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第15話 そして鍛錬開始へ

 メルシャが配下たちに薬を配りに言っている間……俺はシシルと軽く駄弁っていた。

 その中で、俺がメルシャを元の世界に連れ帰ろうとしていることについて妹としてどう思うかを一応聞いてみたところ、「寂しいけど、ライゼルさんが本気で姉を必要としているなら止めはしない。政務の方は自分が姉の分も頑張る」と言ってくれた。

 理解のある妹で助かった。

 三十分ほどすると、メルシャは薬の配給の手はずを整え、俺たちのところへ帰ってきた。


 その時……ふと俺は一つ、良い事を思いついた。


「そういえば……シシルって、政治の勉強はしていたものの実務経験は無いんだよな?」


「ありません」


「……そうか。ならせめて政権交代の時まで、これを使ってシミュレーション形式で勉強するというのはどうだ?」


 そう言って俺が収納魔法で取り出したのは、「教育用AIシミュレーター」という魔道具。

 俺は昔、自律戦闘ゴーレムの強化学習のために人工知能の魔道具を作っていたことがあるのだが……その実験は失敗に終わったものの、実験ノートをとある教育機関に高値で買われ、それをもとにした成果物である「教育用AIシミュレーター」を一機献上されていたのだ。


 使い方は簡単で、何かについて学習したい時、その道のプロの知識をインプットすれば、その分野のエキスパートを育てる機械ができる。

 例えば今回の場合、メルシャの脳の情報をこの魔道具にインプットしてやれば、極めて現実に近い国家運営シミュレーションゲームが完成するというわけだ。


 これがあれば、メルシャが今までの人生で培った経験を、ほぼそのままの形でシシルに体験させることができる。

 そうすれば実際に魔王になる頃には、自身を持って様々な判断ができるようになっているだろう。


「……何ですか、これは?」


「実際に動かして見せた方が早いだろうな。メルシャ、ちょっと全記憶を抽出していいか?」


「構わn――今なんと!?」


 許可を取ろうとすると、メルシャは口をあんぐりと開けてこちらを見た。


「ああもちろん、別に記憶を抜き取るわけじゃあない。どちらかと言えば、脳内の情報をそっくりそのまま複製する感じだ。この魔道具にインポートするためにな」


「か、構わんが……そんなことまでできてしまうのか。お主本当に一体どうなっておるのやら……」


 一応許可は取れた、と思って良さそうなので、記憶をコピーし魔力球に保存する魔法を発動する。

 そしてその魔力球を、「教育用AIシミュレーター」の知識インポート用パーツに取り込ませた。


<取り込み成功。「魔族領運営シミュレーター」の構成が完了しました>


 しばらくすると、「教育用AIシミュレーター」の画面にそんな表示が現れた。


「ちょっと使ってみるといい」


 そう言って俺は、シシルに「スタート」のボタンを押すよう促す。


「……これ、一昨年の飢饉の時のことですよね。③の法令を選んだら――あれ。教科書的にはこれで合ってるはずなのに、あまり状況の改善が見込めませんでした。……あっ、②の法令を選んでみたら上手くいきました!」


「それ我が一昨年やった選択じゃな」


 この魔道具は直感的に操作できるよう設計されているので、シシルはすぐに使いこなしだした。

 その様子を見つつ、メルシャは時々口を挟む。


「とまあそんな感じで、実務経験の勘を養うことができるのだ。悪くないだろう?」


「凄く助かります!」


 そんなわけで、俺はこの魔道具をシシルに貸し出すことにした。




 ……さて。

 これでようやく、魔王交代にあたってやっておくべきことは全て済んだな。


 これからはもうただひたすらに、合成勇者打倒に向けて動けばいい状況が整ったわけだ。

 早速今から、先ほどの模擬戦を元にして考えた鍛錬メニューの実践に移っていこう。


「じゃあメルシャ、これから合成勇者を超えるための鍛錬を始めようか」


「うむ、よろしく頼む」


 最初にやる内容は、特に場所を必要としない内容となるからな。

 というわけで、俺は最初に転移してきた、玉座のある部屋にメルシャと共に転移した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「教育用AIシミュレーター」 ガンダムのコクピットに搭載されていたという・・・
[一言] やっぱ主人公がドラえもんに見えてきた 戦闘能力も搭載したドラえもんだわ 正に最強だね
[一言] この「教育用AIシミュレーター」って複数の人間からデータを抽出し細かく設定を調整して、解説機能まで設けないとたんなる「クイズ装置」にしかならない気がする。 事実、回答に間違えた場合の失敗理…
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