葉一から電話があった。

「あの後、どうした?」

 なかなか話を切り出そうとしないから、俺からそう聞いてみると、水族館には行かずに海をぶらぶらしていたらしい。それからご飯を食べて、菜摘ちゃんは帰ったと答えた。

「そっちは?桃子ちゃんとどうだった?」

「水族館に行ったよ」

「で、これからも桃子ちゃんと付き合うのか?」

「うん。そのつもりでいるけど」

「菜摘ちゃんが、二組もカップル生まれて寂しいってさ」

「何それ?」

「6人ではもう、集まれないかなって言ってた」

「ふうん」

 俺は、それに対してなんのコメントもできなかった。


「なんか、寂しそうだったし、つまらなそうだったし」

「そこをお前が、盛り上げろよ」

「桃子、聖君のことが好きだったから、良かったって言いながらもなんか寂しそうだったよ」

「……」

 なんにも言えなかった。そんなことを言われても、どう答えていいかもわからない。

「こんなこと、今さら言うのもなんなんだけどさ」

「何?」

「菜摘ちゃん、お前のことが好きなんじゃないかな」

「バカ言えよ」

「だって、お前のことばかり話していたし、中学の時から一緒だったって言ったら、お前のことあれこれ聞いてくるしさ」

「……」

 なんで、そんなこと言うんだよ。そんなこと言われても、困るだけだよ。


「お前、本当に桃子ちゃんのこと」

「好きだよ。だから、付き合うよ」

「菜摘ちゃんが、お前のことを好きでも?」

「関係ない。もう、俺、菜摘ちゃんのことはなんとも思っていない」

「……」

「葉一、お前菜摘ちゃんのことが好きなんだろ?もっと、積極的にいけよ」

「うるさいよ」

 葉一の声は沈んでいた。その後は気まずい空気が流れ、どっちからともなく電話を切った。


 菜摘ちゃんが、万が一俺のことが好きでもどうにもならないことだ。さっさと俺のことを嫌うなり、忘れるなり、諦めるなりしてくれなくちゃ…。

 なんか、頭の中がグルグルし過ぎて痛くなってきた。俺は、いつものごとく全部を忘れて寝ようとした。でも、なかなか頭痛が治まらなくて、その日は寝れなかった。


 翌日も休みの日。3連休最後の日だ。

 ゆっくりと寝坊をしてから一階に行き、リビングで軽くトーストを食べた。それから、また自分の部屋に行き、PCを開いた。そして、父さんの「自叙伝」の続きを読んだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 くるみに会いに、五月ちゃんが店に来た。

 俺と友達でいいから、またよりを戻して欲しいと言ってきたから、もう彼女がいると俺は話した。すると、そんなの信じられないと、わざわざ店にまで確かめに来たようだった。


 くるみと俺と五月ちゃんの3人で話をした。いや、話をしたっていうよりは、一方的に五月ちゃんがくるみに言い寄ったって感じだ。

 くるみさえいなかったら俺とは別れていなかったとか、くるみが俺のことを取ったとか、俺のことを私に返してとか、もう、聞いていても呆れるぐらいのことを彼女は言っていた。

 五月ちゃんの一方的な話を聞いている途中に、いきなりくるみは「ごめんなさい」と泣き出した。大泣きだった。


 俺は心配になって、くるみのことを抱き寄せた。くるみは俺の背中に腕を回して、わんわん声をあげて泣き続けた。それを見て、1番興ざめしたのは五月ちゃんだった。

 くるみは、俺のことが大事で、俺がいなくちゃ生きていけないから離れられないと五月ちゃんに言った。五月ちゃんは、くるみが本気で俺のことが好きだとわかって、ちゃんと納得して帰っていった。


 その後、くるみは稔さんと梨香さんに会うと突然俺に話してきた。

 俺とくるみと五月ちゃんの関係が、まるで、稔さんと梨香さんとくるみの3人にだぶって見えたそうだ。

 くるみは、梨香がきっと今でも苦しんでいると思う、大好きな人を苦しませたままではいられないと言った。


 二人のことを憎んでいたくるみは、自分が幸せになることで、二人のことを許せるようになっていたんだ。くるみが梨香さんの立場に立って、俺が稔さんの立場に立ってみて、初めて二人とも悪くなんかないってわかったと言った。

