プロローグ
この世界には表と裏があり、裏の世界には精霊と契約した選ばれし者しか行けない……。そして裏の世界には表の世界の不吉の元凶である魔物達が闊歩していて……。
そこまで読んで俺は意味不明かつ痛々しい文章が書かれた本をそっと閉じた。
「懐かしいな……」
俺がこんな痛々しい文章を書き、奇妙な行動をしていた頃から三年がたった。
ノートの裏面の端のほうには『九条一輝』と小さく書かれている。
もちろんこれは俺の名前だ。
俺は中学二年の頃『中二病』だった。
自分が選ばれし者とかいう設定で街中で魔物の痕跡とかを探していた。今となっては恥ずかしいよりも懐かしいと思ってしまう。
まぁ三年に上がって受験もあり、すぐに治まったのだが。
なぜ今そんな物を見ているのかというと、現在俺は高校二年の夏休みを絶賛満喫中なのである。そして、昼飯を食べてだらだらと漫画を読んでいるとふと「部屋の掃除でもするか~」と思い、掃除していたら過去の黒歴史ノートを発見した。というわけである。
しかし、このままでは掃除が一向に進まない気がする……。次を最後にしよう。
最後だからというわけで一番凄そうなのを見ることにした。そして出てきたのが……。
「こんなノート作ったか?」
黒歴史ノートが入っている箱の一番下にあった黒い革の少し分厚い本だ。
こんなに豪華に装飾しているのだから中身は凄いことが書いてあるに違いないと思い、勢いよく本を開いた。
「……真っ白じゃねえか」
その本は最初から最後まで真っ白だった。
つまんね。そう思って本を閉じようとしたときだった。
「なんか眠い……」
強烈な睡魔が襲ってきた。掃除のしすぎで眠くなったのだろう(実際は黒歴史ノートを見ていただけだが)。
ちょうど枕にいい感じの本が手元にあるし少し仮眠をとることにしよう。おやすみ~。
……なんか眩しいな。俺は寝起きの頭でそう思った。
しかもなんか床がガサガサして気持ち悪い。そう思い体を起こして周りを見渡すと……。
俺は見知らぬ草原のど真ん中にいた。
「は?」
私、九条一輝は異世界転送されたようです。
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