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中央学園の無個性剣士  作者: 龍華
16/18

15話 無個性剣士と麗騎士 激突

 それから俺たちは毎日、弥勒の情報を探し続けた。

 日毎にシークだけでなく、仙やザックたちも手伝ってくれるようになったが、いつまでたっても弥勒の情報は得られなかった。


 そうしているうちに、1週間が経過し、2週間が経過し、そろそろ月が変わろうとしていた。

 目撃証言はおろか、シークや仙たちの力を借りてデータベースの住民リストまで調べたが該当なし


「今日もダメだったね」

「もうじき日も暮れる。今日は解散にしよう」


 始めた頃は賑やかだった俺たちの雰囲気も日に日に悪くなるばかりだった。

 今日は珍しく、シークが連絡もなく欠席だったこともあって、いつもより一段と雰囲気はよろしくない状態だった。

 今日は誰も言葉を発することもなく家路につく。


 俺たち姉弟と弥勒の四人でいつもの道を歩く。

 弥勒の暗い表情を見て居た堪れなくなり、思わず口を開く。

「ごめんな弥勒。今日も進展なくて」

「ううん。健が謝ることじゃないよ。私のために、由依も由宇も健も、他のみんなだって、こんなに頑張ってくれてるし。なにも力になれなくて、逆にごめんね…」

「コラ!健ちゃんのせいで弥勒ちゃんが落ち込んじゃったじゃない!」

「お兄ちゃんサイテー」

 頼もしい姉と妹のおかげで少しだけ弥勒の表情も明るくなる。

 今となっては、この二人がいるおかげで、俺も、弥勒も、他のみんなだって折れずに続けられている。

 妹が空気を和ませ、落ち込んだ雰囲気は姉が背中を押して打ち払ってくれる。圧倒的カリスマ性を備えた姉妹だからこそ、俺たちを引っ張ってくれている。

 二人がいなかったら…今頃はとっくに投げ出していたかもしれない。

 つくづく、この二人には敵わないなと実感させられる。


 家まであと少しというところで、俺たち四人の足は背後からの意外な人物からの声で止められた。

 声に振り返ると、そこには見慣れない大きな荷物を持ったシークが立っていた。

「お前!急に連絡もなく休みやがって!心配したんだぞ!」

「すまない…」

 シークの顔には大きな陰があった。

 その表情でただ事でないと、俺たちもすぐに察した。

「型無。お前に大事な話があるんだ。少しだけ付き合ってくれないか?」

「告白…って雰囲気でもなさそうだな。わかった。姉さんたちは?」

「すまないが、お前一人だけでお願いしたい」

「お兄ちゃん、行ってあげな。弥勒ちゃんのことは私たちに任せといて」

「そうか…わかった。行こうか」

「急に無理を言って申し訳ない」

 シークは姉さんたちに深いお辞儀をした後、ゆっくりと歩き出した。

 その行動から、姉さんたちも何かを察していたかもしれない。しかし何も言わず、追うこともせず、ただ俺とシークを見送っていた。

 


 今思えば、この時に無理にでも四人で話に入っていればよかったのかもしれない。



 歩くこと数分。

 もうすっかり日も沈み、辺りは暗闇と静寂に包まれていた。

 ここは住宅街から少し離れた、あまり人のよることもない公園。

 シークの足が止まったので、目的地はここで間違いないのだろうが、依然、シークは口を開かない。

 わざわざ人気のないここを選ぶあたり、よっぽど大事な話なのだろうが…。

 沈黙に耐えられず、先に口を開いたのは俺だった。

「で?こんなとこまで来て話ってなんだよ?今日の無断欠勤を謝ろうってことでもないんだろ?それとも、本当に告白だったり?」

「…」

「このまま黙ってるつもりなら俺は帰るぞ?」

「…すまない、自分から呼び出しておきながら心の準備に時間がかかってしまった。型無、私は学園を去ることになった。だから、もうお前たちに協力もできなくなってしまう。今日はそれを謝ろうと思っていたんだ」

 突然のシークからの告白。それは俺が淡く期待していたものとは全く違う内容だった。

 頭の整理が追いつかず言葉を出せないでいる俺の様子を察したシークが続ける。

「以前から話があった縁談の話が決まったんだ。私も、もう16になってしまったのでな。まぁ、貴族の間ではよくある話だよ」

 京和と香港以外の地方では、未だに貴族などの身分制度がある。

 貴族の娘が家のために有力な貴族に娘を差し出すのはよくある話だ。

「でも!お前の家は王家の護衛任されるほどの家じゃないか!他の貴族の力を借りる必要なんて…!」

「その王家が相手だったら?」

「…!」

「私の結婚相手は、王族の人間なんだよ。相手方が護衛任務にあたっていた私を見てから、いたく気に入ったそうでな。ずっと前からアプローチを受けていたんだ。いままでなんとか断ってきたんだがな、つい最近、相手の方からこんな提案があったんだよ…」

