2 強行突破の説明書にはご注意を
『こちら、解放軍!!こちら、解放軍!!現在、アクアラインの旧海ほたるPAで、敵と戦闘中、至急応援を頼む。こちら、解放軍……こちらかい…!!!………』
爆音と共に無線が途切れる。
「これって……まさか私たちはめられた?」
カノンがトンネルの中で叫んだ。
「かもな、たぶん戻っても同じことだろうな」
「あちゃーどうしよう」
カノンが頭を抱える。
「どうしましょう」
シマリも顔を下に向ける。
少しの間、沈黙ができる。
「突破でいいんじゃない?」
アヤネがハンヴィーの上から大きな声で言う。
「でも…………」
「何とかなるでしょ!」
「そうそう!」
カエデとシモハルも賛成する。
「それなら、PAを強行突破するわよ。みんな準備を」
全員の準備をし始める。
M249の弾を確認する。
M249とは、軽機関銃の事で、5.56x45mm NATO弾を使う事が出来る。威力は普通の軽機関銃より劣るが、取り回しと機動性においては、かなり使いやすい軽機関銃となっている。
アヤネもM2の準備をしている。
M2とは、第二次世界大戦から、ずっと使い続けている銃で、12.7mmの大型の銃弾を打ち出す事が出来る重機関銃だ。
シノミがMk.19 自動擲弾銃をいつでも発射できるようにしている。
Mk.19 自動擲弾銃とは、グレネードを連続で発射できる銃で、対人用の手榴弾を遠くに打ち出すような感覚で使うものだ。
「それじゃあ、行きますか」
カノンが運転席から叫ぶ。
「了解!」
「了解です」
「あいあいさ~」
「行きましょう」
「花火でも打ち上げるわよ」
「頑張りますわ」
「レッツゴー」
「……了解…………」
カノンがエンジンのアクセルを思いっきり踏んで加速していく。
シマリもそれに続いて後ろから車間距離20メートルぐらいを開けて続く。
重い銃撃音とコンクリートが砕ける音が近くで聞こえてくるようになる。
雅一が唾を飲み込む。
「さぁ、いくわよ!!」
カノンの掛け声とともに、さらにアクセルをふかして、時速120キロまで行っていた。
「マサ!無線は、常にオンにしてて」
「了解」
スイッチをオンにして
「こちら、アルテミス。これから無線を常時オンにしといてくれ」
「…ルナ……了解…」
日の光が見えてくる中、ハンヴィーが戦場へと飛び込んだ。
真っ赤な空から青空に変わっていた。
そこに、3,40人の兵隊が群がっていた。
敵がこちらに気付き、銃弾を撃ってくる。
それが、ハンヴィーの装甲に当たって火花を散らしている。
全員も反撃に出て、M249からは5.56x45mm NATO弾を降り注がせる。
雅一も前に向かって撃っている。
薬きょうが横に散らばっていく。
敵が倒したかどうかは良く分からず、ただリズムよく撃っている。
雅一が、ふと横を見ると、ハンヴィーの残骸があった。
「…これは……」
ハンヴィーが燃え上がっており真っ赤に染まっていた。
人影はなかったのだ。
「あの人たちなのかな?」
一瞬の時間だけ思い出したのだが、すぐに戦場へと連れ戻される。
「マサ!銃弾交換!!」
横で運転しているカノンが叫ぶ。
「あぁ!すまん!!」
すぐにM249の弾倉を交換する。しかし、時間を食ってしまい。目の前に敵が5,6人がこちらに撃って来ようとしたのだが、爆発音と共に吹き飛ぶ。
「ぼさっとしない!!」
シノミがMk.19 自動擲弾銃を撃ちながら大きな声で言う。
「すまん!!」
M249の弾倉を交換すると、すぐに銃撃を敵に浴びせる。
まだ、一キロも進んでいなかった。
時間がとても長く感じている。
もう一台のハンヴィーでも必死に抵抗している。
アヤネがM2から、12.7mm弾を吐き出しながら敵を巻き込みながら倒している。
カエデも、後ろから来ている敵に銃弾を浴びせる。
ハンヴィーが揺れる。
路が悪いのもあるのだが、無理やり土嚢の上を飛んでいるからだ、何回跳ねたのか、わからない。
本来、二車線なのだが真ん中の区切りが、銃弾により削り取られており、原形をとどめていなかった。
ようやく、1㎞超えそうな時に、後ろから周りの音を全てかき消すぐらいの轟音が響く。
プロペラが回っている音だった。
「まさか!ヘリ!?」
後ろから、5機のズングリむっくりなヘリが重いローター音を鳴らしながらこちらに近づいていた。