1 意気消沈 そこからの頑張り
☆
~テイワズ&ドラグーン~
5人は東へと向かっていた。
「敵、こないようですね」
シグレが先頭で、マサ、シマリ、サキ、カエデという縦一列の隊列で進んでいる。
「しずかね……」
不気味な静けさを放っていた。
足音しかしない。
「お化けでも出そうだな……」
「ゲームだから、お化けなんてではないわよ」
雅一の言葉をシグレがすぐに否定する。
「もしかしたら……後ろに……」
「後ろにいるのは、あなたでしょ。さっきから、うるさい」
「すいません」
あれこれ、10分は歩いている。
太陽が、ちょうど真上を照らしているところだった。
「ストップ」
シグレが手で止める。
「前方に6人」
3階建てのビルと民家との間に6人いた。
こちら、角にいるために敵は気づいていない。
シグレが手招きして、全員が輪になったところで、小声で話す。
「敵は、6。まず、サキの機銃放火でかく乱して、カエデの狙撃。そして、私たちはそれの援護わかった?」
すぐに作戦を立案する。
「わかったぜ」
「狙っちゃう」
「わかりました」
「はいよ」
全員が銃のセーフティを外す。
「3、2、1、GOGO」
「全弾もってけぇ!」
サキが飛び出して、右手と左手のそれぞれにM27 IARを構えて、2丁で撃つ。
狙わずに、とにかく撃つ。右から左へときれいに流していく。
通常の戦闘においては不可能なことだけれど、ある程度ゲーム内なので補正がかかっている。
それによって2,3発があったたりして、倒れたりする。応戦しようとしたところで、カエデのHK417が火を噴き、2人の頭にどんぴしゃりで当たる。
他の3人も、リズムよく撃つことで、すぐに戦闘は終了した。
「らくしょーう!」
カエデがVサインを送る。
「楽だった」
サキがM27 IARを2丁肩にかける。それぞれの銃には、100発撃つ事ができるベータC-マグが弾倉となっている。
M27 IARは、M249の後継として、HK416を参考に作られた銃。軽くて、機動性はいいが、連射性能はM249より落ちてしまう。
ベータC-マグは、丸みおびた弾倉。リロード時において、手早くおこなえる利点がある。
「もうすぐだから、早くいくわよ」
シグレは、淡々として前に進んで行く。
それについて、4人も歩き出す。
☆
~アンサズ~
「ゲームで死んだんだから、現実でも死んだんですよね……」
走って合流地点に向かうとしている時に、シノミがつぶやく。
「あの神という人が作ったルールが、本当なら、そうなるかしらね」
「あっけないもんですね……」
「私たちは、ゲームしてるんじゃないんだから、生き残りをかけた戦争をしてるんだから」
「最近になって、よけいにそう感じます」
シノミが暗い顔になる。
「暗い顔しなさんなって、大丈夫だよ!」
シモハルが笑いかける。
「そうですかね……」
「そうだよ! そうだよ!」
「とにかく、急ぎましょ」
3人は急いで合流地点へと向かう。
☆
~館山統合司令所~
「どうしましょう……」
マユミは頭を悩ましている。
ヘリが1機落ちて、さらにはもう1機も救出不可能という結果になってしまった。
「詰めが甘いな……」
もっと、戦闘ヘリを送っておけば……。
もっと、爆撃機を送っておけば……。
など、いろいろと考えてしまう。
『マユミ、どうするの?』
「ヨウコさん……」
別任務を行うために待機しているヨウコから、無線がかかる。
『状況は、大方聞いたわ。それで、どうするの? こっちの部隊はみんな準備OKよ』
「どうしましょう……このまま、送ったら…また部隊の損害が増えるかもしれません」
マユミの声が震える。たった1人でいる司令所の空気が重く感じる。
『死んだのは、事実。でも、死なないためにどうするかは、過程』
「過程……」
『そう、死んでしまったのは事実で、どうしよもできない。でも、死なないためにどうすればいいかは考えるだけ、それで生き残れればOK! だから、過程は大切。結果が死んだというのかもしれないけど、あなたが信じた過程……作戦を自分自身で信じないと、もっと死ぬことになるよ』
「私が信じた作戦……」
『あなたは、必死に考えた結果がこれだけなら、あなたはそこまで……どうするかじゃない、何をしたいのか。それを考えないと』
「どうするか…………何をしたいのか……」
『あなたの必死に考えた作戦……過程なら、結果がどんなになろうとも関係ない。あなたが信じぬいた過程なんだから。それで、誰かが恨むかも知いない、怒るかもしれない。でも、数人でも感謝してくれる作戦を考えたなら、あなたの作戦に自信を持ちなさい。これは、裏で政治事情が重なった戦争とかじゃないんだから、もっと純粋に、自分を信じて!!』
「自分を信じる……」
『そう! 自分を信じて!』
「わかりました。自分を信じてみます」
曇りが少し取れた気がする。
まだ快晴とまでは、いかない。
この先、雨が降るかもしれない。
それでも、雲を越えればいいんだよ。
あの白い雲を越えれば、
真上には、大きな宇宙が広がっているんだから。
「雲を超える調子……よし!! ヨウコさん、私はまだ全然、軍事の事は詳しくありません。でも、何をすれば生き残れるかを考えます」
『よくいった! それでこそ、マユミだ! それじゃあ、がんばんなよ!』
無線が切れる。
「よし!!」
自分の頬を叩き、考え直す。
これで、ヨウコさんに言われるのは2回目だな……と思いつつ作戦室に行き、シュミレーターとにらめっこをした。