5 雑談接敵 一番前=一番偉い
トリック1 カノン
2 サキ
3 シノミ
4 シマリ
スター 1 シグレ
2 雅一
3 カエデ
4 シモハル
☆
~トリックスター~
「さっきから、うまく通信が出来ない」
カノンが無線機を持ちながら言う。
実際の所、時々声が途切れてしまい、うまく通信できない状況。
「なんか、いやな予感」
シグレが何とも言えない感じを覚えた。
「とりあえず、移動を開始しておいた方がいい気がする」
「そうおもう。南の木更津市内に向かって移動しましょう」
サキとカノンも、シグレの言ったことに賛成する。
「爆撃終わりましたよ」
シノミが外の様子を見ている。
爆撃は止み、爆音がしなくなる。
「なぁ、そういえば海から逃げれないのか?」
雅一は乗り物には何でも乗れるから、それで海に逃げてもいいんじゃないト思った。
「海はダメ。乗れるのはせいぜい漁船レベルぐらい。そんなんに乗ってると、陸地から簡単に狙われて、ドン! よ」
海軍クランもあるのだが、たいていは金持ちクランで道楽でやっている人たちが多い。1隻買うだけでとてもお値段が高い。
「それは、ごめんだな」
「南に行きましょう。無線機は、マサとシマリが持って行って」
「了解」
「わかりました」
雅一とシマリが無線機を背負って、その他、全員が銃の点検。
その10分後には、学校を出て南へと急いだ。
「2つに分ける?」
サキが学校をでて、校舎を横切っている時に聞いた。
天気は生憎の雲で覆われている。
さらには、いたるところで煙が上がっており、鉄のにおいが鼻を突きぬけていく。
「2つに分けるのはなし。今回も3つに分けたのが、失敗だったし」
カノンが今回手痛い経験をしたので、まとまって行動したいと思っている。
「そうね。でも、前衛はトリックが先行、それをスターがカバーする形で行く。それで中心の指揮官がカノン。それで行く」
シグレが2人の意見をまとめて、提案する。
「了解よ。それじゃあ、前衛のトリックから、行くわよ」
☆
~トリック~
校門に近づいて辺りで、トリックのメンバー。カノン、サキ、シノミ、シマリが塀に近寄る。
「これから、無線で会話。そして、コールサインを使うこと」
「了解」
「わかった」
「わかりました」
カノンの言葉で3人は動く。
「トリック1、今から右に行くから、トリック2は左。3は私のカバー。4は、2のカバー」
「トリック2、ラジャー」
「トリック3、いつでも」
「トリック4、わかりました」
カノンが校門を出て、右にしゃがみながら銃を構える。
同じようにサキも左をでて、走り出す。
その後ろから、シノミとシマリが銃を構えながら進む。
「トリック1、敵なし」
「トリック2、同じく」
「トリック3、敵は見ない」
「トリック4、敵はいません」
「それなら、左から行くから、トリック2,3は、先行。私とトリック4は、横側の敵を警戒。スターは、後ろから付いて来て」
サキとシノミが、ゆっくりと慎重に進んで行く。
足音しか聞こえない。
後ろからカノンとシマリが警戒するように進む。
サキはM27 IARを両手で持ち、もう一つのM27を腰辺りにかけて、いつでも撃ち出せる状態でいる。
☆
~スター~
「それじゃあ、スターも行く」
シグレの合図と共に歩いて行く。
トリックとスターの距離は50m。
これは集団で固まってると、真ん中に撃たれた際の被害が大きくなるのを、防ぐための処置である。
雅一が前を歩き、シモハル、カエデ、最後にシグレと言う感じで行軍。
爆撃のよって、燃え下がる音のみが響き渡っている。
「それよりも、なんで俺が一番前なんだ?」
雅一の感覚は一番前=一番偉い、という感覚なので、疑問になる。
「それは後衛において、一番重要なのが、一番後ろだから、一番前はそこまでだよ~~」
シモハルが答えた。
「そうそう、そんなこと当たり前だよ」
「当たり前ですいませんね」
「フッ」
「こら! 一番後ろ! 鼻で笑うな!!」
「こんな状況でも、そんなことが言えるのがすごいと思っただけ」
「そうか?」
それぞれの感覚が狭まって行く。
「絶体絶命って言う状況なのに、緊張感も何もない」
「褒めないでよ~~」
「いや、ハル。何も褒めてないよ」
「こんな空気もいいんじゃないか?」
「そうね」
『あぁー、あぁー、後ろの方々、何楽しいおしゃべりしてるのかな~?』
カノンからの無線連絡が入った、前を見ていると、こっちを見ている。
「こちら、スター2。後衛がいかに大事かと言うのを聞いてました」
雅一がふざけた感じで、真面目ぶった風に返す。
『はいはい、マサが、いかにバカかってことは知ってるから。それよりも警戒よろしくね』
「バカって失礼だろ! バカって」
雅一が大声で言った時には無線が切れていた。
「くそっ! 切りやがって」
「雑談終了。持ち場について」
シグレの一言で雑談が終了して、先ほどの隊列に戻る。
住宅街を抜けて、国道の通っている通りに出てきた。
商店街などを少しずつ進む。
「しかし、リアルすぎだろ」
お店の看板には、一つ一つに固有名詞が入っており、現実さながらだ。
「たしかに、そうだよね~」
後ろから来ていたシモハルが近づいて横に並ぶ。
「あんまり、気にしなかったけど、そう考えるとすごいよね」
「あんまり見てないのか?」
「うん、いつもは、チーム対抗戦だから、建物とか気にしないことが多いんだよ」
「そんな物なのか……」
「そんなもんだよ……」
「なるほど」
和みながら話していると、前の方で銃を発砲する音が聞こえてくる。
「何!?」
「何だ!?」
『こちら、トリック。敵と遭遇、数は約40。バックアップお願い』
「こちら、スター1。了解、全員、準備するわよ」
「あいあいさ~」
「イエス、マム」
「バックアップって?」
「いいから」
雅一はわけのわからないまま、バックアップをすることとなった。