 そこでシークは一瞬言葉を詰まらせた。

 そして、シークの口から発せられた衝撃の内容に、俺も言葉を失った。

「私を差し出せば、父を王帝議会に入れるとな!」

 王帝議会。国の中枢も中枢。国王を議長とし、国の法律や運営を管理する、正真正銘の国の最高決定議会。

 普通は王族や、それに準ずる政党血統の貴族しか名を連ねることのできないそれに騎士の家系の貴族が参加するのは歴史的なことになるだろう。

 しかし、それは、つまりー

「自分の出世のために!お前に父親は娘を売ったってのか!?」

「……そういうことだ」

 怒りや憎悪といった感情が自分の中に渦巻き、爆発した。

「ふざけんな!そんなことがあってたまるか!」

「これが、現実なんだよ。私は父にとってただの道具でしかなかったのさ」

 感情のままに走り出した俺の腕を涙をこらえた表情のシークの手が掴んで止めた。

「お前が行っても、どうにもならないことはわかるだろう?」

 確かに、京和の、ましてや貴族でもなんでもない、ただの一般市民である俺が行動したところで何も変わることはないなんて、わかりきっていた。でも…

「だから、せめて、私の気持ちにトドメを刺してほしい」

 シークがずっと抱えていた荷物を開いた。

 中には美しい刀が収納されていた。

「もちろん、刃は偽物のレプリカだ。型無。お前は覚えているだろうか?あのキャンプで私が吐露した、あの瞬間を、あれを見ていたお前だからこそ、私は、お前ごとその弱い私を斬り伏せる!型無!私と刃を交えてくれ!」

 シークの手から刀が俺めがけて放たれる。

「そんなことをしてー」

「頼む!私からの最後のお願いだ!」

 俺の言葉を遮ってシークの悲鳴にも似た叫びが公園に響いた。

 その言葉にどれだけの覚悟が詰まっているのだろうか。

「…わかった。相手してやる。でもな、俺も本気でいく!」

「ありがとう。当然だ!一切の手加減は必要ない!」

「んで!もし俺が勝ったら!ーーーその結婚、俺がブチ壊させてもらうぞ?」

「!…お前は…どうしてそういうことを…」

「言っとくが、手ェ抜いてやったら承知しねぇぞ?そんなやつならさっさと嫁にでも行ってしまえ。だがな、お前の覚悟が本物なら、刀で俺をねじ伏せて証明してみろ!俺はそれすらぶった斬って、その諦めちまってるお前を叩き直してやる!」

「臨む所だ!顕現リアライズ!」

 シークの手に純白のレイピアが出現する。

 俺も鞘から刀を抜く。わざわざ俺の得意な日本刀を持ってくるとは、シークらしい。


 一迅の風が吹き抜け、俺たちの刃が交差する。

 高速の連続刺突を得意とするシークのレイピアに対し、俺の刀は速さを犠牲に一撃一撃の重さを重視した武器。

 全く種類の違う互いの得物だが、ともに過ごしたこの数ヶ月で相手のスタイルは互いに熟知している。視線や息遣い、足の運び方で相手の動きを予測し、互いに攻撃を捌いていく。

 刃が交わる度、互いの感情が相手に伝わるようだった。

 言葉の代わりに刃を交わす。不器用なシークだからこそのやり方なのかもしれない。

 そんな余計なことを考えている余裕があるような相手ではないことを、すぐに思い出される。

 一瞬の隙を突いてシークのレイピアが俺の服を切り裂く。

 俺は大きく飛びのきシークから距離をとった。

 マインドは生身の体を傷つけられないが、他のものにはダメージを与えられる。俺の刀もレプリカだから、互いに得物を失くした方が負け。

 激しく斬り合い上がった息を少し整える。それはシークも同じだった。


「そこまで本気なんだな」

「当然だ!初めからそう言っている!」

「なら!なんで!」

 俺の大振りの一撃をシークのレイピアが受け止める

「なんで!お前の刃はそんなに悲しげなんだよ!」

 さっきからシークの斬撃には悔しさや悲しさみたいなものが乗っかてるように感じて止まなかった。

 核心を突かれたように驚いた表情のシークは大きく目を開いたと思うと、その瞳から大粒の涙を流し始めた。

「その涙はなんなんだよ!」

「お前に…お前になにがわかる!」

 シークのレイピアに力が入り、俺の刀を押しのける。

「そうだ!その感情を全てぶつけてこい!」

「私だって!好きでもない相手と結婚したい訳があるか!」

 シークの涙と感情全てが乗ったレイピアの突きを受け止める。そうだ全部吐き出せ。

「お父様だって!自分のために私を売った!母が生きていた頃は違ったのに!使用人も、他の連中も誰も私の味方にはなってくれない!私は!リューズ家の道具なんかじゃない!私は…私は…ーー





