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浮世噺  作者: 齋藤昨夜
10/13

ミュンヒハウゼンの亡霊

幽霊って買い物するのかな。

やだな、そんな目で見ないでよ。

うーん。そうだなぁ。

ミュンヒハウゼン症候群って知ってる?

健康体なのに、病人であるかのように振る舞って、各地の病院を渡りあるくとかなんとか。あんまりこの手の話には詳しくないんだけど、昨日本を売りに来た人は自分が幽霊だと思い込んでいるみたいだった。


私は幽霊なのです。

驚かれていますね。

幽霊なのにこんな所に来るのは珍しいのでしょうか。

何分最近幽霊になったばかりなものでして。私にはよく分かりません。

ですが私は幽霊なのです。

証拠は、ありませんが。

でも私は確かに死にました。交通事故でした。猫を避けようとしたのです。

妻と娘が乗っていなかったのが幸いでした。

あの二人には幸せに生きてもらいたいですから。

あ、すいません。しんみりしてしまって。お構いなく。

ええと、そうですね。

確かに私が幽霊であると証明するのは、少し難しいですね。

うん。

でも、あなただって自分が生きていると証明できますか?

心臓の鼓動も。

その身から伸びる影も。

今ここにいるのだって、あなたがまだ生きていると錯覚しているせいかもしれない。

屁理屈を言いましたね。すみません。

ですが私は私が幽霊だという自覚しかないのです。



そう言って彼は、2冊の本を私に売って何処かへ去っていった。

私は彼を幽霊だと思えなかった。

だってあまりに生き生きとしていたんだもの。

多分誤魔化すために、そんな話を持ちかけてきたんだと思う。

何を誤魔化すためにって、そりゃ。

いや、それがね、その本っていうのが、その、うん。

奥さんと娘さんに知られたくなかったのかな。

今となってはどちらも分からないけれどね。

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