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浮世噺  作者: 齋藤昨夜
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彼女と廃墟へ行った話

僕が体験した話だ。

訳あって僕は、高校時代に彼女と心霊スポットに行くことになった。

正直嫌だったよ。

僕はそういう、霊だの魂だのは信じていなかったからね。

だから、嫌だった。

初めてできた彼女との初めてのデートが廃墟だなんて、ムードも何もあったものじゃないだろう。

海辺でね、食べ物が美味しかったことだけが救いだね。

その廃墟は古びたホテルだった。

朽ちて、植物が纏わりついた気味の悪いホテル。

足がすくんだよ。

もしかしたら、信じてはいないけど、幽霊がでるんじゃないか。

そう思った。

だけど幸いに、ホテルは鍵が閉まっていた。

ああ、良かった。

行かなくても良いんだ、と思ったのもつかの間、彼女はドアノブを思い切り揺らし始めた。

ガタガタ、ガタガタと。

一心不乱に、鬼気迫る表情で。

ガタガタ、ガタガタ、ガタガタ。

カラン、と錆びたノブが壊れ扉が開くと、貼り付けたような笑顔でホテルに入っていった。

彼女は誰かと手を繋いでいた。

そんな風に見えたんだ。

変な話だけど、僕はその異様な光景をただ黙って見ていた。

あんまりにも彼女が楽しそうだったから。

まるで、デートでもしてるみたいに、彼女は楽しそうにその誰かとホテルを駆け回っていた。

一つ一つ、扉を開け、窓を開けて。

そのたびに「みーつけた!」とか「みつかっちゃった!」とか言ってた、気がする。

正直、あまり思い出したくない。

琴音、君があんまりしつこいから話したけれど、本来ならこんな話はしたくないんだよ。

え?彼女の名前?

なんだい、嫉妬してしまったのかい?

冗談さ。

そうだね、彼女の名前は――

これにて店仕舞いです。

ありがとうございました。

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