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ロワとカラス城の魔女  作者: thruu
研修生お断り
14/35

14.

 そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。


「お客さん。かなぁ」


 2階から魔女は降りて来ない。私はもうカラス城の魔女の助手なのだ。仕事をしなければ。意気揚々と私は扉を開ける。


「どちら様ですかー?」


 扉を開ければ、昨日までの雨や曇り空は消え去り、青空が広がっていた。朝日が差し込んで眩しい。


ーーああ、新しい1日が始まるんだ。


 そんな清々しい気持ちになる。けれど、扉を開けてもそこには誰もいなかった。


 今のノックはなんだったのだろう。足元に視線を下ろしていく、そこにはなんと黒猫がちょこんと座っていた。なんて可愛らしい。


 夢の黒猫との生活!そう思うのもつかの間だった。


「よ!落ちこぼれ!あの魔女を丸め込んだみたいだな。よくやった!俺様を誰様だと思っていやがる。今すぐメシをだせ!」


 どこかで聞いた失礼な男の人の声で黒猫はそう言うと、カラス城の中に勢いよく走って行く。


 止める間もなく、今度はカラスがギャーギャー言いながら、羽をばたつかせてカラス城に侵入し飛び回り始めた。


「あんた、誰のおかげで助かったと思ってんの?とっとと食べ物出しな!」


 これもまた、どこかで聞いたおばあさんの声でカラスは言う。


「心の……声?」


 目の前の出来事を受け止められず、心の中には夢描いた研修生活がどんどん変色しようとしていた。


可愛い(口の悪い)黒猫との生活(お婆さんカラス付き)。


 この騒々しさにうんざりとして扉を閉めようとすると、足元に封筒が落ちていた。


ーーロワ様。


そこには私の名前が書いてある。不思議に思いながらも何気なく封を開ける。


ーー請求書。

ーーテント代、もろもろ。


「ひっ……」


 生まれたばかりの太陽の光の中で、私の小さな悲鳴が鳥のさえずりにまぎれて響いたことは、私しか知らない。


 研修1日目。人生ってやっぱり思うようには行かないものだと痛感した。

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