ヨコギル
高校卒業後、私は2年間日本をあちこち旅していた。
いろんなものを見たし、いろんなことを聞いた。
今日話すのはその時のお話。
私が19歳のときの話。
生まれ育った街を離れて、私は行くあてもなくふらふらとしていた。
元々目的もない旅だったから、時々知らない町の本屋さんに寄って、珍しい本を漁っては読み、見たこともない店のアルバイトをして生活費を稼いだりした。
そんなある日。
特に用事もなく、予定もない、そんな日があった。
私はその時の泊まっていた民宿の部屋で1人、買ってきた本を読んでいた。
民宿はカーテンがかかった窓がひとつに、卓袱台とエアコン、それに小さな冷蔵庫が置いてある。実家の私の部屋とそんなに変わらない作りが、落ち着かせてくれた。
ふと、カーテンに人影が差す。
窓の外を誰かが横切ったのだろう。
別に不思議な事じゃない。
また、窓の外を誰かが横切った。
まぁそんなこともあるだろう。
それからしばらくして、外からは誰の気配もしなくなった。
そして、思い出した。
実家の私の部屋は一階だけど
「ここ…二階、だ…」
恐る恐るカーテンを開けてみたけれど、外にはだれもいなかった。