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村人候補 ~仁~

慣れないベッドの上で大きく欠伸をすると、見知らぬ部屋、見知らぬ天井があることに気づいた。まぁ、どうせ何かに巻き込まれたのだろうと、考えついたために慌てないようにそっと立ち上がった。そういえば、昨日は夜遅くまでひたすらミステリーを探していて、見つかったサイトをクリックしてから寝落ちしたのだろうと考えつく。

「しっかしまぁこんな部屋にいきなり連れてこられるなんてなぁ………」

そう言ってからベッドから降りて着替えようと服を探した。

「あぁ、家にあった服が全部持ってこられてるんだなぁ…………。まぁ、ありがたいけど。勝手に見繕われてたらこんな風に人を騙せないしな………。」

そう言ってから部屋に置かれているクローゼットの中から簡単に服を選んだ。だが、使わないと思われる服はクローゼットから出しておいた。部屋はそれなりに広いので服の塊が出来てしまったがあまり邪魔にならないのが救いだ。しかし、クローゼットには自分の物ではない服が多くあったため、さっき言った様な仮定になったのである。

自分の両親と兄が交通事故で亡くなったのだが服とかはメンドクサくて処分しきっていないし、遺産や生命保険も自宅のローンの返済額と6年制大学に通っても問題ないほどの学費、高校の学費と備品代を差し引いた後に親戚内で話し合い分けられた。まぁ、その関係で伯父や従姉妹がクチグチグチグチと絡んできたので伯母に頼んで伯母の海外赴任にその二人を無理矢理連れて行って貰った。伯母は不倫の証拠をなぜか握ってしまっているのでありがたい駒だ。まぁ一回金髪のチャラ男と歩いているところを偶然見かけたので釜掛けてみたらペラペラ喋っただけなのだけど。

「でもこんな趣味で買ったようなブランド服やヘソクリ入りのジーパンまで持ってくるなんて運営の方は何考えて行動してるんだろうな……」

ちなみにヘソクリの金はとりあえず自分のポケットに入れた。端金だが正直あれば便利になることがあるかもしれないからだ。まぁ、伯父達は自分が留守だとしても貯金や家には手を出せないように手を打っているから平気だとは思うけども。

「まぁ、着る服はこれとこれにするか……………」

自分の着替えの中で動きやすい服に着替えてから時計を探す。すると、自分のパソコンがそこに置いてあった。それと、近くに自分の腕時計や愛用しているシャーペン等の筆記用具などの日用品が置いてあった。他にスマートフォンが置いてあったが電源が入らなかった。充電器はあるがコンセントが見つからないのでとりあえず充電は後回しにしようと思う。

「パソコンは使えそうだけど多分ネットは制限されてそうだな………」

起動してからしばらくして電源がついたと同時にパソコンがコンセントに繋がっているのを見てそれを辿るとコンセントがあったが、充電器のプラグは差しにくそうなのでやめた。

パソコンをしばらくしていると気付くことが数点あった。

「他のサイトは見られるけど書き込みやらは出来ないんだね…………」

どうせここに助けを呼ばせないためなんだろう。呼んだとしても警察は役に立たなそうだ。むしろ助けに来た警察すらここに閉じこめられそうだし。

「メールというか追加されてるファイルがあるんだね………まぁ、どうせゲームの説明とかなんだろうけどさ。それかこの部屋の注意事項か…………?」

どちらにしろ見ていた方が良さそうだ。ここから出ることが出来ない以上有力な情報は持っておいた方が有利だ。対策も取りやすくなるし…………。

『ここで開催されているのは人狼ゲームを色々とアレンジした物となっており、いくつものパターンが用意されています。参考までに基本的な人狼ゲームの基本ルールを閲覧しますか?』

まぁ、正直やったことはあるが、アレンジされる前がどうなっているかは確認しておいた方がいいだろうと閲覧するをクリックした。すると、ボーカロイドと思われるような音声で説明の内容が再生し始めた。


『基本的に人狼ゲームの世界観は人狼がいる村に閉じこめられた人々が探りあい人狼を全滅させる、または人間と人狼が同じ数になるまで続きます。』

ここまでは当たり前なのだが知っている。それに人狼ゲーム自身はかなり広まっており、人狼ゲームの漫画なども当たり前のように出回っているのだから、知っている。しかし、これをどうアレンジしているかは分からない。無茶苦茶複雑になっているのか簡単すぎて終わってしまうのが速くなっているのか………?

