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ピチチチチ...。爽やかな朝の訪れを示す小鳥の声で少女は目を覚ます。
「ふぁあ~。」
起きたばかりで飴色の髪が柔らかに癖になっている少女は大きく伸びをした後、また眠りに着くべく布団に潜り込んだ。
...ちょっと待て。「何でこんな所に居るのぉぉお」
記念すべき異世界での第一声であった。
これはやられたらやり返すがモットーのモフモフ好きが、神様のお情けでモフモフでモフモフするモフモフなお話である。
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ガシャン
「おらよ。お前の大好きな小鳥ちゃんだぜ。」
そう言って濡れ羽色の髪をした少年は柔らかな金の髪を持つ少女に向けて籠を蹴っ飛ばした。
「チチチ、チチチチチチ!!」
「風花!」
少女は焦った様子で慌てて籠に駆け寄り鳥籠から鳥を取り出した。鳥はいささか驚いたようで興奮していたが、それだけで傷は無いようだった。
「良かった、、、。」
少女はホッとして涙を流した。少女にとって小鳥は唯一の友達であり辛い時には歌って励ましてくれる味方だった。無事を確かめると大切な友達に暴力を振るった男に怒りが込み上げてくる。落ち着け、落ち着け。そう言い聞かせるがどうやら顔に出てしまっていたらしい。
「お前さ、そんな顔お前の主人に向けて良いと思ってるのか。」
少女は少年を睨み付けていた。そして少年はそれを面白そうに見やる。
「彩華、お前逆らえる立場か?衣食住の面倒を見てやれるのはこの家だけだ。ここを出ていったら、自由になれるとでも?人殺しの娘の待遇なんてたかが知れてるな。」
そうだ。落ち着け。自分にはここしか居場所がない。ここを追い出されたらまず先に狙われるのは滅多に目にすることができない種の小鳥である風花だ。そう言い聞かせ少女は手を握りしめ言い聞かせた。
「申し訳ありません薫様。私の罪をお許しください。」
そう言うと薫はフッと皮肉げに彩華を見て
「いい加減に大人しくすることだな。毎日小鳥がピーチクパーチク囀ずって五月蝿いことだ。」
そう言って自分の部屋へと戻っていった。
くっそぉぉぉ。なにあいつ?本当にうざったらしいな。それにフッて鼻にかけて人の謝罪を嘲け笑って。ぁぁあイライラする!あいつの椅子に水染み込ませてやるか?それともドアに接着剤つける?
彩華は先程のしおらしさが嘘のように、すくっと身を戻し風華を籠に戻し自分も部屋に戻るべく歩きだした。
戻る途中で自分に突き刺さる視線は冷たく、隠しきれない侮蔑の言葉がこの屋敷に仕えるメイドの口から溢れている。
「、、、ッッツ。」
普段は強がっていても何と言ったって彩華はまだ10歳かそこらの少女である。傷つかない訳がない。彩華は部屋へと足を早めた。