抗争
その日の朝はいつもと違っていた。
時間は午前七時、何時もはこの時間から皆が起き始め、ダラダラ集まり始めるが今日はもうすでに全員が揃っていた。
それぞれが体に自分の武器を身につけ、いつもの団欒とした雰囲気はない 、自分たちの武器や銃の手入れ、小グループで戦闘の連携を話し合う。そして登校時間になると僕達は足並みを揃えて学校へと向かった。
今日、僕達はG組に抗争を仕掛ける。
――昨晩
僕達は新しい仲間となった、藤澤さんを交えての初めての会議を開いた。
会議の内容は皆んな既に分かっていた。G組と争う中で問題点だったF組とこちらの人数不足、この二つの問題が解消された今、やる事は一つしかなかった。
「では、これより組長の命により、抗争の作戦を伝えます。」
飛葉さんはいつものように定位置であるホワイトボードの前に立つと作戦の説明をし始める。
「まず今回の抗争はG組組長である沖原を討つこと。なので作戦は極めて単純、沖原を撃つことを優先的にさせる、他の奴らは邪魔なら排除、でも停学にする必要はないわ、行動不能にできたら放っておいてもいい。
そしてその迎撃に関してだけど、各人には前に決めたコンビでそれぞれ迎撃してもらいます。」
「あ、あの、僕は?」
まだ慣れていないこともあって少しよそよそしい態度で藤澤さんが手を挙げる。
「あなたには私とセナと一緒に来てもらうわ。私とセナは主に司令塔に回るからサポートをお願い。」
「うん、わかった。」
指示を聞いた藤澤さんがコクリと頷いた。
「あ、それとアヤメは組長と一緒にいて」
「え?」
「今回は全員を巻き込んだ戦闘よ、悪いけど戦闘経験のないアヤメと組長は足手纏いになってしまう、特に組長はやられればこちらの負けになってしまうし、組長とアヤメ二人は校舎内のどこかで息を潜めていて。」
「じゃあ私と紀子は二人の護衛?」
「そうしたいところだけど、残念ながら今の私達に護衛に人を割けるほどの人手はないわ、確かに渚が来てくれたおかげで学級閉鎖の危機は減ったけど、人数の差が埋まったわけではない。だから少しでも迎撃に人を回さないといけないの。だからこそ、隠れてもらうのよ。」
「……わかりました。もし襲われたら私が命を懸けて組長をお守りしますね。」
そう力強い眼差しで言う百瀬さん、凄く頼もしく思えるけど、男として女性にそんなこと言われるのは少し情けない気がする。
かと言って僕が守る!なんて言える立場も力もないのでただ僕も委ねることしかできなかった。
「とりあえず話はここまで、何か質問は?」
飛葉さんが尋ねると元気よく喜田さんが手を挙げた。
「じゃあ、しつもーん!ちなみにもし、Gが抗争に乗らなかったらどうするの?」
「それは余程馬鹿じゃない限りありえないわ、F組と同盟もなくなり、こちらも渚の加入により組を潰すのに必要な停学者が一人のところが二人になった、小競り合いをするメリットが何一つなくなったんだから人数が少しでも有利に使える抗争を断る理由がないわ」
飛葉さんがそう説明すると喜田さんなるほど!っと納得の表情を見せた。
「多分、これがG組との最後の争いになるわ、負ければこの組は終わり、勝っても、次は更に強いF組が待ち構えている。前途多難だけど皆で頑張りましょ」
その言葉に皆が頷いた。
「じゃあ、最後に組長、一言」
「え⁉︎」
そう言って僕はセナさんに引っ張ってこられて飛葉さんの横に立たされる。
みんなが注目しながら僕の言葉を待つが、唐突な事に何を言えばわからなくなり、しばらく口ごもってしまう、ただ、そんな僕をみんなは真剣な目で待っていてくれる、すると自然の言葉がではじめた。
「……僕がこの学校に来て一ヶ月が過ぎました、はっきり言ってまだ慣れないことばかり凄く不安な時もあります、みんなとも生きて来た世界が違い考え方も違うことが多く戸惑ってばかりです。」
少し言葉を詰まらしながらも話をする僕の言葉を皆は黙って聞き続けた。
「それでも、一つだけ皆んなと同じところがあります……それは、僕もこのクラスを潰したくないというところです。まだ転校して一ヶ月だけど、この一ヶ月は今までの学園生活の中で充実した日々を過ごせました。僕はこれからも、このクラスでみんなと過ごして生きたいです。だから、皆んなで勝とう!」
そう言って締めくくる。
すると皆も大きな声で応えてくれた。
「へ、組長にそこまで言われちゃあ勝たなきゃいけねぇな?」
「当たり前だ、新生B組の初抗争だ、うちの組長にG組の親玉の首手土産に渡してやろうじゃねぇかぁ!」
――
僕たちは学校に着くと自分たちの教室には入らずとある場所に集まっていた。
「さあ、良子、準備はいい?」
「任せて!どでかいのぶん投げてやるんだから」
「はい……これ、さっき拾ってきた……どでかいやつ!」
「ゴメン、紀子、これはデカすぎるわ」
「椎名はこれくらい投げれたぞ?」
「あんな、全ステータスを力に全振りした規格外の子と一緒にしないでよ!」
「まあ、そう言うと思って的確なの持ってきたよ。」
「おお!流石セナ!これは中々いい大きさだねぇ持ちやすい。」
「じゃあ、喜田さん、お願い。」
「よし、じゃあ、投げるよ?せーの――」
――G組
ガッシャーン!
突如中庭方面の窓ガラスが激しい音を立てて割れる。
音に驚いたクラスのメンバーが何事かと廊下に集まる、それにつられて沖原も後から廊下へと出る。
すると廊下には割れた窓の破片が散らばる中に窓に投げつけられたと思われるソフトボールよりも少し大きめの石が転がっていた。
沖原はその石を見た後、割れた窓ガラスから外の様子を覗く。
そこには武器を手にしたB組の生徒が五人横並びに列を縦に三つ作り集まっていた、
そしてその列の前にはその面子の中で最も貧弱そうな少年が立っていた。
「テメェら……」
その光景に沖原が苛立ち、体を小刻みに震わせる、そして沖原はその列の端にいる見覚えのある姿を見つける。
「藤澤……なんでテメェがそこにいる?」
「縁あってこれからB組の元に命を預ける事になった。批判なら甘んじて受け入れよう。」
「テメェ……!」
沖原が歯を食いしばりギリギリと音を立たせる。
そして向こうの組長である四辻はその場で大きく息を吸い込む、そして……
「これより!僕達B組はG組に、抗争を申し込む!」
と中庭中に響くほどの大声で叫んだ。
その声はもちろん他クラスにも聞こえており、瞬く間に他の教室の窓から他の組の者達が顔を出し始めざわつきが起こる。
「ど、どうする、沖原?」
「……は、ははは、たかだかカスを一匹取り入れただけでもう勝者気取りかよ、おもしれぇ……上等じゃぁぁぁぁゴラァァァァァ!」
沖原も相手に大声につられるように怒声で返した、そしてその怒声を合図にB組とG組の抗争が始まった。




