9 逃走活劇 走るさいにはMCDを
トリック1 カノン
2 サキ
3 シノミ
4 シマリ
スター 1 シグレ
2 雅一
3 カエデ
4 シモハル
☆
~トリックスター~
「敵は!?」
カノンが叫び、サキが後ろを確認する。
「いない!」
全員、必死に走っている。全速力でだ。
「もうそろそろ、いいんじゃないか!」
「ダメ! とにかく、合流できる場所まで移動しないと!」
「前方に、敵兵! 民兵かと」
前の方にいる敵は、迷彩軍服を着てなく、薄汚いTシャツとジーンズ姿で、AK-47を持っていた。
「どんな奴らだよ!」
「ストップって、止まってる時間もないから、特攻! フォーメンションは、最初と同じで、行くわよ!」
カノンが大声で言うと、トリック分隊とスター分隊に分かれる。
前にカノンとサキが走って行き、その後ろからシノミとシマリが追っている。
後ろは、雅一とシグレが一番後ろに行き、カエデとシモハルが、ショットガンを持って走る。
カノンはXM8を両手に持ち、サキはM27 IARを両手に持って進んで行く。
「カノン達の攻撃って当たるのかよ!?」
「当てなくてもいい。敵をひるませるだけで」
「そうなのか」
走りながら発砲。もちろん、当たるわけではない。カノンとサキは前に三発ずつ感覚を開けて撃つ。シマリとシノミは斜めの方を撃っている。
「どういて!」
「ほらほら」
カエデとシモハルは、近くにいる敵に向かってショットガンをぶっ放す。散弾から放出された小さな鉛玉が、体の一部に当たったのか倒れる。
道路の真ん中を強行突破しながら進む。
「ある意味凄いな」
「これも、VRMMOだからできる」
「?」
「現実でやろうものなら反動に耐えきれない。ゲームだから、ある程度は補正がかかってる」
「そう言うことか」
走りながら話しているうちに突破できたようだ。全速力で走っていても疲れることはない。
「疲れないから、楽だな」
「それは、たぶん、誰かがチートのコートでも使ってるから」
「チートのコード?」
「普通は疲れるけど、疲れないように設定値を変更してる」
「だれだよ! チート野郎は!」
「野郎じゃないわよ! アヤネよ!」
「なるほど」
聞いただけわかった。あの人はチートしてそうに見えたから。
「それじゃあ、何で死なないチートは作らなかったんだよ!」
「それは、コードの書き換えがすぐに行われるから、無理だってさ!」
雅一はアヤネでも、無理なことがあるのか、と思った。
「もう限界ね。全員止まって、休憩」
カノンがMCDをいじる。
「どうしたんだ?」
「チートを持続させるには、MCDが必要なんだけど、その耐久時間が過ぎたからよ」
「チートにも、条件があるのか」
MCDも万能ではないということだ。
「さて、移動するわよ」
またもや、移動を開始。
「後ろから追ってきてる?」
「追って来てはない」
「とんだ、逃避行だね」
雅一はカエデとシモハルと共に併走している。
「もうすぐ、市内!」
雅一たちは、市内へと突入した。
住宅街から打って変わって、ビルなどが立ち並んでいる。
「逃げ切れるのか?」
「逃げ切る」
シグレが強調させて雅一の返事を返した。
「敵が反則的な強さだろ! あれは」
「倒せないことはない」
「それはそうなのだが」
「ダメコンは、ある一定値を超すと負荷によって、かからなくなるから。その時まで撃ち続ける」
「そうなんだが、弾薬とか大丈夫なのか?」
「弾薬なら、あと2回戦っても大丈夫なくらいはあるよ~」
「もしなくなれば、敵から奪えばいいわけだし」
シモハルとカエデも会話に参加した。
カノンたちは、前を歩いており、距離は50mぐらいひらきがある。
「木更津駅まで行ったら、そこで防衛戦を構築して、救援がくるまで待たないと」
「だから、急いでなおかつ慎重に」
「大変だよな」
「他人事みたいに」
「実感がわかないんだよ」
「実感?」
雅一が言ったことにシモハルとカエデは首をかしげて、シグレは周りを見渡しながら耳を傾けていた。
「いや、俺ってRPGから来たわけだけど、なんだか緊張感がないっていうか、なんていうか」
「それは、私たちだって同じだよ。今だに死をかけたゲームをしてるなんて思ってない」
「うんうん」
「生き残るだけ……」
誰も実感がわいていないのかと、何となく心のもやもやが晴れずに、謎だけ残った感じだった。
「こちら、トリック1。どこら辺で部隊を展開する?」
「こちら、スター1。トリックは駅で陣地を張って。スターはビルの上から狙撃」
「それが、ベストね。了解、それじゃあ、トリックとスターで分けるわよ」
「こちら、トリック2、了解」
「こちら、トリック3、了解」
「こちら、トリック4、わかりました」
「こちら、スター2、ほいほい」
「こちら、スター3、ラジャー」
「こちら、スター4、イエスマム」
「それじゃあ、救援まで持ちこたえましょう」
市内戦が始まろうとしていた。