ギルドカード
4月29日改訂
△
翌朝。
俺の朝は早い、生まれ変わってから体を鍛えている。召喚された時に加護や身体能力を付与されていたので人外の力を持っていたが。今は地球で研究した魔術と鍛えた体と前世の経験だけだ。
なので、努力で補うしかない。そんな訳で今俺は朝の薄暗い中を筋トレのあと、走りこみながら町を探索している。
漁に行く準備している漁師が居ただけで、その他人とは出会わなかった、町の道や建物を見るだけでも収穫はあった。
(今の俺が魔術で何処まで出来るか試さないといけないな。それに転生してから戦ってないから感を取り戻したい。落ち着いたらモンスターの討伐でもするかな)
そんな事を考えながら走っているとミゲルの家に付いた。水浴びをして部屋に戻ると、スミスさんが待っていた。
「お帰りなさい。新田君朝部屋に居なかったからびっくりしたわ。今の私たちは、貴方が頼りなのよ。黙って1人で行動しないで欲しいわね」
スミスさんの視線が痛い。…でも何だろう美人にこんな目で見られるのも悪く…な… なんか今危ない道に行きそうになったな…。
「すいません…」
義雄は素直に頭を下げる。
「…もういいわ。今度から気を付けてね。今日の予定を確認したいけど良いかしら?」
「はい、まず何をするにもお金が要ります。金塊と人工水晶を売れば、開業資金ぐらい余裕で足りるはずです」
80mmの占い用の人工水晶(1800円)を5個持ってきている。 水晶や宝石は魔道具の材料や装飾品などで地球より需要は高い。 こんなに大きな水晶球は、この世界では滅多にお目にかかれない。
金塊は、俺の貯金と米国からの今までの報酬で買った18kの100g金塊3本持ってきている。
この世界の通貨は大陸ごとに違う。神虎大陸では、小銅貨、銅貨、銀貨、金貨がある。小銅貨10枚=銅貨1枚、 銅貨10枚=銀貨1枚、 銀貨10枚=金貨1枚、各国で製造されておりコインには、表に神虎。裏には、偽造防止の魔法陣になっている。仮に偽造しても魔法陣に魔力を流すと判別できる。平均的な家庭の収入で銀貨30枚(金貨3枚)日本円で考えると、金貨=10万円、銀貨1枚=1万円、銅貨1枚=千円。古代魔法帝国が製造した物を今でも使っている。今でも製造は可能で表に製造者の印があり、裏に古代魔法帝国と同じ魔方陣を刻めば製造可能だ。金属の量が同じ分量かそれ以上の品質でなければ、魔方陣に魔力を流すと偽硬貨と認定される。
「それからコミニティギルドに行き商人として登録して。そのあと役所に行き商会の登録をします。ビリーさんが紹介状を書いてくれたので、簡単に登録できると思いますよ」
この世界でギルドと言えばコミニティギルドだ。なんでも、古代魔法帝国が作り、運営していたが。世界統一国家の古代魔法帝国が滅び、複数の国が建国され。古代魔法帝国のシステムを1国では運営できず。公共性が高いにも関らず、民間団体で運用することになったのだ。コミニティギルドは、冒険者ギルド、傭兵ギルド、自警団、ハンターギルド(犯罪者、モンスターの賞金首狩り)魔術師ギルド、商人ギルド、職人ギルド、など複数のギルドを統合したギルドだ。
ゲームや小説でよく出てくるギルドとは、少し違う。
冒険者ギルドは、身を守る以外基本戦闘をしない。彼らは、”冒険”をする者である。探検家やトレジャーハンター(主に古代魔法帝国の遺産の発掘、薬草の採取、魔法石の採取、など)になる。モンスターや犯罪者は、ハンターギルドになる。専門的知識が必要になる仕事だ、素人が直ぐに出来る仕事ではない。ほとんどのギルドがランク制で、資格を取らないとランクアップしないギルドもある。
ギルドは、職安、労働組合、商工会、人材派遣、資格の授与と管理、などを行っている。
四大陸全てに存在して国ごとの加盟制だ。古代魔法帝国の遺産の魔術や魔道具で情報管理されている。個人では定職を探せたり依頼を受けたり。魔術師などの資格試験(有料)を受けて取る事で専門的な高報酬の仕事が出来るようになる。冒険者ランクや傭兵ランクなどもある。
依頼主は、国、貴族、商会、自警団、などさまざまだが依頼主にもランクがあり。例えば、ゴブリンの集落撃滅20匹討伐依頼があったとすると、討伐に行ったら40匹居ましたなんて事になると依頼主のランクが下がり、手数料が高くなる。問題なく数多く依頼を出してくれる依頼主はランクが上がる。勿論手数料が安くなる。
ギルドに登録をしないとギルド加盟国では正規に商売が出来ない。商会の登録を国に登録する時にギルドカードが必要だ。ギルドカードには、登録者の血を使い魔力の魔紋情報を登録する。 魔紋は、指紋と同じで他の人とかぶる事がない。
「ギルドカードが発行されたら物件を探す予定です。転送用の魔法陣を設置しないと物資やスミスさん達の帰還が出来ませんから。今日は、そんなところですかね。勿論米国の依頼も考えていますよ」
スミスさんと話をしていると、バーグ少佐とブラウン中尉が部屋から出てきた。
「「おはよう」御座います」
「「おはよう」」
「おはよう、皆さんお揃いですね。 朝食が出来たのでどうぞ」
ミゲルが朝食に呼びきた。
ちなみにミゲルの兄は、 葡萄酒生産の為農園に夫婦で住み込んでいるそうだ。
朝食は、パンと魚のスープでミゲル達と食べているとビリーさんが不意に思い出したように話してきた
「ところでヨシオは何処の国から来たんだ。あんな容器を作っている国なんて噂でも聞いた事が無いのだが…」
前もってこんな質問有るのは想定していたが突然だったのでビックリしたが話し出す。
「…これは秘密にして欲しいのですが。実は、僕の国は神竜大陸よりも遠くにある島国で今まで大陸とは交易をしていません。平和主義の国で自警団は、居ますが軍隊が居ません。神竜大陸の人間に僕の国が発見されると不味いので。大陸には、無い独自の輸送方法で遠くの国と交易をしようとしている所です」
嘘は言ってないよね?
