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抗争学園  作者: 三太華雄
一章
2/40

紅学園高等学校

前作の経験を活かして書いてみました。

少しは文章力も上がってると思います。……多分

 私立紅学園高等学校しりつくれないがくえんこうとうがっこう…… 今日から僕が通う事になった高校の名前だ。


 僕こと、四辻誠(よつつじまこと)は今この高校に行くために見渡す限りに田畑が広がる田舎道を一人歩いている。


 いまの時期は桜が舞う四月ではなく、まだ夏の暑さが残る九月の初め。

何故こんな時期に通い始めたのかはと言うと僕が転校生だからだ。


 義務教育の関係か地元の学校へ入学することが多い中学校とは違い、自分の志望した学校へ行けて、定員制限もある高校での転校は決して多くはない。


 それでも転校しようものならそれなりに理由が必要なる。

 僕の場合、は至ってシンプルな事情。簡単に言うと虐めだ。


 顔が悪いのか性格の問題なのかはわからないが、どういう訳か僕は小さい頃から虐めを受けていて、それはあだ名や仲間外れから始まり、年を重ねる事に虐めに暴力が加わっていった。


 高校生にもなれば少しは収まるかと思いきや、生憎僕の通っていた学校は、私立で小中高の一貫校。

 同級生は顔なじみばかりで立場は変わることもなく、そのまま虐めはどんどんエスカレートしていき、最後はもはや拷問と呼べる域まで達していた。


 家は両親が幼い頃に離婚し、今は新しい母親と血の繋がらない弟がいて、僕を除いて三人が円満に暮らしており、家に僕の居場所と呼べるところはない。


 周りに助けてくれそうな人もいない、この環境が変わらないことに諦めがついた僕は、この地獄から唯一逃れる手段として、校舎の上から飛び降りた。


 悲しいことに、今まで受けた虐めのおかげか、死と言うものに全く恐れを感じなかった僕は、なんの躊躇もなく屋上から飛び降りれた。


――もし転生と言うものがあるなら今度は異世界に………


 この世の数少ない楽しみの一つだったラノベに影響されてか、そんな淡い期待を浮かべる僕は、目を瞑り、体を引力に委ねると、全身を襲う一瞬の痛みと共に意識を失っていった。


 だが次に眼にしたものは期待していた異世界でも死後の世界でもなく、病院の一室にあるベットの上から見上げると見える真っ白な天井だった。


 死を覚悟して飛び降りようとした結果、不幸?なことに前日の雨の影響でぬかるんでいた地面と足から落ちたことにより全治二ヶ月で済んでしまった。

 どうやら神様は僕が死ぬことすら許してはくれないらしい。


 だがこの一件が切っ掛けで周りに少し変化が起こった、学校側がこの件を隠蔽するために転校を持ちかけてきたのだ。

 

 いじめが原因で自殺が図った生徒がいると世間に発覚すれば、学校は世間から壮大に叩かれるだろう。

 それに焦りを感じた学校側は、兄弟校への転入を提案してきた。


 はっきり言ってこんなのは傍から見ればなんの問題の解決にもなっていないだろう、だが僕にとっては問題解決なんてどうでも良かった。

 どうせ世間に公にしたところで叩かれるのは学校側であって、いじめを行った張本人達は少年法に守られるであろう、ならば雀の涙程度の仕返しより環境を変えて新しい生活を選びたい。


 僕は学校側の提案に乗ることにした。ただ兄弟校っていうのに少し不満があった、僕は新しい生活を始めるために今の環境からキッパリと縁を切りたい。


 だから今の場所から遠く離れた寮のある高校の条件を提示した。僕の条件に学校側が少し難色な態度をを見せていたところ、とある教師が紹介してきたのがこの紅学園だった。

 

 その教師は倉田と言い、知り合いが理事長を務める学校がちょうど欠員を募集しているということで話を持ち掛けてきた。

 

