友達にもらった大切なお守り
「おまえ、いつもそれ持っているよな」
これは二年前、外国に行ってしまった友達からもらった必勝のお守りだ。
その年はオレもあいつも受験だった。
『一緒に同じ学校受かろうな!』
そう言ってあいつは、オレに合わせてレベルの高い学校を目指していた。
今思えば、あれはだいぶ無茶だったと思う。あいつ、授業態度が良くて成績は悪くない方だったけど、テストでは点が取れなくて、いつも先生に難癖つけてたから。
七月になって、夏休みが始まって、残り日数あと二週間ぐらいだった時、いきなり
『お前の家、今すぐ行っていいか? 勉強教えてほしいんだ』
と電話かけてきたときは少し驚いた。それまでずっと会っていなかったから。
あいつの家はオレの家から少し遠めで、自転車でも十五分ぐらいはかかる距離だった。
なのにあいつは、電話の後、五分ぐらいでついて、オレの母さんがすごく驚いていたのを覚えている。
『こっちに向かっている途中で電話したんだよ』
その後は、勉強を教えて、問題解いての繰り返しで時間は過ぎていった。
もう時間が遅くなって、さすがにそろそろ帰らなければいけない時間になった。
あいつが勉強道具をしまっているのをぼんやりと見ていたら、いきなりお守りをつきだして
『これ、やるよ。だから、絶対受かれよ、高校』
と言った。あの時は思わず受け取ってしまったが、今更よく考えると、あの台詞はおかしかった。オレは受からないけど、せめてお前だけでも受かれよ。そうともとれた。
あいつは、お守りを渡したあと、何も言わずに帰ってしまった。お守りについての説明もせずに。
夏休みが終わって、学校が始まってすべて分かった。
『残念だが、海外への引越でね』
それを聞いて、なぜあいつがお守りを渡してきたか、すぐに分かった。自分は受けられないからだ。
その時はひどく落ち込んだなあ。なんで言ってくれなかったんだろうって。
今ではその理由もなんとなく分かったけど。
その後オレは頑張った。おかげで行きたかった高校にも受かって、今は青春をエンジョイしている。
「なあ、それ、なんなんだ? お守りだよな。そんなに大切な物なのか?」
「え? なに、そんなに知りたいのか? そこまで追求されると逆に言いたくなくなるんだよなあ」
「いいじゃねえか、教えろよ」
「えー……」
オレは今日もこのお守りで一日を勝利の日にしようと思う。
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