トイレで低温やけどは恥ずかしい
更新遅くてすいませんm(_ _)m
最近は寒くなって来たし、やっぱりもう一枚羽織るんだったかな、と後悔しながら学校につく、教室では朝一で用務員さんがつけてくれるストーブが待ってるはずだ。
私は菅野 瞳、ここ県立花摘高校に通う高校2年生だ。
教室につくと、いつもの光景があった。
「マジでキモい。さっさと消えれば」
「ホント、さっさと消えなよゴキブリくん」
「…ボ、ボクはゴキブリじゃ、ありません」
「うざいんだよっ、口応えすんなし、黒光りヤロー」
数名の女子が一人の男子生徒を囲んでいじめている。いじめられているのは、最近、転校してきた井伊 ナリオくん、お父さんが東南アジアのどこかの出身でお父さんも中東とのハーフだかで、本人は混じりのクォーターだと自己紹介で言っていた。実際、少し日本人離れした目鼻立ちでやや背が低いけれど、浅黒い肌のイケメンだ。
いじめてるのは、このクラスのカーストトップに君臨する女王様、底伊地 環菜とその取り巻きたちだ。
元々、転入した数ヶ月前は彼は人気者だった、背こそ高くないがほっそりとして、パッチリとした目に細く高い鼻で、アラビアンとかオリエンタルとかそんな感じがする、よくわかんないけど日本人ぽさも少しあって、でも日本人ぽくないイケメンで、しかも大人しい性格でとても優しい、そらモテる。
しかし、あろうことか彼は環菜さんの誘いをみんなの前で断ってしまった。
「あんたさー、カッコいいじゃん、私が付き合ってあげるよー」
ある日、唐突に宣言された付き合ってあげる発言にクラス中が、またか、と思った。
彼女はかなり良いとこのお嬢様で我が儘放題に育てられたらしく、自分の思い通りならないことなどないと思っている口だった。
以前、クラスメートの彼女持ちに同じ発言をして、
「俺、彼女いるから」
と断った彼を取り巻きを含めた数人で徹底的にいじめ、付き合っていた彼女ともども不登校にしたことがある。彼女の両親は地元では知らない人はいない名門で、地方議員や地銀の頭取などを親戚一同で固めている。逆らうのは悪手とわかっているため、学校も見てみぬ振りを貫いた。
「ボクはまだこっちに来たばかりですから、彼女は作りません、それにあなたはよく知らないし」
それは正直な思いだったのだろう。事実しかいっていないのだから、プライドの高い環菜嬢は転校生に群がるクラスメートをバカにした目でみて、加わろうとはしなかったし、突然の発言まで自分から関わることは一切無かったのだ。
だからこそ、私たちクラスメートは失敗したと思った。誰か忠告しているだろうと思って、誰も話題に出さなかったんだ。あの女王様が挨拶に来ない転校生を許してるのは、誰かの入れ知恵ですでに挨拶していると思い込んでいたからだ。
実際には気まぐれな女王様が告白のタイミングを見計らって気にして無かっただけだった。
最悪だった。環菜嬢は怒り狂い、あんたみたいな肌が黒い奴と付き合ってやるっていってんのに、と逆ギレし、さすがに頭に来たのだろう彼は一言、あなたみたいな性格悪い人ははじめてですと、そう言ってしまったのだ。
それからは彼は針の筵にくるまれた生活を送っている。
「また、変なキーホルダーつけてるし、ねぇ、きしょいから捨てていい」
それは彼がこっそり告白された女子から貰ったものだった。環菜嬢はそれを知った上で言っているんだろう。
「これはダメだよ」
「なんでダメなのっ、ゴキブリのくせに生意気ね」
そう言って、引きちぎろうとする環菜嬢、もう十分だ、見てられない。誰かあいつらをどうにかして、
