1 作戦終了は作戦開始の合図
「そういえば、あんたって魔法が使えたよね」
「ん? そうだったな」
オレンジ色のポニーテールを揺らしながら話しかけてくるカノン。
今は、荒れ果てた市街地の駐屯地で休息を取っていた。別のクランが警備をしてくれているおかげで、ミノマサたちのクラン『月下の灯』は、ゆったりと過ごしていた。
「そんな設定も忘れてる?」
「最近、銃しか撃ってないからな」
そう言いながら、ホルスターに収めてあるグラッチを指さす。
「それもそうね」
カノンは珍しく笑う。珍しいというのは、この何とも言えない優しい笑みだった。
「魔法がどうかしたか?」
「あなたって、あっちの世界だと何してたの?」
「あっちだとな、俺はサポート付加要因の剣士だったな。自分を強化したり、他人を強化したりしながら、パーティー組んで、第一巻き込まれた日も、仲間から呼ばれてたんだ」
もうログアウトできなくなって、かなりの日数が経過していた。いままでの出来事が一瞬のように駆け抜ける。
「それじゃあ、水とか火とか、光とか出せないの?」
「それぐらいの低レベルでいいなら簡単にだせるぞ」
そう言いながら、水をちょろちょろと出して見せた。
「ちなみに、飲むことも可能だ」
水をそのまま口に含む。以前もRPGをしていたときに試したことがあり、意外においしかったのだ。実際、VRでの飲食は必要ない。
「そう、これからは、マサが魔法を使えることを前提にしないと」
カノンは顎に手を置きながら思考しだす。
「次の任務が決まったか?」
「えぇ、次はエアボーンよ」
「ま、また、あの高高度降下低高度開傘ってやつか!?」
あの忌々しい記憶がよみがえる。なんど地面にぶつかったことか。
「違う。今回は普通のエアボーンよ。前回より、かなり楽よ」
そう笑いながら言うカノンに安心したミノマサだった。
ただし、後日それが嘘だとわかるが、今のところは知らないミノマサ。
翌日、10時ごろ、『月下の灯』に招集がかかる。
集まった先には、多数のクランが集まっていた。そのうち、ほとんどが20代から10代である。ちらほら、30代40代が混じる。比率的に言えば男性のほうが多い。
そんな集団の中、40代ぐらいの軍服を着た男が前にでた。
「今回集まって、皆には、これからエアボーンをしてもらう。場所は秩父だ」
そうして、MCDから地図の画像が送られてきた。それを全員が見る。
「先ほど、入間を奪取することに成功した。そこから輸送機で山を縫い秩父市街に降下してもらう。目的は秩父のどこかにある敵基地の強襲だ」
そこで、聞いていた人が手を上げる。
「質問よろしいでしょうか?」
「みとめる」
「どこかにあるということは、敵の基地は不明なのですか?」
「その通りだ。現在、空から探してはいるが見つからない。おそらく地下か、それとも山のすそ野にあると思われる。そのために、市街地で戦闘を行い。敵を巣穴からおびき出す」
作戦は至って簡単だった。エアボーンで迅速に市街地を占拠。
その後、敵基地のあぶりだしだった。
「作戦日時は明朝。それまでに、入間基地に行ってくれ。クランごとの降下ポイントはMCDに送っておく。以上だ。解散」
この号令を合図に、各面々が離れだす。
もちろん『月下の灯』のメンバーも固まって動き出した。
「今回は楽ね。エアボーンで占拠だなんて」
黒髪を淫らに揺られながらアネヤは、つまらなさそうな顔をする。
「それにしても、人使いが荒いです。もうちょっと休ませてくれてもいいのに」
シマリが愚痴を垂れていた。
「まぁまぁ、それだけ戦力にゆとりがないのよ。それに、今回はエアボーンよ、派手にいかないと!」
カノンが盛り上げながら、全員は一路入間基地へと移動した。
入間基地に入る。
「広いな」
ジープに乗っていたミノマサは驚いた。
「そりゃ、大きな飛行場ですから~。当然」
「でも、そんなに人がいないから、今回のエアボーンは小規模なのかな」
相変わらず仲が良いカエデとシモハルはジープから顔を出す。
「おぉ、オスプレイだー。珍しい」
「お酢プレイ?」
「マサ変態!」
シモハルは顔を真っ赤にしながら頭をたたいた。
「いたいわ!」
「言ったほうが悪い!」
「ハルが赤くなってるー」
「カエデ!」
結局オスプレイの説明をすることなく、ジープは格納庫の前にたどり着いた。
「それで、オスプレイってなんなんだー!」
ミノマサが叫んでしまったのを、運がよく? 聞いていたカノンが丁寧に説明した。それで約10分間話していた。
ミノマサが理解したことは、ヘリと飛行機の中間ということだけわかった。
「カノン」
その声につられて視線をずらすと、そこには
「シグレ! 久しぶり」
黒髪ショートの可愛らしい容姿のシグレがいた。
「あなたもこの作戦に?」
「そういうシグレも?」
「私たちはヘリの強襲で、少し間を空けて参加するわ」
「また一緒に戦えるんだ!」
「でも、前のようなことはもうこりごりよ」
シグレはそういいながら、ミノマサのことを睨んだ。
「なんだ、俺は厄病神かよ」
「間違えない」
「違った?」
カノンとシグレの容赦ない一言で、精神的に倒れ伏せたミノマサだった。
こうして、作戦は始まった。
秩父に対するエアボーン。最初は、皆楽な戦闘だと思い込んでいた。
これが、まさか蜂の巣を突っついたことなど、誰も知らなかった。
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