『まぁこのゲームでの教訓としては正直者は馬鹿を見るですね。しかし、正直な時も必要ですね!』

そして運営者の一人が宝くじが当たったことを正直に言ったところ見慣れない親戚が大量に増えたらしいです。その人の両親は孤児なのに………という画像が流れた。それは結局ここの運営費の肥やしにでもなったのだろうか?と疑問になったのだった。

『次に、役職を説明します。』

出回っていて知っているのは村人、人狼、狩人、占い師、霊術師、狼憑きだ。他の漫画に何かあったはずだが、あんまり思い出せない。

『村人は、基本的に朝の投票しかできない無力な役ですね。最も生き残るのが難しい役なので、なった人はかなり努力するでしょうね。』

村人にはあまりなりたくは無いな………特にコンピューター内で行われるゲームなら余計にだ。完全に人狼のCPUに狙われるのだ。かなり嫌だろう。話し合いすらできないのだから。しかしら今回はそういうわけではなさそうなので少なくとも生き残る確率は高くなりそうだ。

『次に人狼ゲームに最も必要な人狼です。人狼は夜に一回選んだ人物を襲い、殺すことができます。殺す側なので夜に襲われる恐怖は無いものの投票により死亡すると負けになってしまいます。正直言って一番勝率の高い役でしょう。』

人狼は殺されない代わりにバレてもいけないのだから余計に神経を研ぎ澄まさなければならないのだ。正直この役職なら普通に生き残れると思う。まぁ、そのために嘘を言い続けるだろうと思うけど。

『狩人は人狼から人間を守ることができます。しかし、自分が襲われた場合は普通に死亡します。他の役と組んで戦いましょう。』

狩人を味方に付ければかなり有利になる。正体を隠した人狼なら尚更だ。無駄なく他の人間を殺すことができる。しかし、それで自分が人狼だとバレるのは色々と嫌だろう。

『占い師は一日一回、誰が人間か人狼かを見ることができます。謎を解くためには占い師の存在が重要です。一番大切にされ、一番周りが嘘を付くのがこの役ですね。』

それもそうだろう。なんせ本当に占い師であるという証拠が無い時は人狼が嘘を言い惑わすことなど他愛もないだろう。

『次は霊術師ですね。この役はあまり目立ちませんが貴重な役です。惑わされる事が少ないですし、死人が何かを確認できるので推理もしやすいでしょう。』

対象が一つのため占い師とは違い、他の役がこの役と偽るのは難しいだろう。まぁ、一般的にはあまり重要視されない役だ………が、後になってからその重要さが分かるのだ。この後に開催されるアレンジによってはかなりのキーパーソンだ。

『最後に狼憑きですが、これは地域などによって解釈が一部違いますね………占いなどで白(人間)としてやられるか、それとも黒(人狼)とされるか……しかし、いずれにしても殺傷能力はありません。』

この役は別名狂人と呼ばれることもある。今回のアレンジにも入ってくるのだろうが、正直まともに勝てるとは思いにくい。


『一日の流れとしては、話し合いの後初日の朝を除いて投票による吊し、自由時間、夕食後に各部屋に戻り行動の決定、人狼による殺害………を繰り返します』

自由時間の間にどれだけの情報が集まるかが鍵となりそうだが、自分の情報をポンポン喋る奴はいないだろう。精々世間話ぐらいになると思う。

『投票で同数の場合はやり直しとなります。そして、誰が誰に投票したかは分かるようになっています。』

それは今回のゲームでも変わらないのかが心配になる。しかし、中々楽しそうじゃないか、これから始まるであろうゲームは。

『それでは、三時のおやつの時間にその部屋を出て、大広間へ出てください。なお、特殊な条件が無ければ他の参加者を部屋の中に入れることは禁止としています。そうしなければ人狼が選択していないのに死人が増えますから。』

……………前言撤回。

このゲーム……………最高に楽しくなりそうじゃないか。

『後、ポーカーフェイスができないならば変装する事も許しますよ。まぁ、サングラスやらニット帽でいかにも怪しそうに仕立てても村人だったりしますからねぇ。』

さて、お許しも貰ったことだし早速自分の姿を変えた。まぁ、髪型を変えてみただけだけども、これで誰も自分の奥底までを見抜くことは出来ないだろう。なんせ自分の本当の姿すら隠すのだからかなり嫌な相手になる雰囲気は出るだろうし。

「さ~てと、これからどうしようかなぁ。本当に楽しみだ。自分の不注意でクリックしたにしても、正直あの場所にはずっと留まってる訳にはいかなかったからね。」

そう言ってから自分の暗い暗い過去を改めて思い返してみる事にした。それは、自分があの交通事故の前からすでに歪んでいる事を思い返すことで、また狂ったように面白可笑しく笑えるのだから、三時までの暇つぶしにはなるだろう。

