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中央学園の無個性剣士  作者: 龍華
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3話 無個性剣士とお姉さん

「マインドは10歳になる頃から発現し、人によってその形は様々、マインドはその人の心が形になるものだからね」 

 

 今はマインド基礎学の授業。今日からマインドについての勉強も始まるみたいだ。

 入学式から早くも2週間が経過し、学校の雰囲気もかなり落ち着いて来た。

 相変わらず俺は誰に関わることも関わられることもなく学生生活を送っている。


「マインドはその特性から個性や自我が強い人ほどより強力になる。まぁ、心の力だからね。自分をしっかりとイメージできる人ほどマインドも強くなるんだ」

「先生!そんな基本的なこと今時こどもでも知ってるよ」

「まぁまぁザック君。これも授業だから。じゃあ、マインドで人を攻撃するとどうなるか答えてくれるかな?」

「んなもん簡単だろ。なんにも起きない。マインドでいくら攻撃されても血は一滴も流れねぇからな」

「う〜ん。半分は正解かな」

 そう、マインドでは人を傷つけることができない。物に触れたり、マインド同士がぶつかり合うことはできても、人に触れても外傷を与えることはできなくなっている。あくまでも自分を守るものであって人を傷つけるためのものではないと、まるで神様が決めたかのように。

 だが、外傷を与えられないからといって無傷というわけでもない。

「じゃあ、代わりに、リューズさん、答えてくれますか?」

「はい。マインドからの攻撃を受けた場合、傷を負うことはありませんが、心へのダメージがあります。マインドの発動時間が減少したり、体力や思考能力の低下、最悪の場合は精神疾患や心神喪失などを引き起こす場合もあります」

「その通りですね。マインドは心の力ですから、攻撃を受ければ心にダメージを負います。外傷は負わないからと言って守りが厳かになってしまうと、とりかえしがつかなくなりますから、油断しないように。リューズさん、ありがとうございます」

 教室から拍手が起こる。ザックはバツが悪そうにふてくされていた。

「マインドの登場によって人々の争いの形、戦争の形なども変化するわけど…」

 と、先生が続けようとしたところで終業のチャイムが鳴る

「っと、もう時間のようですね。続きはまた次回に」

 先生が退室していき、昼休みがはじまったので各々が友人たちと昼食を取り始める


 2週間も経てば友好関係もある程度構成されグループが出来上がっていく。

 ザックたちはいつも通りのメンバーで連んでいるし、麗騎士様の所には休み時間の度に女子が集まり、仙は相変わらず寝続けている。

 

 あの一件以来シーク嬢は俺に絡んでくることはなかったが、それでも未だに視線を感じることがある。

 やはり、思うところがあるのだろうか?ぶっちゃけ結構怖いのでやめてほしいが…


 休み時間、教室に居づらいってのもあるが、もともと静かなのところが好きな俺は屋上で昼食を取るのが日課となっていた。

 別に賑やかなのは苦手ではないし、むしろ好きな方ではあるのだが、あの教室の雰囲気に俺は辟易していた。今では屋上が唯一の心休まる場所になっている。

 本当は屋上は立ち入り禁止場所となっているのだが、暇で学校散策して居た時にフラっと寄ってみると鍵が開いていたので、以来入り浸っている。

 俺みたいな考え方のやつが何人かは居そうなものだが、さすがは優秀な生徒たちだ。皆んな校則をしっかり守っておられる。


 いつも通りのお気に入りの場所。貯水タンクのにもたれかかり、昼飯のサンドイッチを頬張る。

 ここはちょうどいい日陰になってるし、タンクの表面がひんやりしてて気持ちがいい。

 

「いかんな〜。ここは立ち入り禁止なのだが」

 

 急に頭上から声が降って来たので驚きのあまりサンドイッチを落としてしまった。

 見上げると貯水タンクの上からびっくりするくらい綺麗な女の人がこちらを見下ろしていた。


「すまないね、驚かせてしまったかな?」

 女の人は軽快にタンクから俺の前に降り立つ。

 どこかで見たことあるような…ないような…ダメだ思い出せん。

「………」

「む?どうした?驚きのあまり昇天してしまったか?」

「…。すみません。人とちゃんと話すのが2週間ぶりくらいなので、話し方を忘れてました」

 この2週間先生と挨拶するか、授業で当てられた時か、仙を起こすときくらいしか声を出していなかったので話すということがそもそも久しぶりなのだが、それよりも、今目の前の女の人にみとれていた、というのが本音なのは黙っておく。

「ふむ…。君は面白いことを言うな。一人でこんなところで昼飯とは寂しいやつだな。普通、学生というものは友人などの親しい人間と昼食を取るものではないのか?」

「こういう希少種もいるんですよ。えっと…先生?ですか?」

「さぁ、どうだろうね?」

 なんだこの人は。いきなり降って来たと思えば迷惑なお節介を。その上先生でもないって…。不審者か?通報しとくか?

