10 戦闘開始 銃の点検はお忘れなく
トリック1 カノン
2 サキ
3 シノミ
4 シマリ
スター 1 シグレ
2 雅一
3 カエデ
4 シモハル
☆
~トリック~
駅のホームの椅子にカノンとシマリが座っている。転倒している電車の中にはサキとシノミが息をひそめていた。
「銃弾を装填して……」
カノンがMK48 Mod0とXM8の軽い点検をする。ゲーム内なのだが、故障したり弾づまり――JAMが起きることが多々あったりする。そのために重点的な確認することが必要。
「まだ、1週間もたってないんですね」
隣でシマリがAUG A3を確認しながらしみじみとした顔で話しかけた。
「とっても長く感じるわ」
クランメンバーと合流して、ゲットーに行き、そして館山まで向かう。あっという間に過ぎて言ったような気がした。
「救援が来るまで持ちこたえましょう!」
「はい!」
カノンとシマリは走り出す。
サキは電車の椅子に座っていた。シノミは地べたに座りっている。2人とも銃の点検中だった。
「今の状況どう思う?」
サキが口を開けて話しかけた。それに少し反応して、
「わからない」
素っ気なく返事をした。
「このまま持ちこたえる事が出来ると思う?」
「さぁ~。今頃心配しても無駄でしょ、なるようになる」
「あなたって、むかし有名じゃなかった?」
この質問に対して体がピクリと反応した。
「なんのこと?」
「まぁ、いいや」
サキは適当にはぐらかして話を切ってしまう。
そのおかげで少なからず安心していたシノミだった。
『こちらスター1、敵がきた』
スター1――シグレからの無線の連絡によって、銃を持ち身構えた。
☆
~スター~
7階建てぐらいのビルの屋上へときている。空は曇り気味で太陽は顔を出していなかった。どことなく冷たく鉄の臭いのしている風が体を突き抜けていく。
「ここ、だな」
雅一が一番に屋上へと入って行き、それに続いて3人もきた。
「ここが狙撃ポイント、今から準備する」
シグレが角から少し離れた場所に位置取る。
「ここで私とカエデが狙撃、シモハルは移動しながら狙撃して」
「シモハルじゃなくて、ハルでいいよ」
「わかった」
「なんで、ハルだけ移動しながらなんだ?」
「それは、私が動けば狙撃してる場所の位置取りがわからなくなるから、かく乱よ」
シモハルがバレットM95を持ちながら答えた。
「それに、バレットは衝撃で砂埃が舞って、位置がすぐにばれちゃうから逆にいいの」
「なるほど、それで俺は?」
「マサはサポートと、下の階に敵が来たら排除をお願い。一応対人センサーは、1階と下の階に設置したから、敵が来たら分かる筈」
「用意周到だな」
カエデがHK417の準備をしてうつぶせに寝転ぶ。
「シグレ、このM21を使って」
「ありがとう」
シグレも同じようにM21を構えて、うつぶせに寝転んだ。
シモハルもバレットM95の点検しながら、位置を決めていく。
雅一は……ただぼっーとしていた。
数分が経過して、
「敵が来た」
シグレの言葉に全員がビルの下を覗き見た。
商業用のビルがひしめき合い、駅との間には大きな道路がとおっている。
障害物多めの場所で敵歩兵はこちらに向かっていた。
「こちら、スター1、敵が来た」
シグレが素早く無線で連絡を取り、銃のセーフティーを解除した。
『こちら、トリック1、どうする?』
「救援が来るからわからないから」
『無視ね』
「それがいいと思う」
『了解』
無線交信が終わる。
「無視ということで、放置」
「了解」
「OK」
「わかった」
返事をして敵が通り過ぎていくまで待つ。
この瞬間は何とも言えない時間だった。
歩兵が6人、軍服を着ていなかったから、民兵だと思われる。AK-47を持ちながら歩いる。
「いやな時間だな……」
「シッ! 静かに」
「すまん」
シグレに怒られて、シュンとなってしまった雅一。
そして、10分後には敵が通り過ぎて行った。
「こちら、スター1、敵が通り過ぎた」
『了解……』
この通信と共に、爆音が無線を通して聞こえた。
駅の方を見てみると、シグレ達が陣取っているビルとは逆側から煙が上がっていた。
『こちら、トリック1、敵と交戦中、バックアップよろしく』
「こちら、スター1、了解」
「みんな、支援開始」
この言葉共に、3人はスコープを覗いた。
☆
~トリック~
「了解……」
シグレに返事をしたと同時に、左側で爆音と共に衝撃が体に伝わった。
「こちら、トリック2、どうした?」
サキから短距離無線通信で連絡が来た。
「わからないけど、嫌な予感がするから、迎撃準備」
カノンとシマリはホームの売店の中に隠れた。本や食べ物類はまったくなく、無人で何もない小さな売店。
「あれ! 敵」
シマリが指さした方から軍服を着てない民兵が7人当たり突入してきた。
「迎撃開始ね。こちらトリック1、敵と交戦を開始する。トリック2はその場で待機、トリック4は自由射撃」
「トリック2了解」
「トリック4、行きます」
シマリとカノンが売店のレジから顔を出して、銃弾をたらふくお見舞いした。
その銃弾で4人が倒れたのだが、3人は電子掲示板の後ろに隠れてしまった。
「シマリ、移動するわよ」
「わかりました」
シマリとカノンが動き出し、カノンは右側から、シマリは左側から電子掲示板にいる敵に向かって両側から撃つ。けしって味方を撃たないように細心の注意を払っている。
「階段のぼるわよ」
「了解」
シマリとカノンが階段をのぼって行き、コーヒーショップらしき店の中へと隠れた。
「トリック1、敵撃破」
「トリック2、敵を発見、交戦を開始します」
電車の中に隠れていた2人は、金網を越えてくる敵を発見した。
「それじゃあ、やりますか」
「そうしましょう」
サキがM27 IARをフルオートで撃っていき、金網をのぼってくる敵を落としていった。
シノミは照準機を覗いて、一発ずつ丁寧に当てていく。
それによって、かなりの数を倒す事が出来たのだが、
「あれは!」
金網に向かって突進してくる奴がいた。体長は2メートルぐらいある、先程あったあのダメコン野郎だった。
「こちら、トリック2、ダメコンする奴が現れた。支援を頼む」
『スター1、いまから援護射撃を開始する』
「トリック1、いまからそっちに行くね」
サキが引き金を引くとともに、本当の意味での戦端は切って落とされた。