訪問
遅くなりました。
現代日本東側海域海上
そこには東へ進み、カンドロス王国との接触を試みようとしている自衛隊の第3護衛艦隊群がいた。
「航海は無事だな」
カンドロス王国派遣艦隊司令兼派遣艦隊旗艦かがの船長飯山 悟は嵐も何もない穏やかな航海で安心していた。
なぜそこまで警戒していたかというとこの船に乗っているロイ・ダン号の船長であるサイドスとその船員達とカンドロス王国との外交が終わった後に向かう予定のコルド帝国の竜騎士アルザスとその愛騎ロードを乗せており、両者共に嵐で遭難して日本に辿り着いたからであった。
おそらくその嵐は日本が転移してきた時の時空の歪みなどから発生したのではないか、と飯山は考えていた。
そう安心しながら今向かっているカンドロス王国という地球の国ではない国に興味を持っていた。
「ええ、とても安全な航海で安心しています。最初は異世界の海なので馬鹿でかい海の生物などがいるのではと思っており、緊張していましたが、いなくてよかったと思っています」
「あぁ、全くその通r...」
飯山がそう言いかけた時に横山砲雷長が報告をしてきた。
「超大型生物と思われる物が艦隊に接近中です」
「なに?対象は水上を動いてるのか?」
「いえ、100mほどの長さの生物が水中を時速50kmほどの速さで移動中です。このままだと20分ほどで接近します」
「なぜ生物だと分かる?」
「対象が鳴き声を発しているからであります」
「なるほど、砲雷長はそのまま監視を続行せよ。対象がなんなのかをお客さん達に聞きに行く、中原副長もらついてきてくれ」
「了解しました」
そうして飯山と中原は未確認超大型水中生物の事をサイドスとアルザス達の元へ知っているか聞きに向かった。
「お楽しみ中のところ失礼。実は今大きさ100mほどの大型生物を発見したのだがこの正体を知っている人はいるか?いたらぜひ教えてほしい」
「う〜ん、100mか...この海域だとドーラだな」
「あぁ、この海域ならドーラくらいしかいないな」
「そのドーラとはどのような魚なのですか?」
ドーラという魚を聞いた事がない飯山はどんな魚なのかを聞いてみた。100mもする神話級の魚が一般人が普通に知っているほどいるのだと知ると恐ろしかった。
「ドーラはとても大人しい性格で危害を加えなかったら何もしてこないぞ。おそらくこの馬鹿速くてめちゃくちゃ大きな竜母やその他の艦の反応が珍しくて見にきたんじゃないか?」
「なるほど、危険ではないのであればこのままやり過ごして、危害を加えさせないようにすればいいのですね?」
「そういう事だ」
「ありがとうございました」
飯山はそしてそのまま接触するまで何もしないように全艦に無線で注意しておいた。
そしてついに魚が艦隊に接触してきた。
「な、なんだあれは?」
「分かりません...」
そこには頭が3つに分かれているまるで海蛇の頭が3つあるような形をしていた。
もうそれは魚ではなく竜と言っても過言ではなかった。
「きちんと記録をしておけ」
「もちろんです」
「それにしてもこんなんがたくさんいるような海域が本当に安全なのか?まあ確かに何もしてこないから大丈夫だと思うが...」
「おっしゃる通りです」
そして5分ほど艦隊の周りを泳いだ後にドーラはどこかへ去っていった。
後で動画を見返してみると映画を観ているようであった。
そのまま無事に物事は進みついにカンドロス王国へついた。
「ここがカンドロス王国か、ここはいかにも中世の港町って感じの見た目だな」
「この光景を見ているとロマンがくすぐられますね」
「あぁ..全くだ」
「ですが随分とわいわいしていますね...」
「当たり前だろう。中世の街にいきなり全長200mもあるような船を含む艦隊が現れたのだ。そりゃあ混乱をするに決まっているだろう」
「それもそうですね」
そして5分ほど経った後に先遣隊の乗ったボートが港街に向かって来た理由などを説明しに行った。
カンドロス王国 港街エルシー
「な、なんだあれは!」
「か、神がお怒りになったのだ!逃げろ!」
「どけ!俺が先に逃げるんだ!」
エルシーの街は普段の優雅な雰囲気とは一変して、