「安心したまえ。一応は学園の関係者だ。怪しいものではないよ」

「はぁ…。まぁ、ここが立ち入り禁止って知ってるみたいでしたし、学校の関係の人だとは思いましたけど…。あー、お姉さん?は僕になにか…」

「お姉さん!いい響きだな!これからもそう呼ぶといい!」

 俺の言葉を遮ってまで食い気味に言ってくるあたり、これは思ったより歳食ってるやつかな。黙っとこ。

「じゃあ、えっと、お姉さんは僕に何か用ですか?」

「ここは私のお気に入りの場所でね。気持ちよく昼寝してたら、君がやって来たから思わず声をかけてしまった。ここに私以外の人が来るのも珍しいからね」

「そりゃ、立ち入り禁止になっていますから。で、僕は見つかってしまった訳ですけど、先生にチクリますか?」

「まぁ、それもいいかも知れんが、特別に黙ってやってもいいぞ」

 ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべるお姉さん。これはなんか要求されるやつだな。

「で、代わりに僕はなにをしたらいいんですか?」

「お、察しがいいではないか。なに、別に大したことではないよ。たまに私もここへ来た時に昼食を一緒に過ごすことを許してもらえるかな?」

「そんなことでいいんですか?綺麗なお姉さんとお昼を一緒にできるならよろこんで。ちょうど一人でお昼は寂しくなって来たところでしたから」

「お世辞を言っても何も出んぞ。と言いたいところだが、昼ご飯をダメにしてしまったお詫びに私の弁当を分けてやろう。私の手作りだが、いいかね?」

 むしろ願ったり叶ったりです!

「ありがたくいただきます」

 それから俺はお姉さんと昼休みを過ごした。

 お姉さんの手作り弁当は料亭の料理並みにおいしくて、正直サンドイッチを落として正解だったみたいだ。

 美人で料理も上手とか、いよいよこの人は何者なのだろう



「なるほどな、マインドが使えないと…。それは珍しいね」

 昼飯を食べ終えた俺たちは、残りの時間を話しながら過ごしていた。

 と、言っても、一方的に俺の話をしているだけなのだが…。

「好きでこうなっているわけじゃないんっですけど、クラスのやつからは空気みたいに扱われるし、学校にいると誰かに噂されてるように感じるし、正直もうウンザリですよ」

「こうして話していると、君はなんというか、案外普通なのだな」

「一体僕をなんだと思ってたんですか?」

「すまない。なんというか君はまわりのそういうのを気にしないものだと思っていたのでな」

「僕だって人間ですから。寂しいって思いますよ。だから、こうして話し相手ができたのは、とても嬉しいですよ」

「私でよければいつでも相手になるさ」

 久しぶりに誰かと会話したってのもあるかもしれないが、お姉さんのその言葉で少し救われた気がした。

「さぁ、そろそろ時間だ。授業が始まる。君も戻りたまえ」

 その言葉のすぐ後に予鈴が鳴り、お姉さんとの楽しい休み時間も終わってしまった。

 またあの空間に戻らないといけないと思うと気が滅入るが、これからもたまにお姉さんと会えると思うと、少し頑張れる気がした。

 


 それからというもの、週に2回くらいお姉さんと昼休みを過ごすこととなり、その度に手作りの弁当を作ってきてもらっていた。

「あ、今日はハンバーグ弁当なんですね」

「君の好物だろ?」

「その通りです」

 一口食べた途端に口の中に旨味が広がる。冷えていてもこんなに美味いとは。

「しかし、好きな食べ物がカレーとハンバーグだなんて、君はどこまでも普通だな。というか、こどもだな」

「悪いですか?しかし、ほんとに美味いですね」

「それはどうも」

 こうやって食べてる姿は、本当にただのこどもなのにな…

「何か言いましたか?」

「いや、何も」

 少しお姉さんの表情が曇った気がしたが気のせいだろうか。


「ふぅ…。ごちそうさまでした」

「お粗末様。そういえば、もうすぐ宿泊演習だな」

 あぁ、そういえばそんな行事があるって言われてたな。正直行きたくない。まず、班一緒に組んでくれるやつもいないし。

「その顔は乗り気ではないようだね。班を組む相手がいないのか?」

「心の中を読まないでもらえます?」

「それは、すまない。だが、安心したまえ、宿泊演習の班は事前に学校側が決めてある。仲間外れにさせられることはないよ」

「そうなんですね。まぁ、それでも気は乗らないですけど」

「まぁ、そう言わずに、これを機に友達でも作ってみたらどうだ?」

「友達ですか…」

 本音を言うなら友達が欲しいとは思っている。でも、今の状態で友達なんて夢のまた夢だな。仙も昔から知っているだけで、仲がいいとは言い切れないし、友達というものがこの学校で1人もいないのは、正直寂しい。

「ま、それも君次第だろう」

「そういうもんですかね…?」

「そういうものだ。まぁなんだ、頑張れ少年!きっといいことがあるさ!」

 そういってお姉さんは俺の背中をバンバンと叩きながら高笑いをする。 

 いつものように他愛ない会話をしながらお姉さんと過ごす。

 この時間が最近の唯一の癒しだ。こういう幸せなことがあると何か不幸が襲ってくるんじゃないだろうか。なんてな。


 そして、その日の午後。盛大にフラグを回収することとなる


「白神 仙さん。ザック・グランデくん。シーク・フォン・リューズさん。それとー


 

 型無 健くん。の4人がD班で宿泊演習を行ってもらいます」


 あぁ、最悪だ。

はじめて評価をつけていただきました!

読んでいただいてありがとうございます!励みに頑張ります!

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