「その叫び、このう○ちくんが受け止めたよ」
少し間の抜けた声と、それ以上に間抜けな、ボヨヨーンという音が教室に響きわたり、みんなが音の発生現と思われるあたりに注目すると、盛大な7色の煙がボッと立ち上がりそのあと、金色の光とともに、身長150センチほどの金色に輝くう○ちとしか形容出来ない何かが現れた。
「猫の奴隷神様の化身、悲しみと怒りに覚醒する正義のヒーロー、みんなが大好きう○ちくんだよ」
う○ちくんだよ。じゃない、多分だけど大好きなのは小学校低学年までだ、それ以上で大好きだと公言するヤベー奴なんかいないし、もし、隠れて好きでもかなり特殊な性癖だ。
というか、なんなんだ、猫の奴隷神って、う○ちが化身の神って、もしかしなくても、その神が産み落とした猫糞じゃないよね(ニアピン)。
「うわ、くっさ、消えろよう○こマン」
環菜嬢が辛辣なんだか、見たままなんだか、判断つかない悪態を放つ。
「恋心が敗れたからと卑劣な手段で復讐をする。ぬくぬくと温か便座の上で楽してる君はいずれお尻が低温やけどになるよっ!!」
いや、言いたいことはわからなくない、家柄に甘えて世間舐めてると、いつか痛い目見るよってことだとは思うが、例えが上手いんだか下手なんだか微妙過ぎる。環菜嬢が反応しづらくてフリーズしてるのを、会心の一撃が決まった風にドヤ顔しないで欲しい。
「こ…恋心が敗れたって、いつ、わたしが敗けたって言うのよ、何月何日の何時何分何秒よっ!!」
「…小学低学年かな」
結構効いていたようだ、名言風なセリフではなく、ただの事実の指摘の方だったけど、そして、なにげにナリオくんがボソッと反撃に加わっている。
「小学校低学年ってなによっ!!」
「落ち着いてください環菜様、あんまり怒ると事実と疑われますっ!!」
「顔と家柄しか取り柄ないから、事実を言われると怒る奴だと思われてしまいます!!」
あれ、おかしいな、取り巻きからも反撃されてる。
「ちょっと、あんたたち、どっちの味方なのよっ!! てか、顔と家柄しか取り柄ないってなにっ!」
「いや、純然たる事実でしょ」
ナリオの反撃が止まらない、そしてう○ちくん放置も止まらない、ドヤ顔ポーズのまま、すでに涙目だ。メンタル弱すぎないか、このヒーロー(笑)
「むきーっ(#`皿´)」
「むきーっ(#`皿´)」
なぜか、環菜嬢とう○ちくんが同時にキレた(笑)
「ちょっといい加減にしなさいよ。変なう○こは出てくるわ、ゴキブリはわたしに歯向かうわ」
「いい加減にするんだ。呼ばれたっきり放置とか、ヒーローまでいじめるなんてなんて奴だ」
どういう論法だろう。しかし、そう言ったう○ちくんは光だし、悲しみの覚醒~とか叫びながら縮んでいく、光がおさまると小学生サイズの二足歩行の猫がいた、洋猫の高級そうなもっふもふのやつで、しかも毛色がキラッキラな金色で光沢がヤバい。
すでに何名かの女子が手をわきわきさせて近付いている、かく言う私も近付いている、あの魅力はヤバい。
「悲しみの覚醒、う○ちくん、お説教モード」
小一時間くらい説教されたい、その間ずっとモフりたい。
「なによ、う○こから猫に進化したくらいでつけあがんじゃないわよ」
う○こから猫に進化したら、生物史上空前の出来事だと思うんだけど、どうなんだろう。まあ、それよりモフりたい、今や牽制しあって誰が飛び込むか、様子を伺っているところだ。
「猫のくせにお説教とか、……猫の説教…猫…かわいいじゃん」
「やられてるじゃねーか」
ナリオくんが快調だ。
もう、これダイジョブじゃないか、モフりたい包囲陣に環菜嬢と取り巻きも加わって、だいぶカオスだけど、モフるのは私だけど。