 倉田先生はまだ二十代後半と若く、校内では優しくて頼りがいがあると評判のいい教師だ。

 だがはっきり言って僕はあまりこの教師は好きではない。嫉妬が混じってそう思違えているだけかもしれないが、この教師の態度には少しの違和感を感じていた。


 生徒に見せる優しさはまるでペットに向けられたような、そして時折に見せる表情は生徒…いや学校の人物全員をを見下してるように思えたからだ。


 だから何かありそうに思えて仕方がなかったから、初めはこの高校への転校はあまり乗り気ではなかった。

 ただ場所がここから遠く離れた田舎の山奥にあり、全寮制と言うこともあって新しい生活を始めるにはもってこいの場所なので少しためらいもしたが、一度捨てた命だから何が起きても大丈夫だろうとここに行くことに決めた。


 家族にこの転校の話をすると、とても嬉しそうに快諾してくれた。

 まあ、向こうからしてみれば厄介者が消えてくれてさぞ嬉しいのだろう。


 僕はこの高校で一からやり直すためにと、目が隠れて見えないくらいに伸びた髪を眉毛が見える程度までバッサリ切り心機一転してみた。

 

 僕の顔から眼が見えるようになったのは何年ぶりの事だろう?

 鏡に写った僕の顔には数年ぶりに眼が写っており、その眼は割と大きく、僕の顔立ちは一気に幼くなってしまった。


――変ではないよね……


 今までの事を振り返り、ふと切った髪の部分が気になり始め触りながら人気のない田舎道を道を歩く。

 僕の顔はおそらく童顔の部類に入るのだろう、だがそれが良いのか悪いのかはわからない。

 ただ前の根暗な格好よりはマシだろうと自分に言い聞かせている。


――それにしても遠いな……


 家の近くの駅から一時間乗り過ごし、名前も聞いたことのない駅に行き、そのあと田舎特有の一日数本しか出ないバスに乗り三十分。さらにそこから歩いているが目的の学校まではまだまだほど遠い。


 確かに遠いところがいいとは言ったがここまで遠いとは思ってもみなかった。

 いや、それ以前にこんなところに本当に学校なんてあるのだろうか?

 この倉田先生からもらった手作り感満載のパンフレット。


 その中に書かれてある地図ではこの田舎道を進んだ先にある山道を抜けたところにあると書いてある。

 周りに家も店も見当たらない、こんな人気(ひとけ)のない場所に学校を建てたところで人が集まるとは思えない。


 しかしもらった資料によると一学年およそ三百人近くも集まる進学校と書かれてあった。

 はっきりいってあからさまにおかしい。何か特色があるならまだしもパンフレットには大学への進学を目的とした普通の進学校と書かれてある。

 

――そもそも場所はあっているのだろうか?


 辺りを見回しても見えるのは田畑だけ。

 先生の話では僕の転属するクラスの担任が迎えに来てくれているという話だったが、駅で三十分待って 誰もそれらしき人は見当たらなかったのでバスの時間の関係もあり、仕方なく自分で足を進めてきた。


 真夏の太陽がじりじりと僕を焦がし未だに聞こえるセミの鳴き声が暑さを増幅させる。

 普段からあまり運動をしていない分この季節に長距離を歩くのは地獄だ。

 今まで受けた痛みに比べたらと思い踏ん張ってはいるがやはりキツイもんはキツイ。


 もしかして僕はこのまま熱中症で死ぬんじゃないかとすら思い始めた。

 まあ死ぬのは今更怖くない、ただ新しい学校だけは一度だけでも見ておきたい。


 そう思いめげずに歩いていくと少しずつ風景が変わり始め、辺りには木々が見えるようになり気が付けば山道へと入って行った。

 

 周りが雑木林に変わり木陰ができたおかげで太陽が隠れると僕は少し元気を取り戻し、足を進める。


――学校までもう少し


 全身汗まみれになりながらも足を止めずに山道を進んでいく、すると前から林の出口らしきところが見 え木と木の間からは少しまばゆい光が見え始めた。

 それを見ると、自分でも気づかないうちに足早になっていく。

 

そして林を抜けた僕は次に見た光景に思わず立ち止まってしまう。


 目の前に現れたものは隠れていた太陽の光と広大な平地、そしてその奥には傷だらけになっている学校が佇んでいた。


 それはまるで暴動でもあったかのように見えるほどボロボロで、廃校になっているのじゃないかと疑ってしまう。

だが校門にはしっかりとこの建物の名前が書いてあった。



「私立紅学園高等学校」


僕が通うことになった学校の名前だ。


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