冬に見た空 【月夜譚No.123】
流れ星への願い事は、恥ずかしくて他人には言えない。隣で一緒に星を眺めていた親友は「教えろ」と五月蠅かったが、どうにか胡麻化した。
今夜は流星群が見えるのだと聞いたのは、つい今朝のことだった。学校に登校した時、正門前で挨拶をしていた理科の教師と立ち話になって、幾つかした世間話の一つだった。それを親友に話したら、それなら見に行こうということになったのだ。
二人の住むアパートの屋上。そこにレジャーシートを敷いて、寒さ対策に使い捨てカイロを手に挟んでその時を待った。
流れ出した星々は次から次へと夜空を横切って、まるで空に光る雨が降っているようだった。一つひとつはあっという間に消えてしまうが、一つが消える前に次の星が現れる。
生まれては消え、生まれては消え……。儚く美しい流れ星は、いつまで経っても見飽きることはなかった。
だから、今まで信じてもいなかったのに、つい手を組んで願い事を心の中で呟いた。
最近になってから芽生えたこの小さな恋心が、隣の親友に伝えられる時がきますように、と――。