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抗争学園  作者: 三太華雄
一章
31/40

反撃

「なんだと!一体どういうことだ⁉︎」


 沖原が部屋の外にまで聞こえるほどの声で電話越しに相手を怒鳴りつける。しかし電話の相手はそんな沖原の声にも冷めた口調で答える。


『どういう事も何も言葉の通りだよ、クーデターの話はなかった事にしたいって、そんでもってあんた達との同盟も破棄させて貰う。』

「ふざけるな!いまさら何言ってやがる⁉︎」

『あんたも見ただろ?あのビラ、アレのせいで新島派のやつらがあんた達との関係を疑いはじめてねぇ、その事もあってあんたらとの同盟も解消したいんだとさ。幸い公表もしてないしなんの支障もないからね。』

「何を身勝手な事言ってんだ‼︎元はと言えばテメェが持ちかけてきた話だろ!」

『何度も潰せるチャンスがあったのに、遊んで、仕留め損ねたのはどこのどいつだい?』

「それは……」

『ま、ともかく、あたし達はここで手を引かせて貰うよ、まあ、相手は一人消せば潰れる組なんだからあんた達でもどうとでもなるだろうし、精々頑張りな。』

「あ、おい待て!」


 半ば強引に電話を切られると、沖原はそのまま力任せに携帯を投げつける。


「クソが!ふざけやがってぇ……」


 そして今度は立て続けに一人の慌てた組員が勢いよくドアを開けて入ってくる。


「沖原、大変だ!」

「今度は何だ⁉︎」

「うちの連中がB組に襲撃を受けている‼︎」

「なんだと……⁉」


――


「さあ!行くぞ野郎ども‼︎今までの借りを何倍もの利子つけて返してやれや!」


 若田部の号令に攻撃班が声をあげると中庭に集まるG組の生徒達五人に一斉に突撃する。

F組という盾があり、今まで襲われる立場になかったG組の生徒たちはこの状況に慌てふためき、戦う姿勢すら見せずにただ一目散に逃げ回る。


「逃げる的程……当てやすいものはない!」


 秋山が背を見せ逃げる惑う一人の男子の後ろから銃を放つ、放った弾は相手のふくらはぎに命中すると、男子は足を挫きそのまま転倒した。

 そして、そこにすかさず、若田部がバットを手に駆けつける。


「く、来るなぁ!」

「オラ、まずは一人目!」


 若田部が怯えを見せる相手にも容赦なく顔面目掛けてバットを振りおろす。

 殴られた相手は鈍い音と共に吹き飛ぶと、殴られた顔には大量の鼻血と歯を折り、そのまま地面に倒れこみもがき始める。


「馬鹿、顔を狙っても停学は難しいだろ、確実に停学狙うなら足を狙えって!」

 

