~地下~
夕日が見える中、南下していき装甲兵員輸送車…BTR―Dが途中で止まった。
「よし、ここら辺でいいかな?」
カノンが運転席から出ていくとシマリも運転席から出て行き何やら話をする。
「ここらへんに隠しておけばいいよね」
「そうですね。一番いいと思いますよ」
シマリは納得した顔になり運転席へと戻って行く。
カノンも同じように運転席へと戻って行く。
「カノン?どうするんだ?」
「これから車を置いて、ゲットーまで歩いていくの」
「ゲットーってどこにあるんだ?」
雅一が周りの風景を見てきたのだが人が住んでいるような気配は一つもなかった。
「行けばわかるわよ」
さっきからカノンはこの言葉で事実を濁す。
「ここに入れて」
装甲兵員輸送車をがれきの下に入れる。
「みんな降りて隠ぺい工作するわよ」
全員が下りてきて二両の装甲兵員輸送車を隠す。
「これでいいかな」
瓦礫の色と同化していて見分けがつかないぐらい完璧なものになっていた。
それをたったの三十分でやってのけたのだからさらに凄い。
「ここから徒歩で行くわよ」
「了解」
「はい」
「わかった」
「わかったよ」
「わかりましたわ」
「了解です」
「はいは~い」
「……うん」
7人が歩き始める。
もちろん武器を携帯しながらの徒歩だ。
しかしその武器に問題があったのだが
「何でハンドガンしか持っていかないんだ?もしもの時に大変だろう」
「それは、今から行けばわかるわよ。アサルトライフルとか持っていったら大変なことになるから」
カノンが雅一の質問に答える。
アサルトライフルと言うのは、連射が出来て、中近距離向けの銃のことを言う。
「さっきからはぐらかしてばっかりだな」
「行けばわかると思います」
その愚痴にシマリが答える。
「そうかね~」
雅一はホルダーの中に入っているMP―433・グラッチを触りながら進んでいった。
少し進むと住宅街からビルなどが乱立する都市部へと景色が変貌していっている。
「ここが川崎か~。でも、人が住んでいる気配はないんだけど」
「みんなストップ」
カノンがみんなを止めて周りの様子を注意深く観察する。
「付いて来て」
動き始めるとみんなはそれについていく。
川崎駅廃墟らしきものの中に入って行くのだが、そこで不自然な出入り口があった。
「大丈夫みたいね。走るわよ」
カノン以下クランメンバーが走ってついてくなか、雅一とヒメのみが状況を分かっていなかった。
駅の構内を歩いていくと不自然な穴があった。
不自然な出入り口の中に入って行くと、地下に続く道が出てくる。
「中に入って」
駆け足で全員、中へと入って行った。
地下へと続く道をどんどん進んでいくと人が三人ぐらい通れる扉が見てくる。
突然目のあたりにある小さな扉があいて
「MCDを出せ」
とても深みのある言葉を発する。
「わかったわ。みんな、MCD貸して」
「あぁわかった」
雅一はMCDを渡す。
全員分を扉についていて青く光っている所に、それぞれふれていく。
「全員OKだ。ようこそ川崎ゲットーへ」
扉が徐々に開いて行った。
扉をよく見てみると暑さが1メートルあまりあり、コンクリートでできていたためにすごい丈夫な造りとなっている。
「すげーー」
雅一の目の前に広がったのは、一本の幅が20メートルあたりある所に人が所狭しと座っていたり通りがかっていたりしていた。
「こんなに人がいるのかよ……」
「違うわ。たぶん9割はNPCよ」
「あれがNPCなのかよ」
見てみると普通に動いている。
「あぁなるほど。話さないんだ」
「正解。武器屋とかアイテム関連を撃ってるお店以外しゃべらないの。まずは休憩所を探さないと」
進んでいく。
周りには人がいてよけて通らないとうまく進めないくらいだ。
「あった。あった」
休憩所と書かれているところがあった。
入って行くと、普通のホテルのロビーと同じだった。
タイル張りの床に観葉植物などが飾られていた。
「ずいぶん豪華な休憩所だな……」
雅一はポカンとした感じで周りを眺めている。
「みんな行くわよ」
ロビーに行っていたカノンが戻ってきて手にはカードを持っている。
「さぁ、いくわよ」
壁の方に行きカードで触れると突然扉が出来る。
「すごいな」
「所詮、バーチャルだから何でもありなんでしょ」
そういってカノンは中に入っていた。
みんなもそれに続いてく。
「なんじゃこりゃ!」
中に入った光景は畳張りで人が2,30人ぐらいは入れる大広間的なところだった。
ご丁寧に端っこに布団と座布団が人数分置いてある。
「ここは?」
「こんだけの人数をいれれて安いといったらここしかなかったの。」
「金取るのか?」
「もちろん、お金は銃などを売ったり。任務をクリアするともらえる仕組みになってるの。」
「なるほどな……」
それぞれ座布団を持ってきて輪になるようにして固まる。
みんな荷物らしきものは何一つ持ってきていない。
「ここでみんなにいい知らせと、悪い知らせがあるけどどっち聞きたい?」
「そりゃあ、いい知らせからだろ」
雅一が即答するとみんなも頷く。
「いい知らせは、神様はどうもやさしいらしく。シャワーとお風呂のシステムが加わってるわよ。あと食事できるよう、設定されている。」
「やった」
「嬉しい」
などと騒がしくなるところで雅一はカノンに聞く。
「そういえば、何でシャワーや食事が必要なんだ?」
「それは、人間が習慣としているところでの行動がないと、意外にだめなの。だからVRMMOは、必ず5時間で落ちるようになってるでしょ」
「確かにそうだな」
VRMMOは、長時間プレイによる、現実世界の体の変調をきたさないために5時間と決めている。
5時間過ぎると強制退場させられるのだ。だから、いつもやるときは時間に気を付けていたのだ。
「でも、食べなくてもいいよな?」
実質昨日から何も食べていないことに気付くそれは、空腹にならなかったことが一番大きかったのだ。
「そうね。GCT自体、別に食べる必要もないし、寝る必要もない。でも、人間の習慣はなかなか変える事が出来ないの。だから寝るし食べるの。でも、アイテムで体力回復系のレーションならあったはず。」
レーションはパックの中に入っていて進軍の際や作戦中などに簡単に食べれるものだ。
「次に悪い知らせは…………」
「悪い知らせは…」
みんな静かになりカノンに耳を傾ける。
「米軍から任務が入って、次は米軍基地がある館山まで行くことになったわ」
カノンがMCDを指さしながら言った。