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九話

「そんなこと言われたのはじめてだ。・・・すごく、嬉しい。ありがとう。」


今いる騎士は、ほとんどが前国王・・・私の父に忠誠を誓っていた。前国王が崩御した今、形式的には私に忠誠を誓っているが誰も心からの忠誠じゃない。上っ面だけだ。今まではそうだった。

でも彼は、ルーカスは形式的ではなく、心から私に忠誠を誓ってくれた。

嬉しくて思わず涙が出てきた。


「これからも、よろしくな。」

「はい。よろしくお願いします。」


落ち着いてきたら、なんだか急に恥ずかしくなってきた。

ちょうど魔物が出てきたのでそいつと戦うことで気を紛らわせることにした。


「ルーカス、敵だ。」

「ですね。今回のは・・・陛下にお任せしても?」

「構わないが・・・大丈夫か?」

「先ほどの術で魔力を多く使いまして。その反動がちょっと来てしまっただけですよ。」

「そうか。では後ろで休んでろ。」


そう言うと彼は薄く微笑んだ。今気がついたが、顔がいつもより青白い。本人はちょっとだと言っているが本当はなかなかに辛いんじゃなかろうか。

私は彼に魔力回復薬を渡した。


「これを飲んで休んでろ。」

「ありがとうございます。」

「さてと。じゃあ、いくか!」

雷槍(サンダー・ランス)


その途端雷を纏った紫の槍が敵を貫いた。


「一発か。あんま強くないな。」

「おそらく本隊はまだここまで来ていないのでしょう。ですが時間的にそろそろーーー『伝令!全ての冒険者、及び衛兵、騎士は全員南門に集まれ!繰り返す、全員南門に集合せよ!』

「来たな。本隊だ。ルーカス、いけるか?」

「もちろんです。」


ルーカスは片側の口角を上げた。


「真っ黒な笑みになってるぞ。」

「陛下こそ、真っ黒ですよ。」


おや、気がつかなかった。いつの間にか私も片側の口角を上げていた。

我ながら真っ黒だな。


『テレポレーション』


「お、来たか。」


さっきのSランク冒険者だった。


「えぇ、本隊ですか?」

「あぁ、まずいことになった。」


私は目を細めた。


「どういうことです?」

「敵が統率の取れた行動をしている。今までの魔物は身体能力は高いものの、統率が取れてなかったからまだ倒せていた。だが・・・」

「統率・・・ですか。」

「別の種類の魔族が手を組んでいる。」

「なるほど。」

「一体なんなんだ。今回のスタンピードは・・・。」

「おそらくですが今回のスタンピードは人為的なものです。」

「なんだと!それは本当か!!」

「魔物たちの周りの魔力の流れに不自然な流れ方がちらほら。おそらくですが・・・」

「誰かが操っている、か。」


もしそうだとすると黒幕はたいそうな実力者だ。私が知っている中でそんなことができるのは・・・


『ルーカス、今回のことはおそらく国際的な問題につながる。』

『そう・・・ですか。』


「本体の数はどれくらいです?」

「十万以上だ。」

「その数だとここの冒険者たちでは無理ですね。騎士や衛兵も守りきれないでしょう。」

「あぁ、撤退させるべきだろう。Sの冒険者で時間を稼いで・・・」


そのやり方だと少なからず被害が出る。Sの冒険者を失うのは戦力的にきつい。

しょうがない・・・。隠していたかったけど・・・。


「Sランク冒険者が稼ぐ必要はありません。」


そう言うと、目の前の冒険者は顔を顰めた。


「何をするつもりだ。」

「私が、時を稼ぎます。」


目の前の冒険者だけでなく、ルーカスやギルドマスターまで目を見開いた。


「しょうがありません。私の、冒険者シャドウの全力をお見せしますよ。」

「お前、本当にシャドウ・・・なのか?」

「えぇ。」

「だがそれでも十万は・・・!」

「これ以外の策では少なからず犠牲が出ます!今の時代、戦力は残しておかねばならないんです!!今回の指揮官として、私に突撃命令を。」

「・・・。分かった。冒険者シャドウ、突撃命令を下す。」

「お任せください。」


私は門の方を向いた。すぐ近くに魔物の大群が来ている。


「国民の皆さんには、指一本触れさせません。」


私は静かに殺意を燃やした。


「あなた方を、あなたを敵と認定します。」


あいつらは国民を傷つけた。この国を傷つけた。


「あなた方は国民を傷つけた。その罪は万死に値します。」


絶対に許さない。そしてこれ以上傷つけさせはしない。

お前らには死を持ってその罪を贖わせる。手加減も同情もしない。

この国に手を出したことを、後悔させてやる。

魔物にも、黒幕にも。

私は魔物たちを、今回の出来事の裏にいる黒幕を、睨みつけた。


「恐怖のどん底に叩き落としてやる。首を洗って待っていろ。」

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