 俺は、全てを許そうとしているくるみをすごいと思った。そして、そんなくるみをちゃんと受け止めて、俺も一緒にその場に行こうと決心した。


 稔さんは初め、俺がその場にいることを気に入らなかったようだ。でも、くるみは俺が一緒にいると、安心するからと言った。

 そして、くるみは二人に謝った。二人を憎んで、二人とも苦しめばいいと思っていたことも、自分勝手だったことも、くるみは正直に打ち明けて謝った。

 そして、二人とも大好きだったということも、ちゃんと二人に告げていた。

「自分は幸せだから、二人も幸せになって。私はもう大丈夫だから…」

 そう言ったくるみは、ものすごく大きくて、優しくて、力強く見えたよ。


 その後、二人がどうしたかは知らない。でも、この前結婚しましたという葉書が送られてきた。ありがとうと書いてあったよ。

 くるみは、それを見てすごく喜んだ。でも返信はしなかった。電話もしなかったし、連絡もしなかった。多分、聖のことがあるからだろうな。聖が稔さんの子だということは、稔さんには言っていなかったから。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ドアをノックして、杏樹が入ってきた。俺は慌ててPCを閉じた。

「あ、怪しい。変なサイト見てたんじゃない?」

「ちげ~~よ。ノックしたら、返事があるまで、開けるなっていつも言ってるだろ!」

「そうだっけ?あ、それより、勉強教えて」

「また?」

「数学、この公式わけわからないんだもん」


「中1レベルでそれは、まずいんじゃね?」

「うるさいな。理数得意でしょ?私は苦手なの。いいじゃん、減るもんじゃなし」

「時間が減る」

「教えて!!!」

 ちぇ、しょうがない。と思いつつ、杏樹の部屋に行って勉強を見てやることになり、「自叙伝」は一回打ち切ることになった。

 時々こうやって杏樹は甘えてくる。素っ気無い態度は取っても、可愛い妹だと思っているから、俺は杏樹の甘えについ答えてしまう。いや、多分心の奥では、頼られるのを喜んでいるんだろうな。


 6時、店に出て手伝いを始めた。ランチとティータイムが混むうちの店は、夜はわりと空いている。それでも連休中だからか、今日は夜になっても満員だった。


 母さんとも、パートさんとも話をすることなく働いて、8時半にようやくひと段落ついた。

「ほら、今のうちに食べちゃって」

 俺の夕飯を母さんがカウンターに持ってきて、俺は食べ始めた。

 夕飯のビーフシチューを食べながら、俺はキッチンで忙しそうに動いてる母さんを見ていた。母さんはすげえな。稔って人も、梨香って人も許しちゃったんだ。いっときは、死ぬほど辛い思いをしただろうにさ。


 夕飯を食べ終え、店の片付けも終わってリビングに戻ると、携帯に着信があることに気が付いた。履歴の名前を見ると、葉一だった。

 俺は、部屋に行ってから葉一に電話をした。葉一は、今から駅の方に出て来ないかと言ってきた。声からして、かなり深刻な感じだ。

 また、菜摘ちゃんがらみのことだろうなとピンときた。

「ちょっと、葉一と会ってくる」

 俺はすぐに1階に下り、母さんにそう告げて玄関を出た。


 駅までは、歩いてそんなにかからない。少し早足で駅まで行くと、駅のまん前のコンビニで葉一は雑誌を読んでいた。

 コンコン。外から店のガラスをたたいた。俺に気付いた葉一は、雑誌を棚に戻してコンビニから出てきた。

「何?こんな時間に」

 もう、9時半は過ぎていた。

「ああ、わりい。ちょっとさ」

 そう言いながら俺たちは、海に向かう道を歩き出した。


「俺、今日、新百合ヶ丘まで行ってきた。菜摘ちゃんに会いにさ…」

「そうなんだ…」

「それで、告ってきた」

「は?」

 いきなりの展開で驚いたけど、やるじゃんって内心思った。

「で…、ふられた」

「…え?!」

 これまた、いきなりの展開というか、なんというか。いや、なんて言えばいいかわからず、俺は黙っていた。


「それがさ。好きな人がいるって言われてさ…。誰だと思う?」

「…さあ?」

「聖、お前だって」

「はあっ?!!!」

 もう、頭の中は真っ白。言葉を返すどころじゃない。

「お前には黙ってて欲しいって言われたけど、俺、言っちゃったんだ。聖は、俺が菜摘ちゃんのことを好きだって知って身を引いただけだ。聖も、菜摘ちゃんのことが好きだよって」

「な、なんでそんなこと?!」

「でも、菜摘ちゃんは、桃子に悪いからって言ってた」

「……」

 まだ、頭の中は真っ白だ。


「だけど、好き合っているのに、お互い誰かの犠牲になってるなんておかしいだろ?俺、聖は桃子ちゃんのこと本気じゃないって言った。桃子ちゃんが、聖のことが好きだって知って、それで付き合うことにしただけだって」

