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12 信頼と星空

  ☆

~月下の灯~


「行きましょうか」

「いいわよ出して」

 カノンがMK48 Mod0をハイボットで固定してうつぶせになる。

「ちょっとまったー」

 カエデが目の前のガラスを銃で割る。

「これで、ガラスの破片は跳んでこない」

 ガラスを割ることで銃弾で割れた際こちらに飛ばないようにした。

「いいよ。いこう」

 カエデはSR-25からシマリのHK-416に持ち替える。連射性を優先した結果。

 シマリがアクセルをふかして前進。

 トラックは動き出す。夜も深まり漆黒の闇。雑木林が風に揺られて、外灯がまずかに照らしている。

 トラックはライトを付けずに進んでいた。

 弾薬庫では大炎上しており、底の部分だけ漆黒から抜け出した赤。轟音と共に爆発が小規模で続く。まだ弾薬が残っていてそれが爆発しているのだろう。

「目の前にたぶん、3人です」

 シマリが目を細めて隣のカエデに伝えた。

 それをカエデは「はいよ」と頷くと同時にHK416の照準で狙いを絞る。

「アクセル全開でよろしく。シマリ!」

「了解です」

 さらに速度を上げていく。音で気付いたのか不審に思い近づいてきたところで、発砲。

 当てるつもりなんてないので撃つだけ。それにビビり後ろに下がる。

 それを荷台にいたカノンが重機関銃で狙う。敵を倒したかどうかわからないが追ってはこなかった。

「さぁ、どんどんいこう!」

「行きましょう」


 やがて、合流ポイントに到着した。

 月下の灯専用の無線で連絡する。

「こちら、ナイト3 トラックでタクシーに来ました。高いよ~」

 これを合図に銃を持ちつつ6人が出てきた。



 右の雑木林からはキリと雅一、シモハルの3人が。

「これで全員集合ね」

「まったくつかれたぜー。柄にもないことするもんじゃないな」

「なによー。あんなことしておいて」

「うん」

 雅一の肩に手を回しながらシモハルが出てきて、


 キリは雅一の右手の袖部分を握っていた。

「あれはだな。勝手に体が動いただけだ」

「なによー。キリのためにとか言ってたくせに~」

「ばっ、バカなこと言うんじゃない」

「…………」

 2人の会話の横でキリは頬を赤く染めているのだった。



 左の雑木林からはアヤネ、ヒメ、シノミの3人が出てきた。

「つきましたわ。美夏ちゃん」

「走るところ……」

「きゃ」

 ヒメが盛大にこけた。それも思いっきり。

「いわんこっちゃない」

 シノミは手を頭に当てて盛大にため息をついた。

「盛り上がってることでなによりよ」

 アカネは懐かしそうなそんな視線で2人の事を見つめた。



「さて、みんな揃ったところで逃げるわよ」

 カノンが荷台から降りてきた。

「これ全員乗れるの?」

 真っ先に全員分の疑問をシモハルが代弁した。

「たぶん、大丈夫よ。たぶん」

 苦笑い気味でカノンは何回も頷いた。

 それの様子につられてか、みんなが苦笑いをしてしまう。

「はやく、のりませんか?」

 ヒメの提案で、全員がトラックに乗り込む。


 前には4人乗り込む。本当は3人までなのだがそんなことは言える状況でもないし、なんていったってVRMMO内なのだ。

 前にシマリ、ヒメ、雅一、キリが問う順番で座る。

 後ろにはカノン、シノミ、アヤネ、カエデ、シモハルがそれぞれ振り落とされないようにした後に銃を構えた。

「行こう!」

 カノンの掛け声で、定員オーバーのトラックは動き出す。最初は遅めだがスピードに乗るとわりかしスムーズに動き始めた。



 前側の乗り心地はある意味最悪だった。運転しやすくするためにシマリのところに空きを作るために詰めた。

 それが決めてだ。

 ヒメが右側にいてキリが左側にいて、その真ん中の雅一は2人のぬくもり感じてしまう。

(これは)

 ヒメもキリも気にはしていない様子だ。


「キリ大丈夫か?」

 きつくないか雅一がキリに聞くと。

「大丈夫。引っ付いても邪魔に思わない」

 そういってさらに雅一にくっついてきた。左半分にすべてにくっ付いてきた。

「いやあのな」

 雅一は、キリから色っぽい匂いがしてきた。これが女の子の匂い。というより、どこまでリアルに再現してあるんだよ! 今頃このVRMMOFPSのいろいろな技術の高さを呪った。

「ダメ?」

 キリが蒼色の瞳で雅一に向かって視線を覗き込んだ。

(これは!)

 こんなことをされたら、頷かずざるおえないのが男の宿命。

「いや、気にするな」


「寒いですわ」

 そういってヒメもくっ付いてきた。

「お、おい」

「暖かいですわ。ね。マサさん?」

 ヒメのエメラルドグリーンの瞳で覗きこまれて、

「そうだな。暖かいよ。もういろいろとあったまるぐらい暖かいよ!」

 雅一は諦めた。

 2人に何を言っても無駄だろうと。



「検問があります。あそこを抜けないと」

 シマリの声で、キリがHK416を構える。雅一も同じようにした。

「ヒメはとりあえず頭を下げろ」

 雅一はヒメの頭を手で下げさせた。

「痛いですわ。強引にやらなくてもきちんとできます」

「あぁ、すまん」

 雅一とキリはHK416を構える。

 検問に近づいた時に、2人してとにかく弾丸を撃ち込む。

 銃弾を撃った後に出てくる空薬莢に注意しながら、とにかく狙うより威嚇をするために。



 後ろは、カノンが機関銃、シモハルとカエデが狙撃銃、アヤネとシノミがアサルトライフルを持って撃ちまくる。

 カノンはひたすら銃弾をバラマキ。

 シモハルとカエデは引火して爆発しそうなものを狙って。

 アヤネとシノミは撃たせないように威嚇する。


 見事に突破に成功した。


「それでは最後に」

 カノンが赤色のボタンがついたスイッチを押すと、轟音と共に大爆発が起きて、後ろが真っ赤に燃えた。

 これでミサイルをつぶせたので、あとは空から攻撃すれば事が終わる。



 帰りは敵の襲撃もなく静かだった。



 リアルに再現された星空がきれいに見えるだけ。

 満点の星空に歓迎されて帰路に立つ。


 キリは雅一の肩に頭を乗せて、心地よさそうに寝ていた。


 完全に安心して寝ている。




 その横顔を見て雅一はホッと落ち着いて、なぜかいろいろと疲れたのだった。



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