六話
魔物のことを私たち人間はランクで分けている。冒険者と同じくS〜Fランクまであり、その上が魔王だ。主に見かけるのがF〜Dランク。またAランクまでは同じランクの冒険者の四人パーティーであれば倒せる。問題はSランクだが、スタンピードの時ですら滅多に出てこない。私たちの目の前に現れたのはFランクが五体、D・Eランクがそれぞれ三体ずつ、C・Bランクが二体ずつ、Aランクが一体。こちら側にはBランクの冒険者パーティーがいる。おそらく問題がないだろう。
「ルーカス、我々は補助に回ろう。」
「了解しました。私は彼らが取りきれなかった敵を相手にしていますね。」
「あぁ。」
私は魔法使いらしき冒険者の元へ行き声をかけた。シャドウの姿ではなく、本来の姿でいくことにした。余計な魔力は使いたくない。
「初めまして。私も魔法を使えるのでお手伝いしますね。」
「ん。」
魔力温存、後々に備えて全力は出さずに弱目の攻撃魔法を放った。
魔物にも属性がある。反対の属性を当てることで少し効果が上がる。今回は火、炎属性が多いので水、氷属性を使った。
『アイス』『ウォーター・アロー』
魔物たちをほとんど倒せた、そんな時、断末魔のような声が聞こえた。一体何が・・・。
「あの声、俺たちのパーティーの前衛職の、声だ。」
魔法使いが言った。
「ここで待っていてください。ルーカス、下がって。この人の近くにいて。」
「はい。」
「だ、大丈夫か?一人で、向かう気か?」
「えぇ。」
魔法使いは眉を八の字に曲げた。
「問題ありませんよ。」
「そう、か。」
風で足を速くし、声の聞こえた所へ向かった。そこに居たのは、
「嘘だろ。なんでオーガがこんなとこに・・・。」
オーガ、人のような見た目にツノが生えた魔物。鬼人とも言う。Sランクの魔物。迷宮の最深部にたまにいる、くらい珍しく、恐ろしい魔物。普通、こんなとこにはいないのに。
オーガは武器を振り上げた。その下には、冒険者がいた。
「っ!『アースウォール』!」
私は咄嗟に土の壁を作り、風で冒険者に近づき、抱えて安全なところへ運んだ。ルーカス、魔法使いがいるところだ。
「オーガがいた。すぐに逃げろ!今すぐに!」
〜ルーカスの視点〜
「オーガがいた。すぐに逃げろ!今すぐに!」
オーガ。まさかこんなところにいるとは思わなかった。
魔法使いは前衛職の男を抱えて去った。私たちも早く逃げなくては。
「さぁ、我らも早く逃げましょう。」
「いいや、逃げるのはお前だけだ。」
「いけません!!危険です!!」
「私はここに残る。」
「なぜです!?」
陛下はうつむいていった。
「ーーけど、ーーーから。」
うまく聞き取れなかった。
「え?」
その途端、陛下は顔を上げた。力強い目をしていた。
「私はお飾りの王だけど、この国の民を私の命の限り守ると決めたから!」
逆光が陛下を照らした。私には、国の民を守ると言った陛下が神々しく見えた。
あぁ、私はこの方に仕えるために騎士になったのか。命をかけて守るに値する彼女に仕えるために。
「私もついて行きます、陛下。国民を守るあなたを、私は守ります。私はあなたにーー」
その言葉を遮ったのはオーガだった。恐ろしいほどの巨体。でももう私は恐れない。
私は命をかけてでも守りたい人を見つけたから。