表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぎゅうスキ! TWIST  作者: 神戸 ビーフマン
囚われの牛
7/29

ぎゅうスキ!(7) もう1組の親娘

修正しました。2016/10/16

パワポで作った適当な画像追加しました。2016/10/22

 閑静な住宅街、雲一つない青空。雀の鳴き声が聞こえる。

 健康のためなのかジャージ姿の老人がジョギングをしている。緑色のジャージの胸の部分に大正という文字が書かれていた。季節は冬なのだろうか。


 「ヒッ、ヒッ、フー…ヒッ、ヒッ、フー」


 …ラマーズ呼吸っぽい。


 老人は足を止めた。ジョギングコースが車で塞がれているからだ。


 黒い高そうな車が数台あり、黒いスーツ、黒ネクタイ、角刈りで統一され、尖った顎と鼻を持つ男たちがその車を囲むようにたち塞いでいる。牛の形をした車のエンブレムが太陽の光を反射してキラリと光る。


 老人はしばし立ち止まった後、来た道を引き返していった…



 * * *


 老人が走り去った平和な住宅街で、赤い屋根の家のドアは閉じられていた。玄関の前では顎が尖ったスーツ姿の男たちが慌てていた。


 「なんですか、あなた達は。帰ってください。うちには何もありませんし、黒いスーツもネクタイも間に合ってます。」

 「うえーんうわーん。たけしくーママーママー」


 ドアフォンごしに、女性と子供の声がする。

 スーツ姿の尖った顎たちは顔を青くしドアフォンに向かって焦った声で訴える。


 「話を。話を聞いてください、奥さん!旦那さんの武さんも関わりのあることなんです。」


 「え?」

 「たけしくー?」


 二人の声が聞こえると、スーツ姿の尖った顎たちはホッとした表情を浮かべる。やっと会話ができそうだと思ったのだろうか。


 「私たちは旦那さんと一緒にいなくなったと思われる白銀家のご令嬢である白銀静様の関係者です。お宅のお嬢さんから昨夜未明に白銀静様の行方に関する情報をいただきまして」


 ようやく本題に入れたスーツ姿の尖った顎たち。その疑問に女性の声が応える。


 「うちのフランが?」


 「はい。お嬢さんからです」



 * * *


 数分後、話がまとまりかけたところで、家の前に停まっている一際長い車から男が降りてきた。歴戦の戦士に負けず劣らずの厳つい顔だ。落ち着いた茶色のスーツにはうっすらと縦縞が入っている。男の眼光は鋭く、人を何人も殺しているような恐ろしさがあった。


 歴戦の厳つい顔は、ドアの前までゆっくりを足を進めると、一言告げた。



 「娘さんと話がしたい。」




◇◇◇


 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…うおおおおおおおおおおおお、せいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 さきほど車から降りてきた歴戦の厳つい顔は野獣のような雄叫びをあげている。野獣っぽいので今後は野獣と呼ぶことにする。



 長方形の8畳程度の広さの部屋。天井のシーリングライトは沈黙している。四方を囲む真っ白な壁。二人がけのソファーの向いにはローボード、その上には20インチの液晶テレビ。おしゃれなシェルフには小分けできるような布製の引き出しがついている。部屋の隅にはシングルサイズのベッドとPCデスクとその専用チェア。


 野獣が一匹、チェアに座ってノートPCを掴みながら雄叫びをあげている。



 野獣は獅子のような髪型としており、その鋭い目は肉食動物のようだ。獣を野放しにするな、檻を持ってっこい、檻を。


 野獣はノートPCを掴んで、一つのウインドウを凝視していた。

 そのウインドウは、第三者を介しての彼の娘からの受信メールだった。


 表題:生存報告:静

 差出人:孤高田武

 本文:Toお父様

    静かなる牛

    ケースはT4です。だそうです。



 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…うおおおおおおおおおおおお、せいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 メールを見たあと、再び野獣は雄叫びをあげた。本日4回目の雄叫びである。


 ソファーにはこの部屋の主である少女が座っており、そばには二人の黒服が立っていた。少女は黒服に話しかける。


 「昨日のURLって何だったんですか?T4というのも良くわかってなくて…あと静かなる牛って…」



 黒服は耳を塞いでいた両手を降ろして説明する。


 「緊急時の連絡方法ですよ。地震などのときに、URLにアクセスして無事かどうかを伝えるのです。誘拐されたとき脅されて連絡を取る場合もあるので、囚われの身なのかも連絡するために暗号化されているんです。T4は本人護衛ともに無事、場所は不明、第三者の同行者あり、自力で帰宅できる可能性あり、護衛を失う可能性あり、援助の希望ありを表しています。静かなる牛も囚われの身でないことを示します。こちらはメール連絡用ですね。」


 なるほどと少女が頷いていると、少女の目の前に野獣がいた。少し目が潤んでいる。


 「きゃあ!」


 少女は驚いて悲鳴をあげてしまう。


 「何、今の声はなに?娘は無事なの?」「落ち着いてください。大丈夫、大丈夫ですから」


 遠くで声がする。



 「続き、続きを会話したい。」


 潤んだ瞳の野獣は少女にそうお願いをしていた。




 表題:RE:生存報告:静

 宛先:孤高田武

 本文:無事で良かった。と言っている。


 表題:RE:生存報告:静

 差出人:孤高田武

 本文:クレジットカードの使用履歴は

    どうなっているか聞いて。だそうだ。


 表題:RE:生存報告:静

 宛先:孤高田武

 本文:お前がいなくなってからも購入履歴があったので、

    牛の穴本店を抑えた。と言っている。


 表題:RE:生存報告:静

 差出人:孤高田武

 本文:物品の在庫はどうなってましたでしょうか。

    と敬語を使えと言ってきた。


 表題:RE:生存報告:静

 宛先:孤高田武

 本文:在庫は減っている。

    購入したものはどこに消えているのか

    調査したのだが、まだわかっていない。

    こちらは敬語は特に指摘なし。どーぞ。


 表題:RE:生存報告:静

 差出人:孤高田武

 本文:買った物品はこちらに来ております。

    購入すると目の前に現れます。

    楽でいいなあ、どーぞ。


 表題:RE:生存報告:静

 宛先:孤高田武

 本文:そちらに物資は送ることは可能なのか。

    黒服多くて緊張感はあるよ。どーぞ。


 表題:RE:生存報告:静

 差出人:孤高田武

 本文:扱う品を広げてもらえないでしょうか。

    食品、キャンプ用品、防犯用品、生理用品が

    特に欲しいです。可能であれば、

    本社を海外に移して軍事用品も取り扱って

    もらえると助かります。

    o(メ`皿´)○()△☆)/←モレ o(メ`皿´)○()△☆)/←モレ


 表題:RE:生存報告:静

 宛先:孤高田武

 本文:私に任せておけ。

     (||゜Д゜)ヒィィィ! (((( ;゜д゜)))アワワワワ

挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