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10 バクハツとトモダチ


 ☆

~雅一、シモハル~

雑木林にいた雅一とシモハルは不自然なことに気付く。

「おかしくないか?」

「そうね。なんか倉庫の中に敵が入って行ってる」

「もしかして、キリが!?」

 焦ってしまう雅一。

「落ち着きなさい。でも、その可能性は大ね」

 落ち着きなさいと言ってはいるが、シモハルもまた心配だった。

「どうするんだよ」

「どうしようったって」

 倉庫の中に突入するのはリスクが高すぎて無理だし……いろいろな考えが頭を駆け巡るが、妙案が浮かばなかった。

「…………」

 雅一は拳を握りしめてただ倉庫を見つめる事しかできないのかと悔しがっていた。



 ☆

~キリ~


――足音が地震のように振動している。


 それが現実なのか、意識朦朧としてそうなのかはよくわからない。

 とにかく足音が頭の中に響く。

 左肩と右足の血はいつのまにか止まっていた。

 しかし、神経系統の感覚に異常をきたしてしまっている。


「…………」

 横にあるC4に目が行く。

 自分が最後に出来る事はこれぐらいかな。

 そう思い、C4をお腹において抱える。

 左手には起爆用のスイッチを持つ。肩をやられただけなので持つって赤色のボタンを押すことぐらいは出来た。

 右手にはUSP TACTICALを構える。


 足音が近づいて来て、

 やがて数人の姿が見える。

 目がもうろうとして、姿かたちは見えないが敵と言うことだけはわかる。

 USP TACTICALの引き金を引いた。

 何人かは倒れて、後ろから来ていた誰かは木箱が立ち並んだ場所に隠れた。

 その後も何人かが来て、

 USP TACTICALを撃った。


 やがて…………

 引き金を引いても弾が出なくなる。

「……弾切れ」

 弾倉を探そうとしても今からでは遅い。

 焦点が合わない目には何も映らなかった。

 