 何だよ、それ…。なんで勝手にそんなこと。

「だから、そんなの聖のためにもならないって俺、言ったんだ」

 ちょ、ちょっと待てよ。

「菜摘ちゃんはそれ聞いて、泣いてた。自分がもっと早くに素直になっていたら、桃子も傷付かないですんだのにって…」


「ちょ、ちょっと待て」

 俺は、ようやく口から声を絞り出した。だが、葉一は聞いていない。

「だから、お前はもう無理しなくてもいい」

「無理って何を?」

「好きな子は菜摘ちゃんだろ?無理して桃子ちゃんと付き合わなくても」

「違うよ!桃子ちゃんが好きだって言ってんだろ?」

「そんなの、まるわかりだ。見ててわかるんだよ。何年お前の友達してると思ってんの?昨日だって、見え見えだった。いきなり二人で行動したいって何だよ。お前の性格から言って、例え付き合い出しても、彼女より友達を取る。4人で行動するようにするだろ?」

 た、確かに昨日のは不自然だった…とは思うけど。


「俺のためだろ?聖」

「桃子ちゃんとは、別れる気はない」

「なんで?」

「傷付ける気もない」

「菜摘ちゃんは?」

「桃子ちゃんが好きになったんだよ。悪いかよ」

「悪いよ。そんな見え見えの嘘」

「嘘じゃねえよ」

「だったら、証拠見せろよ」

「はあ?!」

「お前見てりゃわかる。お前と桃子ちゃんが一緒にいるところ見ていたら、お前が本気かわかる」

「まじで?何言ってんの?」


「また、6人で会おう」

「は?」

「そこで、俺、お前と桃子ちゃん見てっから」

「6人って、菜摘ちゃんも呼ぶのか?」

「呼ばなきゃ不自然だろ」

「でも、来るのか?」

「来るよ。菜摘ちゃんも、それ、確かめたいって思ってると思うよ」

「……」

 ああ。思考回路が止まったままだ。なんで、そんなことになってんの?


 どすん…。気持ちが沈む。

 俺は、葉一が帰った後も、一人でしばらく海を眺めていた。


 それから、桃子ちゃんに電話した。そして、葉一が言っていたことを全部洗いざらい話した。

「菜摘が?聖君のこと?」

「うん」

「じゃ、私に遠慮して、ずっと…」

「桃子ちゃん、ごめん。今はそのことより、ちゃんと俺のことを菜摘ちゃんが、諦めてくれる方を考えないとならないんだ」

「え?あ…。そうだよね」

「あのさ。変なことお願いするけどさ…」

「え?」

「6人で会ったら、俺と付き合っているってそう話を合わせて。それで、仲良いふりしてくれないかな」

「うん…」


 俺は言ってから、なんか変なことをお願いしていると思った。そもそも、俺、桃子ちゃんが好きになっているし、そんなことをお願いしなくても、自然に振舞っていたらいいんじゃないのか?

 っていうか、桃子ちゃんにそんな「ふり」をお願いしなくても、好きだから付き合ってって言えばいいことじゃないのか?

 いや、この状況でそんなことを言っても、桃子ちゃんは遠慮するかな。菜摘ちゃんに悪いとか言い出すかもな。


「ど、どんなふうにしたら、仲良く見えるかな?」

「え?」

「私、どうしたら…」

「あ、ああ。そうだな」

 俺の考えている間中、桃子ちゃんは別のことで悩んでいたのか。かなり声が低い。すごく不安そうだ。

「普通でいいや」

「え?」

「普通にしてていいよ。でも、なるべく俺のそばにいて」

「う、うん…」

「変なこと言ってるよね、俺。ごめんね」

「ううん。全然…」


「じゃ、えっと、多分会うのは、来週の週末かな」

「うん、わかった」

「学校で、会うんだよね?菜摘ちゃんに」

「ん。大丈夫。何も聞いていないふりするから」

「ごめんね、なんか、嘘ばっかりつかせてるね」

「いいよ。大丈夫」

 電話を切った後にも、後味が悪いような変な気持ちだった。

「あ~~~~あ、星綺麗じゃん」

 空を見たら、星がいっぱいでやけに綺麗だった。

「これ、母さんが言うように、利用してるってやつかな」

 俺は、なんだか、桃子ちゃんにものすごく悪いことをしている気持ちがしてきた。

「てかさ~~、なんでふり?」

 頭を抱えた。また頭痛だ。なんだか本当に、変な方向にどんどんいっている気がしてならなかった。


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