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倍返し少女はモフモフを愛する  作者: ぺピちゃん
薫編
9/22

9

今回は薫と彩華との出会い編です!後一話か二話続きます。


初めてあの子を見たのは父と遊びに行ったときの事だった。普段は子供と遊ぶ暇もない程忙しい父だがその日だけは予定を空けてくれた。


「着いたぞ」



そこは透き通って淡い緑にも蒼にも見える清流が流れる河原だった。心なしか風も柔らかく気持ち良かった。正直こんな所に来るよりかは、折角だから遊園地や水族館とかに行きたかったのに、、、。そう思ったがお父さんが連れてきてくれたから、なんて思って嬉しくなってしまうのは子供心だろう。


それに案外悪くもなかった。流れは穏やかで足を浸けるとヒンヤリと気持ちいい。生まれて初めて釣りしたり蟹を取ったりした。


だがお父さんは心非ずだ。


(お父さん楽しくないのかな?やっぱり仕事に戻りたいのかも)


だがそれは間違いだとすぐに分かった。


「あら!もしかして清水さんじゃないですか?お久しぶりですね」


そこに居たのは少女のような雰囲気をもつ美しい女性だった。太陽の真下にたつと彼女の髪が金糸のようにキラキラと光って女神様みたいだった。


ぼぉっとしている僕をよそにお父さんは先程までとは打って変わって生き生きとした表情を見せた。


「これはこれは、、、美奈子さんじゃないですか。久しぶりだ。会えて嬉しいよ。誠は元気かい?あいつすっかり連絡寄越さなくなってね。」


「えぇ、元気よ!実は今日娘と彼と二人で来てるのよ。そういえば君は清水さんの息子さんかな?」


そう言うと美奈子さんと言うらしい女性は私の方にしゃがんできた。いきなり綺麗な顔が迫ってきてちょっと緊張する。お母さんも綺麗だけどこの人のは何か違う。


「、、、っ!は、はい!あの、薫といいます。」


「そっか!薫くんって言うのねぇ。挨拶ちゃんとできて偉いわ。私は美奈子。お父さんの友人って所かしら?」


するとお父さんがあわてて


「そんな、疑問詞なんて付けないでくれ。私が悲しくなるじゃないか」


そう言うとフフフと楽しそうに美奈子さんは笑った。そして向こうに家族がいるから良かったら一緒にご飯を食べないかと誘ってくれた。


「それはありがたい。実は家からお弁当を持ってきたんだが、家の料理人が作りすぎてしまってね。余ったら勿体無いと思ってたところだ。、、、それに君は運が相変わらず良いね。何故か君の好物ばかりだよ。」



そう言って美奈子さんの後を着いていく。だが僕は知ってる。今日多めに作れと指示したのは紛れもなくお父さんで、料理を指定したのもそうだ。なんとなく僕は今日の出会いが偶然じゃない気がした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




しばらく川に沿って歩いていくと良い匂いがした。これはバーベキューの匂いだなと検討を付けるとお腹が空いていたのかじわじわと唾液が口のなかに溢れてくる。


「いい匂い、、、。」


ふとそう言うと彼女は今日はバーベキューだと教えてくれた。お父さんと話しながらも僕を気にかけて話しかけてくれる優しい彼女を僕は素敵だなと思った。僕のお母さんとは正反対で日だまりみたいな人だ。


その後すぐに着いて美奈子さんの家族が自己紹介してくれた。


「やぁ暁。久しぶりだね。」


そしてお互いに握手をするとその人は僕の方に向き直って自己紹介した。誠さんというらしい。お父さんと比べると少し地味な様子だが、優しそうな雰囲気で美奈子さんとお似合いな感じだ。


そしてその次に女の子が自己紹介してくれた。


「私、彩華って言います。初めまして!」


その子はとっても可愛かった。お母さん譲りの柔らかにカールする金髪に緑なのか蒼なのか、それともアンバーなのか。地球みたいに綺麗な不思議な目をしていた。後から知ったがあの目はアースアイと言うらしい。そして目は零れそうに丸く、スッと通った鼻筋にバランス良く配置された鼻、眉毛。ほっぺたは自然と薄桃色に色づき、唇はプルンとして血色が良かった。


(か、かわいい、、、。こんなに可愛い子、学校にすらいないよ)


緊張して声が出せない僕をよそにお父さんが軽く自己紹介を済ませて僕に挨拶を促す。


「は、初めまして!薫です。」


何とか頑張って自己紹介するとフワっと彩華が笑う。その笑顔にポポット顔が暑くなってくる。


「あらあらぁ~。もしかして私ってキューピッドになっちゃった?弟の役目奪っちゃったかも~!」


そう言って不思議な事を言う美奈子さんはご機嫌で、お父さんもそんな美奈子さんを見て終始ご機嫌だ。


その後皆で楽しく食卓を囲み、午後は大人達はゆっくり河辺で話に華を咲かせ、僕と彩華は二人河辺の近くで石を積んだりして遊んだ。


だが楽しい時間はあっという間。すぐに日が落ちて帰り仕度を始めた。僕とお父さんは元の場所まで戻らなければいけない。


「今日は楽しかったよ。誘ってくれてありがとう。今度は家に遊びにでも来てくれ。薫が喜ぶ。」


お父さんはそう言って名残惜しげに挨拶をした。僕も美奈子さんと誠さんにお礼を行って、一緒に遊んだ彩華には手を思いっきり振った。


「今度遊びにでも来いよ!家の庭すごく広いんだ。きっと気に入る。」


そう言うと彩華は嬉しそうに頷いて「うん!」と言うとまたね、と可愛らしくはにかんで手を振ってきた。





帰りすがらお父さんは昔の事について話してくれた。どうやら彼らとは学生時代に親しかったらしい。だが話すことの大半は美奈子さんの事ばかりで、子供ながらませてた僕はなんとなくお父さんは美奈子さんに特別な気持ちを寄せてるのかもと思った。それならお父さんとお母さんが義務的にしか会わないのも頷ける。


所謂政略結婚なんてものだからそうなるのは仕方ないかも知れないが、僕は彩華ちゃんみたいに可愛くて優しくておっとりしてる子と家庭を築きたいな、なんてちょっと妄想した




家に帰る道のりは今日の事で沢山お父さんと話をした。こんなに話せたのは久しぶりでとっても嬉しかった僕はつい調子にのって美奈子さんの事について聞いてしまった。



「美奈子さんって本当に綺麗な人だった!誠さんも優しくて良い人だったよね。お似合いだった!でもやっぱり一番は彩華ちゃんだよ!彼女とっても可愛いんだ。それに優しくてすっごく良い子だったよ。今度お家に呼びたいからお母さんに話してもいい?」



清水家では来客などを取り計らうのは妻の役目だ。だからお家に呼ぶときは予めお母さんに報告する必要がある。だからその事をお父さんに言ったら空気が冷たくなった。


「いいか、薫。今日の事はお父さんと薫だけの思い出にしよう。お母さんには言うな。」



そう言うとそこで話が途切れてしまい、その後は少し気まずい空気が残った。幸いなことに家が近かった為その空気もすぐに散ったが今後はもうあの子とは会えないかと思うと残念だった。





だからそれから二年ほどで再会できた時は嬉しくて飛び上がりそうだった。あの子の言葉を聞くまでは、、、。




「初めまして。彩華と言います。今日からお世話になりますが宜しくお願いします。」




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