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「ジャジャーン!今日の夜ごはんは前菜、鯛とヒラメのカルパッチョにレモンソースを加えて。スープはトマトの冷製スープ。魚料理は白身魚のポワレでしょう。でね~、ちょっとコース料理何作れば良いか分からなくなっちゃったのよ~。だから後は肉料理のフィレ肉にブルーベリーソースを添えたものと、デザートに彩華ちゃんの大好きなガトーショコラを用意したわ!」
(流石お母さん。お料理の先生をやっておきながらコース料理の順番を忘れるなんてビックリだよ)
そう思いつつ大好物ばかり並んだ食卓を見てとっても気分が良い。
「ありがとうお母さん!とっても美味しそう!でもコース料理って少しずつお料理出すんじゃないの?」
というとお母さんは目を細めて
「言ったでしょう?今日は特別なのよ。」
「そうだそうだ。今日は特別なんだから楽しいことを一杯お父さん達としよう。料理もこうやって食べた方が楽しいだろう?」
お父さんまでもそう言うのだから、それもそうかと思い何も気にしなかったが、今思えばお父さん達は川辺で深刻そうに話し合っていた時からこれから起こることを予測していたのだと思う。だから最期に私が幸せに居られるよう最大限の取り計らいをしてくれたのだ、、、。
「それにね、これは風花の分もあるのよ~。」
「でも風花は鳥だから虫しか食べれないんじゃない?」
そう言うと何故か風花は「ピッ!」と鳴いてショックを受けたことを表した。そして少し拗ねたかのように嘴で腕をつついてくる。
「ウフフ。実はね風花はもう彩華ちゃんと理を結んでいるから食べられるのよ~。だから沢山食べてちょうだい。皆もね?おかわりはあるから」
その言葉を境に楽しい晩餐会が始まった。
「ふぅ~お腹いっぱい!美味しかった。お母さんご馳走さまでした」
風花も満足そうだ。今は体を元の孔雀に戻して毛並みを整えリラックスしている。尾まで長く伸びる羽は徐々に白銀の光を帯び、立派な羽を広げて休む様子はその瞬間がまるで絵画のように綺麗だ。
「お粗末様でした。幸せだった?」
「うん?うん!いっぱい美味しいの食べれたし、今日一日ちょ~楽しかった!私この事日記に書くんだぁ。」
「そう、、、良かった。私達も彩華ちゃんがそう言ってくれて幸せよ。彩華ちゃん、愛してるわ。」
そう言ってお母さんは私の事を愛おしそうに見つめた。
(変なの?さっきからお母さんたち少し変だ。)
「そうだな。今日はとても良い日だったな。こんな日が永遠に続いて欲しいくらいだ。さっ、早くお風呂に入って寝なさい。明日も早いんだろう?」
その言葉で明日の学校を思い出して休みも終わりか~なんて思ったりしたがちゃちゃっとお風呂に浸かり、しっかり風花も綺麗にして一緒にベッドに入った。風花は思った以上にモフモフでこれは、良い抱き枕になりそうだと思ったのは秘密だ。
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彩華が寝たことを確認すると美奈子は真剣な顔で誠に話しかけた。
「あなた、多分。もう奴らはあのこの力が目覚めかけてるのに気付いてるわ。まさか、風花が能力解放のキーだったなんて...。」
「いつまでここは持つ?彩華だけでも逃がさないと。あの風花はなんの術が使えるんだ?場合によってはあの鳥に彩華を託さなければならない。」
もしかしたら、明日から自分達は彩華の隣に居れないかもしれない。今日風花と出会えたのはそう考えると僥倖だ。誠はそう思った。
「それが本来なら香り高い風を起こして相手の状態以上を少しだけ直せる程度なのよ。だからさっきのはあり得ないわ。...となると私の居た世界から着いてきた聖獣かもしれないわ。」
もし本当に風花が聖獣ならば助かる道はある。誠にそう言うと美奈子は計画を話し始めた。しばらくすると誠は風花を呼びに彩華の部屋へ戻った。
「風花...。起きてるな?少し話がある。来てくれ」
彩華の近くでうずくまっていた鳥は静かに頷くと黙って誠の後を着いて歩く。そしてリビングに行くと美奈子は風花に何やら話し始めた。誠には何を話しているか分からないが、鳥はどうやら理解しているらしい。了承したように首を縦に降ると静かに彩華の元へ帰っていった。
「美奈子、何の話をしていたんだ?そもそもあの鳥はそこまで理解できるほど賢いのか?」
「あの鳥の姿は仮の姿。やはりあれは聖獣だったわ。あれは言葉も理解するし、常任以上の力を持つわ。あちらの世界での聖女があのこに決まったってことよ。」
「不思議ね...。あの地から追放されて以来もうそこには触れられないと思ったのに娘が聖女として喚ばれる運命だなんて。」
「美奈子...。僕にはよく分からないが、あの子は助かるんだな?」
「えぇ、そうよ。風花があのこを導いてくれるわ。」
そういうと美奈子はその場しのぎでもと、この家から敵意を持つものを弾く結界を構築し始める。
「安らぎを与えたまえ。安穏世界!!」
すると徐々に家が半透明な膜に囲まれていく。
(これでしばらくは持つわ。今のうちに逃がさないと)
ヤツがやって来たのはそう思った時だった。
「久しぶりだなぁヴィーナス。こんなところに堕ちて幸せごっこか?」
ほの暗い目をした男がニタリと嗤った。
切りが良いので短めですがここら辺で。
とっても幸せな時ってそれが永遠に続いて欲しい反面、怖くなりませんか?