7 時間が速くなるほど年取った証拠かも
テイワズ
1・雅一
2・カエデ
3・シマリ
ソウイル
1・アヤネ
2・ヒメ
3・キリ
アンサズ
1・カノン
2・シノミ
3・シモハル
☆
~アンサズ~
今は、道路を下りて、セメントを使っていない、砂利道を歩いていた。
道路の下を歩いているだけだ。アクアライン連絡道は、いい感じに目くらましになっていた。その状況も、どれくらい、いられるか分からなかった。すでに白い空から、青空へと変わりつつあった。
「敵は?」
「……いません」
「行くわよ」
少しずつ進む。非常にゆっくりだが、敵に見つからないように息をひそめて、ゆっくりと進む。
「全員、ヘッドホンを付けて」
片耳だけつけるヘッドホンを装着する。
「こちら、アンサズ1。どう?」
「アンサズ2、感度良好です」
「アンサズ3、同じく」
近くにいるはずなのに、確認する。いざという時のためには、大事な心がけだ。
この無線は、至近距離しか通話ができない。数百メートル離れると、通信不能になってしまう。
「アンサズ3、南の方向に敵が集まってる」
「アンサズ1、確認。気づかれないようにそっと」
「アンサズ2、了解」
「アンサズ3、ラジャー」
3人は気づかれないように、そっと行く。敵は、5名で200m辺りに集まっている。普通なら簡単に倒せるのだが、場所を気付かれるとまずいので、足音を立てずに行く。
何とか相手が見えないところまで、行くことに成功した。
「何とか、いけましたね」
ものすごく小さな声でしゃべりかける。
「そうね……」
3人は住宅の塀を背にして、進んで行った。
時刻は、ようやく9時を回ったところだった。
☆
~館山統合司令所~
画面がたくさんあり、真ん中には木更津の航空写真が映し出されている部屋に数十名が集まる。
「みなさん、こんにちはマユミです。ここの指揮権をなぜだが、私が持っています。それで、皆さんに今から、クラン救出作戦を実行してほしいのです」
画面に映し出されたのは、3機の輸送機の内、2機が空挺部隊を出して、もう1機が滑走路に着陸しているところだった。
「なるほど……敵の規模は、だいたい500人程度で、戦車が5両ぐらいですね」
若い男の人が最初に口を開いた。
「結構きびしいわね。それで、クランの人数は?」
「9人です」
「9人ね……」
全員が、考え込む。この戦力差で戦いを挑むのはかなりきつい。
「NPCを使うのはどうですか?」
「それは、信頼できない。NPCだと味方認識していない人には平気で撃つから、救出任務には向いていない。だから、プレイヤーで行かないといけないけど……」
「一応、明日の8時にゴルフ場で、ヘリを要請しているのですけど……」
「その任務は、俺たちがやることになっている」
ガタイのいいオヤッさんらしい人が、手を挙げて言った。
「先ほどから、横に立っているオブザーバー様は、どうすればよろしいと思いますか?」
あるクランリーダーが、横に突っ立っているヨウコに質問を投げかける。
「貴方たちが考えないと、でも、これはゲームじゃない。一人、一人に命がかかっている。それをどうするのかは、貴方たちで考えないと、死ぬのかどうするのか」
「はははっ!! あんたとは、気が合いそうだ!!」
今まで黙っていた。威勢のよく、体つきがいい女の人がでかい声で笑う。
「チキンどもは、小屋で怯えとけばいいんだよ。そう思うだろ!? オブザーバー殿」
「そうね、チキンはチキンらしく、しといたほうがいいわね」
「二人とも、静かにしてください。話が進まないじゃないですか!?」
マユミが二人を止めに入る。他の人は、それをボーと眺めているだけだった。
先ほどのガタイのいい男の人が口を開いて、
「俺は、救出作戦に賛成だ」
周りが騒然とする。「あの、鶴亀運送が」「それなら……」
鶴亀運送というクランは、ヘリや輸送機による人員輸送を主目的としている全国区のクランだ。
「私たち“フラワーリング”も協力するわ」
「それなら、私たちの“ヴァルキュリアドラグーン”も作戦に参加します」
続いて、二人の女性が立ち上がり賛同する。
「それなら、俺も……」
「……いいかな」
やがて、様々な人が賛同する。
「やれやれ、世話のかかる奴らだね~」
「まったくだ」
ヨウコともう一人の女性が頷きあう。
「私が考えた作戦を言ってもいいでしょうか?」
マユミが物腰が弱弱しく、怯えたように震えた声で話す。
「それでは、指揮官殿の話をきこうじゃないか」
「私が考えた作戦は、敵がエアボーンしてきたなら、こっちはヘリボーンで行きたいと思います。救出する人数は、9人。それぞれ3人ずつに分かれているそうです。それぞれ、ヘリを回して救出しに行きます。まずは、偵察及び制空権の奪取。その後、戦闘ヘリと、爆撃機による空襲。そして、ヘリによる強襲をしたのちに、救出します。」
大きな画面の中で、シュミュレーションしながら部隊が動いている。
「……あの…どうでしょうか??」
おそるおそると言った感じで尋ねる。
「特にダメな点は、ないね。三段構えの戦略もなかなかいいと思う」
ヨウコが賛同すると、周りの全員が了承する。
「それでは、今から1時間後に作戦の第一段階を開始させます。作戦名は、“The sunrise to rescue”。作戦の詳細は、追って説明していきます」
「イエス、マム!!!!」×作戦室にいる全員
全員がふざけた感じで敬礼して作戦室を出ていく。
「なかなか、様になってたじゃない。あなた、もしかして戦争映画とか好き?」
最後にヨウコとマユミだけになり、質問をするとマユミの顔が赤くなり
「少しだけです。少しだけ」
「ふ~ん、そうしといてあげるわ」
2人はさらに作戦を考えていく。
「あと1時間、頑張ってくださいね」
マユミは、心の底から願った。
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