4 降下訓練とハロー神様
☆
~月下の灯~
「埼玉制圧作戦の決行が明日で、私たちは最重要極秘任務を任されたわ」
カノンが大きなディスプレイの前で口を開けた。月下の灯のメンバーはアヤネ以外そろっている。カノンから急に呼ばれたのだった。
「埼玉制圧作戦!?」
雅一が最初におどろいて声をあげた。他は静かに聞いているだけで落ち着いている。
「なんでも、埼玉の各所に陣地が作られて、今後の作戦に支障をきたすから攻略するみたい」
「味方とか、別のプレイヤーいる軍じゃないのか?」
「そうみたい、いまもうひとつにも暗号通信を送った結果、何も軍事行動を起こしてないの」
「私たちの任務は? 最重要極秘任務なんでしょ?」
「最重要任務なんて、また大変な任務を」
シモハルとカエデが面倒くさそうな顔をしているのだが嬉しそうな顔をしている。
「私たちの任務は春日部にできたミサイル陣地の爆破。そして、HALOを使っての潜入任務」
HALOとは高高度降下低高度開傘のことで、その名の通り、高高度からジャンプして、低高度でパラシュートを開くこと。特殊部隊などが潜入任務の際に使う場合がおおい。これをしようなら、相当な訓練が必要となってくる。
「HALOを使うのね。久々に腕がなる」
「HALOの任務って少ないのよね」
「潜入任務ですか」
「…………潜入」
3人は喜んだ顔をしている。キリも潜入任務と聞いて声がものすごく少しだけ喜んでいるようだ。今だに雅一はキリと話すことが出来ていない。
「美夏ちゃん、楽しみですわね」
「ヒメは留守番でしょ」
「いやですわ。私だけ仲間外れなんて」
シノミとヒメが言い争いを始めた。
「まだ危ないって」
「私も連れてってください。カノンさん」
ヒメはカノンに向かって言う。頭を手で触りながらカノンは迷っていた。
「うぅ~ん、どうしようかな。シノミ、あなたがヒメのことを任せられるなら、連れて行ってもいいと思うんだけど」
「ほんとうですか? 美夏ちゃんお願い」
ヒメはシノミ(美夏)の手を握りながらお願いをした。シノミが迷っているとだんだんとヒメの目がうるうるとなってきて、目のダムが決壊する前に、
「わかった。ヒメの重りは私がするから、わかったわよ。HALOも私と一緒に来なさい」
「ありがとう美夏ちゃん!」
「だから、名前で呼ばないでってば」
ヒメはシノミに抱き着いて喜んでいた。
「これでヒメは解決で、マサあなたにはこれからHALOの訓練をしてもらうわよ」
「訓練?」
「そう、高度9000からのダイビングの訓練、なんか何回死んでもいい練習エリアがあるみたいなの。まったく、このゲームの主催者は随分やさしいみたいね。だから、あなたにはこれから作戦集合時間までの12時間で、空挺免許を取ってもらうわよ」
「ちょっと待て、そんなに簡単に空挺免許がとれるのか?」
「現実なら、3年は見ないとだめだけど。大丈夫VRならでは何回死んでもOKだから、実戦さながらの練習をして経験を積まないと」
「俺だけ?」
「もちろん、ヒメはシノミが連れってくれるみたいだし」
「ということだから、各自準備と言ってもすることがないから、リラックスしていて、私とマサはHALOの練習に行ってくるから」
「拒否権なし!?」
「はいはい、行くわよ」
ミノマサはカノンに引きずられて練習エリアへと行く。ここで疑似体験と言ってもリアルとまったく同じ体験ができる。
「はいそれじゃあ、装備の説明から、まずは防寒服と酸素ボンベ。この2つは高度9000からダイビングするから必要なもの、まずはこれを着て、えーと設定は、時間帯が夜で、乗る輸送機がC-17で高度9000っと、設定終了」
「いきなり!? 説明なし?」
「説明は私がパラシュートを開いたらあなたもパラシュートを開きなさい。だいたい高度300ぐらいでパラシュートを開いて目的地に着地するって感じね」
「ちょっとまて、高度8000ぐらいの間は?」
「そのまま、落ちてく」
景色は夜光灯が付いている輸送機の中へと場面が変わって行く。
「さぁ、いくわよ」
カノンが準備万端で雅一の事を待っている。
後ろの開閉口が開いた。下には街の夜景なんてしゃれたものは全く見えず、ただあるのは暗い中月光で照らされた雲だけだった。
「え、ちょ、ちょっと待て、高すぎじゃないか」
「これぐらいよ、さぁはやく」
急かされて雅一はカノンの横にへっぴり腰で立っている
「さぁ、ほら行って」
カノンがすこし距離を取って開閉口から雅一を足蹴り。そのままバランスを崩して、開閉口から放り投げられる。
「えっ、えっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
雅一の絶叫が響き渡る。暗闇の夜空に浮かぶひとつの点。
カノンも続いてダイブした。そこで、そういえば私が先に行かないとパラシュートの開けるタイミングがわからないことに気付いた時には時すでに遅く。空の上ではどうしようもできない。なので、無線を使うと、
「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーー」
耳元で絶叫が聞こえて耳が痛くなってしまう。
「マサ! うるさい!! それにうるさいと、そのまま叩き落とすわよ」
「い、いや、むり、むりむりむり。むりだってーーーーーーーーー。こんなの、きいて、なーーいーーー」
「これは、このまま地面と激突パターンね」
カノンは何百回もやっていうので慣れた物。しかしカノンでも最初は地面と激突してよく死んでいたものだ。誰もが通る経験で死ぬ感覚がとても気持ち悪いので誰もが必死になる。
案の定、雅一の記念すべき初ダイブは地面とのお熱いキスによる死亡。
「もう、無理。なんだあの感覚、リアルすぎるだろ! 衝撃がもろきたぞ」
「だから言ったでしょ、さぁ時間がないから。もう1度、この練習エリア、わざわざ高度9000まで上がる必要がないから便利ね」
「いーーーーやーーーーーだーーーーーーー」
雅一はその後、
地面とのキスを数十回。
木と激突して数十回。
パラシュートを開くのが速すぎて、迷子になること数十回。
「どうだーーー!!」
ようやく慣れてきた、こんなことを繰り返してようやく慣れてきた。時間もすでに10時間以上を過ぎていた。
「ようやく、ここまで来たわね。しっかし、マサって案外M?」
「ちがうわ!!」
ある意味鍛えられた雅一がいた。
「HALOにはね。激突すると絶対に死ぬから、『ハロー神様』って言われてるのよ」
「俺は、何度も神様にあってるぞ」
「成功率を100%にするわよ。いくわよ」
HALOで使うパラシュートは空挺部隊が使うパラシュートとは違う。丸の形ではなく、長方形の操作性のいいパラシュートとなっている。その操縦も雅一は大分慣れてきた。
「もう、こわいものはない!!」
さらに練習する事こと数回。
「あとは、着地が不安だけど、時間がないわね」
着地する際バランスよく倒れないと、転んでしまう。転ぶと肩とかを脱臼しかねないので注意が必要。
「はぁーーー、やっと終わった」
「雅一、ブリーフィングを開くわよ」
「休ませてくれよ~~」
雅一は体力気力その他もろもろなかった。
「それなら、アイテムで体力回復剤とかあったと思うから、それで直して」
「それ、大丈夫なのかよ」
「大丈夫。たぶん」
「おい!」
こうして雅一はHALOをものにして、体力回復剤と言う怪しいのを使って完璧に状態で作戦に臨むことになった。
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