第二章 天使と悪魔の戦争に人界が巻き込まれているという伝説
「よぉ......おまえ、こんな所で何をしてやがる?」
俺の名はアルト。魔王さまに仕える者だ。
そして現在、魔王の城、魔王宮でかの大天使ウリエルと対峙している。
「ハッ、それはこちらのセリフだな、アルト」
「で、目的はなんなんだ」
「そんな事、おまえには関係ないだろう?」
いや、別になんでもいいんですけどね。
こいつが何をしでかそうと俺には関係ない。
「そういや、ウリエル、最近連絡なかったけど、どしたの?」
「あ、ああ。そう言えば、機種変してメアド変わっちゃったんだよ。言うの忘れてた」
ウリエルは懐からスマートフォンを取り出して、ええと、どうすればいいんだっけ?とか言ってる。
こいつ、この前までガラケーだったしな......、まあ無理もないか。
「しゃーねーな、ちょっと貸してみ」
俺はウリエルからスマホを取り上げ、手早くメアド交換を済ます。
困った時には協力してやる、これは魔王のお母様に言われている事だ。
「お、センキュー!やっと俺の電話帳にアドレスがっ!」
あー、こいつメールし合う相手いないのにスマホ買ったのか......。
まあ最近はSNSとかでいろんな人と話せる時代になったし、それはそれ程大きな問題はないんだろうけどな。
「で、ウリエル、結局何しに来たんだ?」
「ああ、一応おまえんトコにも報告しろって言われてな」
まったく、さっきの態度はどこに行った!
「確か魔王宮街のはずれにダンジョンがあったろ?」
「ああ、あれね」
ちなみに魔王宮街とは、その名の通り魔王宮を中心として展開されている街の事だ。別に魔王宮が支配している訳でもなんでもない。
そして魔王宮街の近くに大きなダンジョンがある。
そこで暇人共はレベルアップや素材稼ぎに勤しんでいる訳だ。
「で、そのダンジョンがどうかしたのか?」
「ああ、昨日ウチの攻略部隊が潜ったんだよな、最下層まで」
「へぇー、もう最下層到達してたのか」
まあ、ウチの攻略部隊は優秀だからね、とウリエルは言う。実際、天使軍の攻略部隊は結構強い。☆20の魔剣とかじゃんじゃん持ってやがる。
「で、報告したいのはそれだけか?」
「いや、問題はその後だ。なんかまだ奥があったみたいなんだ、あのダンジョン」
ふぅん、アレか、ラスボス倒したのにその何倍も強い裏ボスが出てきて瞬殺されるパターンか。
そりゃドンマイだな。
「で、ウチの攻略部隊がちょっとだけ進んでみたんだけどな、この先がなんとビックリ異世界だったんだとよ」
「異世界?」
「ああ、異世界」
マジかー、異世界ねぇ......。一体どんな所なんだろうか。ちょっと興味が湧いてきた。
「で、どんな所なんだ、その異世界ってのは」
「うーん、なんか聞いた話によると、すごいシリアスな雰囲気が出てて、魔法戦争とかやってるっぽいよ」
「シリアスねぇ......」
シリアス。それは大抵めんどくさい物だ。
だから俺はシリアスが嫌い。
あー、なんか急激に興味失せてきたー。
「で、そこで相談なんだが」
「あ?何?俺、魔王さまの不登校治さないといけないんだけど」
「......や、誰もおまえには頼んでねぇよ。ただ、魔王宮の方からも兵を出して貰えないかっていう相談だ」
「何?異世界征服でもすんの?」
「さ、さぁ......、弱そうならするんじゃないの?」
っと、忘れてた。早くおっさんの所に行かないといけなかったんだ。
「おー悪いなウリエル。そういう真面目な話は魔王母にしてくれー。あ、間違っても先代魔王にそんな話振るなよ?逆にこっちの世界が征服されちまう」
「......、えらく評価低いな先代魔王!」
「とーぜんだ」
俺はウリエルと別れた。
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