 相手がこちらの弾切れに気付いたのかおそるおそるこっちに来た。


 半円状に囲まれる。

 すべての敵には銃らしき形のものをこちらに向けてきた。


 右手からUSP TACTICALを落として、起爆用のスイッチに持ち替える。


 持つ側が黒色にひかる、鉛筆を2,3本を集めたぐらいの大きさしかないのだが赤いボタンを押せば倉庫は吹き飛ぶ。


「意外……」

 以外にもNPCが足を止めた。感情も学習能力も何もない連中かと思いきや、足を止めて撃つのをためらった。

 爆発すれば自分たちの命もないし、被害も大きくなることを知っているのだろう。

 それにしても、NPCは賢いと思ってしまった。

「……ハァハァ」

 息が荒い。傷もふさがって、残るは神経痛だけにもかかわらずだ。

 よくある思い込みや、極度な緊張感からくる息切れ。それがキリを襲っていた。

 肺から酸素が無くなりつつある。

 脳みそまで酸素が回りきらない。


「……もう」

 意識が朦朧もうろうとして、ボタンを押そうとする。


 それに気付いて、敵は銃をこちらに向ける。


 赤いボタンに指が触れる。


――走馬灯

 いろいろな思いだ出が蘇る。

 そういっても、ほとんど月下の灯のメンバーだった。



 それから、やがて雅一が加わり


 ヒメとシノミが加わった。






「……さようなら」






 神経が指まで行きわたりかけた時


「なにがさようならだ! まったく」


 長い外灯で銀色に輝く両刃剣を持った人――雅一の姿だった。

「またせたな」

 にっこりと笑いかけられた。






 ☆

~雅一~


「あぁー、もうスキル疾風」

 久々にスキルを使用して、敵の中心部へと突っ込んだ。

 HK416で射撃して道を開けて中へと入る。

 目の前にいた敵をHK416の銃身ごと垂直に突き刺す。

 もちろん、HK416は使い物にならなくなってしまい、両刃剣に持ちかえる。

「間に合え」

 目に入ったのは、座り込んだキリに半円状に囲んだ敵の姿だった。

 キリはなにやら――スイッチを持っていた。

「本当に間に合え」

 滑り込みで一回も足を止めずに敵に向かって突っ込んだ。

 後先考えずに、

「……さようなら」

 その言葉が聞こえる。

 胸に何やらこみあげてくるものがあった。

「なにがさようならだ! まったく」

 一番近くにいた敵を斬る。一切の容赦なしに。

 2人目と3人目を永遠の眠りにつかせた後に、

「またせたな」

 キリに笑いかけた。



 ☆

~キリと雅一~

雅一は敵が銃身をこっちに向けて発砲。

 屈みながらスライディング

 敵をこけさせて、両刃剣の先っちょからぐさり。


 すぐさま、USP TACTICALを持ち1人、2人と撃つ。

 命中率は15パーセントと悪く。すぐに弾切れになったので、ホルダーに収めていたもうひとつの愛銃を取り出す。

「最後!」

 MP-433グラッチ、最初の愛銃で雅一は親しみから捨てずに作戦に持ってきていた。


「キリ大丈夫か!?」

 見た目では左肩と右足には鮮血の赤く染まっていた。

「……うん、ふさがった」

 片目を閉じて痛さをごまかしつつ立ち上がる。

「おっと」

 ふらっと倒れかけて、雅一は受け止めた。

 キリの頭がすっぽりと収まる。

 いつもは大きく見えたキリの姿も、今回ばかしは小さく見えた。

 足音が聞こえる。入口から入ってきたのだろう。

「……なんで……きたの?」

 キリはいまだに雅一の胸に顔を埋めながら訪ねた。

「それは、見捨てられないから。キリも仲間だろ。俺の友達だろ?」

「……トモダチ」

 キリの声の際に発する振動がこそばゆい。

「それに、そのごめんな。キリのことを何も知らずにあんなことを言って」

 前回、ひどいこと言ってしまったことを謝る。

「……」

「だからだ。俺はキリの友達になって、もっとキリについて知りたいんだよ」

「……うん」

 ボソリとつぶやく。

「いいよ……わたしもマサの事がもっとしりたい」

「なら、仲直りでこれから友達な」

「うん、友達」

 キリが雅一の方に顔を見せて……

 笑った。

 雅一はキリと出会って初めて笑顔を見た。

 きれいであどけなさを残していて、いつものキリとは打って変わって可愛かった。


「……どうするの? マサ」

 足音からすぐ近くまでいるのは間違えない。

 倉庫の入り口を正面突破は無謀なこと。

「私のせいで……」

 キリはまた落ち込んだ顔を見せる。

「あぁー、キリに言っておくことがある。よく聞いておけ」

 こんな状況なのだが、こんな状況にしか言えない時もある。



「死を軽蔑するのは勇気の行為かも知れない。でもな、生きることが死ぬことよりもいっそう困難な時は、あえて生きる事を選ぶのが、真の勇気なんだ」



「……」

 キリは素直に息をのんでしまった。

 雅一はそれだけ言うと考える。

 爆発で吹っ飛ばされると確実に死ぬし……

「そうだ、爆風だ」

「……?」

 キリは首を傾げる。

「爆発させて、その爆風で倉庫の壁をぶち破るぞ」

「……できるの?」

「まかせておけ、すべての力を出し切ってやる」

 衝撃の際につかったMPはこの時間で結構回復しているような気がした。

 RPGでは時間で回復しなかったはずだけれど、こっちのFPSの世界に来てからは時間で回復するような感じがする。

 あくまで自分感覚の直観なのだが、信じるほかすべはない。


 倉庫の一番端にC4を設置。

「準備はいいな?」

「……うん、私はあなたを信じる」

 雅一におんぶされているキリはより一層力をいれてしがみ付いた。



 敵が近く来た。

 銃を構える。

 引き金に指を重ねた。


「いっくぜーーーーーー」

 両刃剣を自分と垂直に持ち、キリが起爆用のスイッチを持っている。

「3」

 キリがカウントをする。

「2」

「「1」」

 雅一も共に言う。

「「0」」

 キリがスイッチを押すと同時に、雅一は付加魔法を多重にかけ、一日一回の特殊スキル神風を発動。

 いつもの8倍速になり、爆風との競争。

「うらぁーーーー」

「……っ」

 爆風の衝撃に乗って体が浮く。

 後ろを風で防御して、目指すは倉庫の上部の窓!!



「とどけーーーーーー」

キリは目を閉じる。



 パリーーーン

 窓が割れた音。

 そして、

 倉庫が爆発する轟音が耳を突き抜けた。



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