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抗争学園  作者: 三太華雄
一章
17/40

香取

「凄い……」


僕は部屋に戻ったあと、九条くんに借りた映画を見ていた。

結局横田君お勧めの柴木ちゃんは借りられなかったが、この作品も十分見ごたえがあった。


「藤澤の鬼と呼ばれた男。」


 関西で起きた大きな抗争で、主人公の若き組員、九鬼隆平が活躍しのし上がる話だ。


――これ実話なんだよね?


 本当にドラマや漫画のような展開に思わず手汗を握る。

 ずっと萌え系や日常系を見ていた僕には新鮮でもあった。

 そして話は山場まで来る。


『お前、このまま無事に帰れると思ってんのか⁉』

『こちとら、ここにカチコミに来た時点で腹は括っとるわ!殺れるもんなら殺ってみぃ!』


 そして次の瞬間、藤沢が突っ込むところで、ノックが聞こえて一度ビデオを止める。


「組長、いる?」


 少し不満になりつつもドアを開けると横田君が尋ねてきた。


「あ、早速見ている……訳ではないのか」


 僕が見ているものが勧めたものと違うとわかると少ししょんぼりしていた。


「横田君の言ってたヤツを借りに言ったんだけど、なんか借りられちゃてて……」

「ああ、それなら仕方ないね、しかし藤沢の鬼を借りるとはなかなか渋いね。」


 借りた経緯を言うとまたややこしくなるので愛想笑いでごまかし話を逸らす。

 しかし、やっぱり、横田君も知ってるのか。


「ところで何か用があってきたんじゃないの?」

「ああ、そうだった。飛葉さんが会議するから呼んできてって」


――飛葉さんが……


 多分何かわかったのだろう。

 横田君も気づいてるようで、先ほどとは違う、真面目な雰囲気になっていた。

 僕は横田君と一緒に会議室へと向かった。



――

 会議室に入ると皆がもうそれぞれの定位置に座っていた。

 もう皆が察しているようで全員がただ静かに始まるのを待っていた。

 僕が上座の席に座るのを確認すると飛葉さんが、話し始める。


「……これで全員揃ったようね、じゃあこれから会議を始めるわ」


 そう言うと会議室は緊張に包まれる、全員が真剣な目をして語り手の飛葉さんに注目する。

 

「まず、前回の会議から一週間、私とセナでG組とF組の調査をおこなったわ。結果は……黒、組長の言った通り、G組が私たちを狙っているようだわ。」


 その言葉に周りがざわつく。

 好戦的に受け取るものをいれば冷静に危険を感じる人もいた。


「やっぱりGか……」

「上等だ、全員帰り討ちにしてやるぜ」

「でもそんな話してたっけ?」


 一緒に調査していた、清川さんが自分の記憶を思い返すも見当たらなかったのか首をかしげている。


「ううん、直接的には言ってないわ、ただ会話の中にそれとなく、ほのめかせる内容を混ぜていたのよ。自分達はいつでもB組を潰せる、抗争の準備を始めてるってねいう会話をね、話を聞いてる前提で、わざとそう言う話をしてこちらに圧力をかけていたのよ。」

「なかなか手が込んでるな。でも、G組にそんな考え方するやついるか?」

「そう、それが問題なのよ。」


 片瀬君の質問に、そう答えると、飛葉さんの表情が険しくなりホワイトボードに書いてあるAからHまでのアルファベットのうちFとGの間に一本の線を入れた。


「恐らく、GはF組と組んでいるわ」

「はぁ⁉︎」


 飛場さんの言葉に若田部君が驚きのあまり立ち上がる。

 確かG組は全クラスの中でも一番評判の悪いクラスだ。

 そんなクラスと別のクラスが手を組むという事に皆、驚きを隠せないでいた。


「何でGとFが?」

「それはわからない、ただセナが覚えていたのよ、会話を聞いていた時、G組の一部の奴らとF組の奴らの会話が同じ内容をしていたことを、多分、私たちが調べていることを読んで、あえて、そう言う話をしたのよ、こちらだけにGとFが組んでることを気づかせるためにね。」


 僕はその作戦に思わず関心した。


 普通の人から聞いた内容ではごく普通の会話、でも調査してる組にだけは同じ内容の会話をしていてることがわかり、その不自然さに気づいてしまう、つまり僕たちが話を聞いていることを考え、僕たちにだけ気づかせたという事か。


「た、たまたまじゃないの?」

「たまたまで一言一句同じ会話をすると思う?」


 飛葉さんの返しに青山君が黙り込む。


「しかし何でGとFが?」

「そう、そこがわからないわ、ただFには香取がいる、何か考えがあるのでしょう」

「香取さんってすごいの?」


 飛葉さんの言い方では飛葉さんは香取さんに一目置いているように聞こえた。

 

 確か前に組長会議での自己紹介で、聞いたときは殺し屋の子供で金で雇われていると言っていた。

 殺し屋と言われれば実力はありそうだけど、頭がいいイメージはあまりなかった。


「組長会議でも言ってたけどあの子はヒットマンの子供、殺しの英才教育を受けてるの、あの子の親は完璧主義。確実に相手を殺すために下調べから計画的にやるから、その教育を受けてきた香取は、実力も頭も人よりずば抜けてるの。そしてあの子が参謀にいる中、何にもなしにGと手を組むとは思えない。」


 飛葉さんの話を聞いて、自分の考えが浅はかだったと理解した。

 僕が知ってるのは所詮漫画やアニメの話、百人に囲まれて全員を返り討ちにできる殺し屋なんて、現実にはいない、百人に囲まれたのなら、あらかじめ百人を殺せるように準備をしておくのが一流の殺し屋なのだろう。


「じゃあこれからは……」

「ええ、敵はGとF、両方と相手をしなければならない。」


 その言葉に皆が無言になった。

 状況は思っていた以上に最悪になったらしい。


「ただ、すぐに抗争が始まるわけではない、だから、心構えだけしておいて……いろいろ……とね……。」


  最後の飛葉さんが少しおかしな言い回しで話を締めると、その日はそれで解散となった。


 ただその後、飛場さんがその場に若田部君、片瀬君、秋山さん、喜田さん、そして百瀬さんを残していた。

 クラスの主力を集めたから、戦いの話だろうと思い、僕には入れないと話と判断しその場を立ち去った。

その中に百瀬さんがいることに何にも気にしないまま……


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