ぎゅうスキ!(14) 迷い
修正しました。2016/10/28
レンガづくりの街並みに街頭が灯る。そのオレンジの灯りはレンガの僅かな凹凸を強調し、とても幻想的に見える。空には赤、青、緑の月が昇っており、僅かな雲がその月にまるで霧のようにかかっている。
どこかの室内だろうか。ソファーにオッサンが座っている。紫鉄血は窓から外を伺っていた。
「もう少し上手になさい。普段はもっと馬鹿っぽいでしょうに」
紫鉄血は優しく、少し寂しくも感じる顔で、オッサンにそう言った。
オッサンは沈黙で応える。その眉間にはシワが寄っており、とても辛そうな顔をしていた。
「……皆楽しそうにラピュータみたり、コタツに入ったりしてた」
オッサンは小声でそう呟く。
紫鉄血はティーポットから紅茶をカップに注いだ。白い湯気が立ち昇る。
カップをオッサンの前に出す。
「城では気づかないふり上手だったじゃない。」
くすっと笑ってそう言った。
「ぐっ。わかって言ってるだろ。あれは何も知らなかっただけだよ」
少し頬を赤くして横を向いてオッサンは答える。
カップを受け取ると口に運ぶ。
「覚悟は決まりそう?あ。顔や態度に出しちゃだめよ」
オッサンは再び眉を寄せ沈黙する。
再びカップを口に運ぶ。
「でも、笑っちゃうわね」
紫鉄血は口に手を当て微笑む。
「たった3人捕まえるのに、50人程度の部下を引き連れた将軍の一人充てがうかしら。あの陰険メガネ」
そう言いながら、紫鉄血はオッサンの後ろに周り、肩に手を置く。
「大丈夫よ。あなたが覚悟を決めきれないなら、鬼神にやってもらうわ。」
「…でも、その場合って…」
オッサンは後ろを振り返る。紫鉄血の柔らかい唇がそれを迎えた。
驚きの表情を浮かべるオッサン。少し頬を染める紫鉄血。
1秒ほどだろうか。重なる唇が離れると紫鉄血はその震える口で話す。
「あなたが必要なの」
* * *
そこは灯りも付いていない部屋だった。窓からは見える月は黒い布のような雲にまきこまれており、その色はわからない。テーブルには酒のボトルが空いており、グラスは床に落ちていた。
ベッドには男が一人横たわっており、何度も寝返りを繰り返していた。
男は『クリエル』と言うと、男の前にウインドウが浮かび上がった。
男はウインドウのキーボードのようなものを使い文字を綴る。
表題:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:今日セイちんにキスされた(* ̄3 ̄)
しばらくの後、彼の娘から返信がきた。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文: ( ̄△ ̄;)エッ・・?
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:どうやって断ったら良いかアドバイスくれ(;´Д`).
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:ちょいまち(;´д`)ノ マッテ
どうしてそんなことになったん?
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:振り向きざまにチュ(〃ノωノ)キャッ
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:事故だろが!タヒね。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:え?でもあれは恋する瞳(灬╹ω╹灬)┣¨キ┣¨キ*
男は「ふふっ」と笑うと、寝返りをうった。ウインドウも彼の寝返りに付き従うようについてくる。
再び返信の赤いウインドウが男の目の前に現れた。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:で、何があったん?
男は少しビクッとした。男は文字を打ち込む。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:!(*゜Д゜*)
すぐに返信がきた。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:そういうの良いから。
男はしばらく何度も寝返りを打つと、娘にメールを送った。
娘からはすぐに返信がくる。
男と娘のメールのやり取りがしばらく続いた。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:パパ人を殺すかもしれへん。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:それで。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:それでって。人殺しやで。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:異世界じゃん。日本の法律も適応されないじゃん。
男はメールの返信を送るのを少し躊躇した。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:悪人だけじゃないで。善人も殺すんやで。いっぱい殺すんやで。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:うーん。面倒くさいな。
どれか選んで。
▷私のために殺して。
▶殺してでも帰ってきて。
▷ママと香菜が待ってるよ。
▷寝れない夜はメールの相手するよ。
男は再び「ふふっ」と笑うと、決めた選択を娘に送る。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
差出人:孤高田フランソワーズ
本文:寝れない夜はメールの相手するよ。でよろ(っ´∀`)っ
娘からの返信はすぐに男に届いた。
表題:RE:パパモテキかもしれん<( ̄^ ̄)>
宛先:孤高田フランソワーズ
本文:今してるじゃん。(ー△ー;)
男はそのメールを見ると、「くくくっ」と笑う。
「帰ったら、新しい牛グッズ買ってやらないとな…」
そう言うと、男はもう一度寝返りを打つとウインドウを閉じた。
月は雲を抜け、一際明るく空に輝いていた。