 顔を手で覆い、あまりの痛みにもがく男子に今度は片瀬足にめがけがゴルフグラブで振り抜く。

 男子のぎゃぁぁ!と悲鳴が中庭に響き、それを悲鳴を聞いた他の男子達も振り向きもせず、ひたすら校舎を目指して走り続ける。


「クソ、なんなんだよこいつら」

「こいつら尋常じゃねぇよ、まるで容赦がねえ……」


 敵に対して一切の容赦のないB組の攻撃にG組生徒はただ怯えるばかり。

ヤクザという肩書で堅気相手に威張り散らしてきたG組の生徒たちには幼いころから極道としての教育を受けてきた若田部たちの相手にはならなかった。


「ホラホラ、どうした?男なら逃げずにかかって来い!」

「一人の時ですら勝てなかったのに五体一で勝てるわけねぇだろ!」


 先週までは五人がかりで襲いかかっていた喜田に今度は逆に襲われている。

 校舎までの入り口が見えたしかしその前を回り込んでいた青山が立ち塞がる。


「糞ッ回り込まれた、避け……」

「いや、待て、こいつ確かF組が狙えって言っていた奴だよな?」

「そういや、そうか、なら奴になら俺達でも勝てるって事だよな?ならば……」


 男子たちが互いに頷くと足を止めずに武器を手に取ると、先に男子一人が前に出てそのまま青山に殴りかかる。


「死ねヤァ!」


 しかしその瞬間、視界から青山が消えたと腹部にまるで鉄球のような重い一撃が、走る。


「グフ!」


腹の溝をメリケンサックをつけた拳で綺麗に正拳突きを決められた男子が痛みによりその場で腹を抑えながら地面に膝をつく。


「な、なんだよ⁉こいつは弱いのじゃなかったのかよ⁉」

「残念ながら青山は集団戦は苦手だが、一対一(サシ)戦いならうちの中でも上の方だぜ?馬鹿だけどな!」


馬鹿と言われた青山が抗議しているが、若田部は無視をして膝をつく相手の前に立つ。


「ひ、ひぃ!わ、悪かった!俺達が悪かった!頼むから許してくれ‼︎」


男子が土下座で必死に頭を下げる。

しかし若田部は許しを請う相手に対し容赦なく頭に蹴りを入れる。


「は?舐めてんのか?お前らのような下っ端のカスが頭下げたところで終わるような戦争じゃねぇんだよ‼︎」


若田部が大声で怒鳴り一蹴すると再び大きく号令をかける。


「オラ!お前ら!まだまだだ!とことん追い詰めんぞ!」

「「おう!」」


再び中庭に殴打と断末魔の悲鳴が響き渡る。


――G組


「怪我人の状況は?」

「足を折られた奴が二人……それ以外の奴らも停学まではいかない怪我や襲撃に遭って精神的に追い込まれてるらが多数いる、このままではヤバイぞ。」

「クソックソックソックソッ」


 話を聞いた沖原が狂った様に何度も壁を殴りつける。


後一歩まで追い詰めていたはずなのに気がつけば追い詰められ始めている。一気に覆った状況に沖原はやり場の無い怒りをひたすら壁にぶつけ続ける。


「ハァ……ハァ……おい、藤澤呼んで来い。」


――


沖原からの呼び出しを受けた藤澤が会議室へと入る。

中には沖原以外にもG組のメンバー全員も待機しており、ピリピリとした重い空気が漂っていた。

藤澤もその空気を感じとり思わず息を飲む、そして少し緊張しながらも沖原の元へと足を進める。


「それで、どうしたの?」

「どうしたの?じゃねぇ、どうすんだこの状況?」

「え?」

「今やウチの奴らは二十五人まで減らされた、これも参謀のお前がしっかりしてないからじゃねぇのか?」

「そ、そんな!だって僕は――」

「下手な言い訳はいいんだよ?お前がちゃんと作戦を立てなかったのが悪い、お前らもそう思うだろ?」


 沖原の言葉にまるで合わせているかのように周りが賛同し、藤澤に批判を浴びせる。


「そ、そんな……」

「こんな状況にをした落とし前……どうつけるつもりだよ?」


 沖原の問いに藤澤は答えられない。


「四辻の首、取ってこい」

「え?」

「貧弱なお前でも四辻くらいならやれんだろ?」

「でも彼の周りには護衛が……」

「だから一人の時にやるんだよ、寝てる時とか、縄張りの中とか油断してる時にな!」

「そ、それって……」


 沖原の言葉に藤澤は呆然としている、いくら争っているからと言って縄張りに入るなど常識的にありえない事、そしてそれを強いられているということはつまり……


「なあ、藤澤……極道ってのは組長(おや)の言葉が絶対だよなぁ?お前も鬼の子(・・・)と呼ばれた男なら命張って俺の欲しいものを取ってこいや。」


――……


 その返事を拒むことは周りの空気が許さない、藤澤は悔しさのあまり口から血が出るほど唇を噛み締めると、無言でその場を後にした。


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