「ハハハ、やっぱりこーゆー刺激があれば面白いよね?だってまた人を殺せるんだもん。しかも、合理的に、自分にも死が近づいてくる事を感じながらまた繰り返せるんだからなぁ………………。」



自分が産まれたとき、これから過ごす家庭には両親と兄がすでにいた事が、自分の人生にとって最悪であり、それでも感謝を忘れられないほどに自分にとって最高の人物となっていた。

父は、エリートと呼ばれるような会社に勤める課長レベルのサラリーマンだった。なので普通なら裕福な家庭でまぁまぁ幸せな生活は送れると誰もが普通考えるだろうが、自分の家庭はそうではなかった。親戚がネチネチネチネチと金の無心に来ては父はそれの金を渡し、二度と来るな!!と怒鳴る物のまだ来たときにも金を渡している。それの積み重ねの他に専業主婦である母のブランド物の買いあさりと週に一回のペースで将来ミュージシャン希望の兄と一緒に行く旅行などに散財されれば嫌でも家計は傾き自分はかなり苦労することになる。そのために中学では無料で配られる教科書にひたすら書き込んでいくというノートを使わない方法で勉学に励んだ。そのために成績は良くても態度が悪いという理由で2を付けられては両親と兄に罵倒された。罵倒について泣きはしなかった。原因はアイツ等なのだから、自分がわざわざ泣かなくても良い。そう感じたのだが、中学卒業前に段々と腹がたってきた。当時は成績のみで内申の関係ない有名校に推薦で軽く受かった。なんでも視察に来た教員にその方法でということで賞賛されたからだ。その事を両親に話すと、両親は笑いながらこう言った。

「○○高の推薦合格者が水商売してたらかなり儲かるんじゃない?」


その日から、自分の両親は自分が思うよりも醜く見えるようになった。それもそうだろう、ただ子供を金稼ぎの一つとしか見ていない。○○高は水商売などの不祥事ももみ消すほどの力もある。そのため両親は安いバイトよりも一攫千金の水商売でもやらせようとしたのだろう。その姿を見ていると段々と吐き気がして、やる気も無くなり、引きこもる事も多くなった。引きこもっている時の両親の罵声は酷く五月蠅かった。同じ様な境遇の兄には何も言わないくせに


丁度その頃、高校を中退していた兄と久しぶりに有休を取った父が旅行に行くという事を言っていた。その時に自分は「大事な用があるから付いていかない」と、そう言った時に両親は水商売の店の面接に行くのだろうとかと思っていたのだろう。しかしまぁ、勘違いも良いところだ。

…………………大事な用とは、この三人を殺すことだったのだから。


ただ、三人は交通事故で死んだ。自分がやったのは、ブレーキオイルを少し抜いておいたぐらいだが、三人の運が無かったのか、事故を起こしたときの態度がよほど酷く周りが関わりたくないと逃げたのかは知らないが、街中でトラックとぶつかり車は大破したらしい。まぁ、その後のことは自分がさっき言ったように遺品も面倒で処分せずにいることだ。

そして、それからしばらくして安心できる生活に、自分は退屈していた。そんなときに思いついたのが、もう一回人を殺すことだったのだ。しかし、殺す対象は何にしようかと考えていると、どうせなら余計に金の無心でうっとおしくなった伯父(不倫している妻のいるのとは別の伯父)の心に傷が付くような事をしようと考えた。

その結果、自分は誘拐殺人を行った。死なせたのはその伯父の娘と仲の良い小学生達だった。当然簡単に誘拐はでき、そのまま殺すのも容易かった。まぁ、自分が歪んでしまっているのはどう考えたって分かるんだけど、それを自分で自覚してる自分が怖くないことは異常だと感じてしまう…………………けれど、自分は人を殺す事に快感を覚えていたんだ。

そして、誘拐した子供は自分の家で次々に殺して、脱水し、肉片を軒先に捨ててカラスに喰わせることがかなり続いた。

風呂場と台所は死体の臭いが染み着いていたが、自分の部屋で死体の処理の間に暇つぶしのための物を探しているときにこれを見つけたのは幸いだった。


「さてと、どうなろうとも殺意は見せずに冷静に………直接殺す訳じゃないから少し残念だなぁ…………。」

俺はそう言って、またベッドにボスンと寝転がった。

「運営はどんなアレンジをするのかなぁ?」

ただ自分の死を恐れる気が無いことに、ため息をつきながらニコリと笑う自分はとても頼もしく感じた。





これからしばらくは参加者達の環境または心境です。

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