「いいかい、恵まれた家庭に産まれて、なんでも思い通りになって、少しの挫折に八つ当たりを繰り返して、周りを不幸にしても気にしない。長い物に巻かれるのは仕方ないかもしれないけど、それが人を傷付ける免罪符にはならない。そして、ただ見てるだけで手を差し伸べず関係ないと視界から遠ざけた者も、同様に罪深いんだ。でも、人には失敗はある、やり直せる。それを反省せずにいるのなら、すべからく全ての悪行は猫の奴隷神様が見ておられると思うことだよ」
どうしよう、良いこと言ってるぽいのに、最後で台無しだ。だいたい奴隷の神じゃ、弱そうだし。
「なによ、奴隷神とかって、くそダサい」
「なにをー、猫の奴隷神様をバカにするな~!!」
う○ちくんは爪を剥き出し、環菜嬢に飛び掛かろうとするも、光とともに渋いオッサンボイスが響きわたる。
「やめるんじゃー、感情のままに暴力をふるってはいかん!!」
声とともに現れたのは、筋肉がオーバードーズしてそうなヤベー体のオッサンだ。
「猫の奴隷神様!!」
え、これが猫の奴隷神、最初から、この人出したほうが早くない。てか、奴隷要素どこよ。
「う○ちくん、ダメじゃろ、しっかり研いであげとるけど、爪でひっかこうなんてしたら、割れてしまうかもしれん」
あー、猫の奴隷だ。
「う○ちくん、見ていなさい」
そう言うと、ポーズを取り出す猫の奴隷神、片足をドンッと踏み鳴らして太ももの筋肉を強調すると、両手を頭の後ろで組み、腹筋に力を入れて盛り上げている。控え目にいってキモい。
「猫の奴隷神様、アブドミナル&サイですね。腹筋に2匹芋虫飼ってるね」
いや、なんの呪文、てか普通にディスってるよね、あれがコールなの。
猫の奴隷神は鍛えあげた腹筋を見せつけて、う○ちくんのコールを受けると、その腹筋がビームを放った。いや、ビームでんの。
放たれたビームは環菜様のやや後方でスパークすると、そこにいかにも悪魔なぽっちゃり体型の何かが現れた。
「お前はボンノウドン」
「だから、イントネーション!」
「また、お前の仕業だったのか」
「いや、今回はたまたまここにいただけだって」
「言い訳無用!!」
すると、猫の奴隷神の前にでんじやーとひらがな書きされた黄色と黒のストライプ模様のでっかいスイッチが現れる。ついでにオペレーター姿の超絶美女がモニターとキーボードとともに出現して叫ぶ。
「う○ちくん、怒りと悲しみと正義の魂の共鳴率120%、行けます!!」
「うむ、う○ちくん執行モード、承認!!!」
ウオーとか叫びながらう○ちくんが光に包まれ巨大化する、みんながあーモフモフと、言葉をもらす。
光がやむと、そこにはイケメン細マッチョがいた。
「う○ちくん執行モード」
どこから、突っ込めばいいんだ。
「行くぞ、ボンノウドン」
「だから、今日はここにいただけだって~」
「くらえ必殺技辞書の角って痛いよね!!」
「くそっー、覚えてろよ~!!」
その後、環菜嬢はいじめをしなくなり、猫又支援サービスという組織とともに、いじめや、家庭の経済事情で苦しむ人たちの支援を実家の助けをかりながら行い。見事に慈善事業団体を立ち上げて、グランドマザーと呼ばれるようになるのは先の話。
ナリオくんは普通に持ち前の見た目と性格、そして身に付いた度胸と毒舌で芸能界で活躍していった。
私は普通に平凡な人生を幸せに過ごしている。
「ありがとう、う○ちくん」
「どう、いたしまして」
今日もう○ちくんは行く、
正義と愛と健康のために!!
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