自分の人生を生きたい!!」





 シークの全ての込もった重たい一撃に俺は大きく突き飛ばされる。

 衝撃で手が痺れて、思わず手から落ちそうになった刀を力強く握りしめ直す。


「ハァハァ…私は…!」

 力を出し尽くして息も絶え絶えな彼女を俺は静かに見据えた。

「効いたぜ…お前の本気…俺も本気で応える!」

 俺は刀を鞘に戻し、構えを取る。

「その構えは…白神の!」

 シークにも一度仙が披露したことのある、この構え、「白閃」の構えだ。

「いいだろう!かかってこい!私も全力で迎え撃とう!」

 互いに次の一撃に全てを賭ける。

 目線がぶつかり、一息の間に互いが駆け出した。

「その技は一度見た!私には通用しない!」

 大きく体を反転させたシークが俺の視界から一瞬姿を消す。

「これで終わりだ!」

 シークのレイピアが俺の手元めがけて繰り出される。

「そうくると思っていたよ!」

 その一撃は空を突いた。

 シークなら俺の構えから「白閃」を予想し、それに対策してくるだろう。

 なら、俺はその先をいけばいいだけだ!

 白神流ー裏閃うらせん


「行かせねぇぞ!シーク!!」

 

 俺の一撃がシークのレイピアを大きく弾き飛ばした。

 

 勝負ありだ。


「…俺の勝ちだ!約束通り、その結婚、俺がブチ壊す!」

 俺はシークに手を差しのばした。

「型無!」

 シークの手が俺の手に届きそうになったその瞬間だった。


「う〜ん…それは困りますねぇ?」


 一切の気を感じなかった。

 まるでそいつは、初めからそこに居たかのように立っていた。


 真っ黒なコートにふざけた仮面をつけた謎の男?が俺たちのすぐ横で呟いた。


「なんだお前は!」

 俺の本能が告げている。こいつは本気でやばい。

「感動的なシーンをぶち壊しちゃってホントすみません。空気読むの苦手なんです」

 気づくと、そいつの姿はいつの間にか俺の背後にあった。

 もし、こいつがその気なら、今頃、俺はやられていただろう。

 全身から血が引いていくのがわかる。

「お迎えにあがりましたシーク様。ご主人様がお呼びです」

 なるほど、こいつはシークの結婚相手の使いの者ってわけか。

「そういうことなら、渡す訳にはいかねぇな!」

 正直、満身創痍だ。この状態で勝てるとも思わないが、俺は気力を振り絞り、刀を再び振るった。

 だが、その刀は相手に届くことはなく、俺は気づけば、なにか得体の知れない衝撃に吹き飛ばされた。

 それが黒コートから繰り出された蹴りだと気づいたのは、一瞬消えた意識が肋の痛みで戻ってきた後だった。


 今の一撃で何本か折れてしまった。

 もう立ち上がる力も残っていない。


「やめてくれ!大人しく着いていく!だから!これ以上は型無には手を出さないでくれ!」

「聞き分けが良くて、助かります…では行きましょうか?」

「待て…い…くな!」

 ほとんど残っていない力を振り絞り、無駄だとわかっていても手を伸ばさずにはいられなかった。



「型無……ありがとう」


 シークが俺の手をそっと握ったかと思うと、すぐに離れ、そのまま再び握られることはなかった。

 最後に見えたシークの顔には涙が流れていた。







「消しておきなさい」

 黒コートの声に合わせて数人の男が健を取り囲んだ。

「待て!話がー」

 黒コートによりシークの意識は刈り取られる。

「手荒になってしまい、すみませんねぇ…」

 そのまま男はシークを抱えて姿を消した。


 残った健と男たち。

 男たちの手には武器が握られており、今まさに健目掛けて振り下ろされようとしていた。

 そこへ、不意に現れたのは、全身黒づくめの少女だった。

「なんだこいつは!」

「健に触るな!」


 男たちの目がくらむほどの閃光が辺りを包んだかと思えば、男たちは大きく弾き飛ばされて気を失っていた。


 駆けつけた由依と由宇が気を失った俺と男たちを見つけたのは、そのすぐ後だった。

はい、お久しぶりです。

まぁ、この小説をここまで読んでくれてる方なら、まぁいつも通り遅いなぁって思っていることでしょう。

すみません。P5Sやってました。はい、まぁそれ以外にも色々とあったんですが、主にはそれです。

忘れたころに更新していく、この不定期スタイルですが、たぶん、まだまだ続きますので、どうかお付き合いいただければ幸いです。

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