風鈴/懺悔
蒼いガラスの
風鈴を何年も
仕舞ったままなのです
その音は風を知らぬまま
美しい透かしは
夏の景色を映さぬまま
真っ暗な箱の中で
未だ沈んでいるのです
知らない家の軒先で
ちりん、と
涼やかな音を耳にするたび
冷えていくみぞおち
取り戻すことの出来ない夏が
責め立てる高音
忘れてしまうことと
思い出してしまうことは
どちらが罪深いのでしょう
泣き声も
鳴き声も
出しかたの分からぬ風鈴が
あの押し入れの奥
ひっそりと
眠っていることを
私は知っているのです