沖合に急に現れた大艦隊からの攻撃から必死になって領民達が逃げようとしていた。
そして領主のエルシー・ローガンがどうすればいいか困惑していたところに沖合の船から小船が出て来て、その小船に乗っていた人になぜ来たか?と理由を聞いてみると遭難して日本国という国に流れ着いた船の人員を返しに来たので上陸を許可してほしいと言っていた事が報告された。
あの艦隊からどう街を防衛すればいいか迷っていたエルシーはあまりにも平和的な内容に拍子抜けしてしまったが、少し考えた後に上陸を許可し、急いで話し合う場所を用意させた。
エルシー自身も迎えに参上しようと港へ向かったがそこで口をあんぐりと大きく開けてしまった。
沖合には化け物が何隻もいたからだ。
これなら領民が逃げだす理由も分かるとエルシーは思ったのであった。
そしてなんとか迎えの準備が整った直後に沖合からさっきの小船が何隻も出てきた。
その小船にも驚いた。
手を使って漕いでいる様子がなくものすごい速い速度でぐんぐん向かってくるからである。
そして小船が到着し、おそらく外交官であろう人物が降りてきたのでエルシーは挨拶をした。
「ようこそカンドロス王国へ、私はここの街の領主エルシー・ローガンです。今回はわざわざ遭難者を返しに来てくださってありがとうございます。遭難者達はこの者達が引き受けます」
「いえいえ、これは当たり前の事ですからやったまでです。私は日本国の代表として来ました野原 裕太です。よろしくお願いします」
そして野原が差し出した手をエルシーは強く握り返した。
「こちらこそよろしくお願いします。どうぞこちらへ、話し合う為の準備は既に整っております」
「いきなり来たのに気を遣わせてしまって申し訳ないです。ありがとうございます」
「いえいえ、当たり前の事をしたまでですよ」
こうして2人は建物の中に入り、野原が日本がどのような国なのか、となぜいきなり日本が出現したのかを話した後に今回の目的について話し始めた。
エルシーは急に転移させられたという話を聞いて日本国を哀れに思った。
「今回我々は遭難者を返還しに来たのもありますが本題は我々が急にこの世界にやってきた事で食糧や鉱石が不足しているのです。なので食糧や鉱石を中心に我が国と貿易協定を結びませんか?もちろん私達も鉄道や道路の補強、我々の商船も入れるほどの規模の港などインフラを輸出いたします」
「その鉄道とはあの神聖エルスタリアン大帝国とメリー機械連合王国しか持っていないあの鉄道の技術をあなた方は持っているのですか?」
「はい。持っていますよ」
この世界で鉄道というのは1部の国を除いてほとんど使用されていなかった、いや、技術を持っていないと言った方がいい。エルシーは昔メリー機械連合王国に行った事があったので知っていたがまだカンドロス王国の民は知らない人がほとんどであった。
そんな鉄道を建設してくれると言ってくれたのだ。
もちろんokと言いざるをえなかった。
「その話が本当ならば喜んで受け入れましょう。
貴国はどれくらいの食糧と鉱石を必要としているか具体的に教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「我が国が必要としている食糧や鉱石などは、え〜、これくらいです」
と言って野原は日本が必要としている資源とその量が書いてある表を見せた。
エルシーは驚いた、消費されている量がものすごく多かったからである。
いくらカンドロス王国が農業大国だからと言っても賄える量ではなかった。
「これは...かなり多いですね、我が国は農業大国ですが、それでもこの食糧の必要量の半分が賄えるほどですね、そして鉱石は8分の1ほどしか賄えませんね。
あとこの黒い油とは我が国の上の方にある砂漠で湧き出ていますからご自由にお取りください」
「そんなに賄えるのですか!ありがたい!それに石油の採掘権もいただけるとは!ぜひこの条件で貿易協定を結びましょう!」
こうして現代日本とカンドロス王国が無事に貿易協定を結んだ。
こうして日本は窮地を脱したのである。
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