「ふむ、そうか…。軍隊が無い国か良い国だな」
ビリーさんはそれ以上聞いてこなかった。
○
ビリーさんの幼馴染が経営している店で貴族やセレブ相手に宝飾品や魔道具を売っているお店を紹介してもらった。
店の外観は貴族の屋敷のような感じで内装も豪華だ。
「いらっしゃいませ~」
美人の店員さんだ、他の店員も美人が多い。
「エランド商会の商会長の紹介で、売りたい物があるのですが…」
袋の中の金塊を見せる。
「はい、申し訳ありませんが店主を呼んできますのでこちらでお待ちいただけますか?」
「分かりました」
個室に案内され。美人の店員さんは店主を呼びにいく。
しばらくすると執事のような服装のダンディーな店主が現れた。 歳は、ビリーさんと同じぐらいかな?マダムキラーって感じだ。
「お待たせしました、店主のレイモンド・ゴードンと申します。おや、ミゲルじゃないか無事だったのだね 良かった…」
優しい表情でミゲルの頭をなでている。
「もう子供じゃないんだから、頭をなでないでくれよ」
「私にとっては、ミゲルは何時までも子供だよ。それで何か売ってくれるそうだが…」
ゴードンさんが俺達の方に視線を移す。
「これを買い取って欲しいのですが」
俺は、そう言うと、金塊300g3本と水晶を5個出す。ゴードンさんは水晶の大きさに驚きながらも鑑定を始めた。金塊は、鑑定が先に出た。
魔術で金の質を確かめて重さを量る、金塊だけで金貨100枚になった。 この世界では、14kぐらいで質が高いと評価されている。金貨も14kぐらいだ。
水晶の方は、時間がかかった。無色透明でこの大きさの球体は、この世界では珍しい。重機やダイナマイトが無いので手掘りで採掘している時代に、この大きさの水晶は滅多に出ない。機械が無いので球体に綺麗に研磨するのは並大抵ではない。
有る程度は、魔術で出来るが魔術師を雇うのは高くつく。水晶は、地球より需要が多い。宝石としての需要と魔道具としての需要がある。
「この大きさで透明な水晶球は久しぶりに見ました、5個全部で金貨500枚になります」
俺以外は驚いている。
ミゲルは「すげぇ」とつぶやいて唖然としている。
「…分かりました、それでお願いします」
ゴードンさんの表情が一瞬緩む。多分俺以外は気づいていない。
多分交渉すれば、もう少し高く売れるだろうが今後もゴードンさんと取引する事を考えて、言い値で売る事にした。この世界では、言い値で取引するのは貴族ぐらいだ。金貨600枚を受け取り、店を出てギルドに向う。
ギルドは、町の中心に位置している。城と教会の次に大きな建物でシンプルな構造で3階建てだ。 人が引っ切り無しに出入りしている中、受付の列に並ぶ。しばらくすると順番が回ってくる。勿論スミスさん達も登録する為に俺の後ろに並んでいる。ミゲルは、もう登録しているので並んでいないが。
「登録したいのですが」
「はい、では登録料銀貨1枚と、こちらにお名前を記入して。この魔法陣に血を一滴たらしてください」
スミスさん達の分も支払い。紙に名前を書き、ナイフで指に軽く傷を付け、血を魔法陣にたらす。この世界にも紙はあるがあまり質が良くない、植物製だ。
「二階の初心者講習室に行っていただき講習が終わればカードをお渡しします」
講習内容をまとめると
職業ごとにギルドランクがあり。S、A、B、C、D、E、とあり。職業は、冒険者、ハンター、傭兵、魔術師、商人、鍛冶職人などの専門職もある。
職業によってランクの上がり方は違うが、試験や、試験代わりのクエストで決まるそうだ。あとは、依頼を達成できない時の罰則の説明。犯罪を犯した場合手配され賞金首になる事もある。 犯罪認定は、依頼人が申請してギルドで認定した者だけが対象だ。ギルドは民間団体なのだからお金が絡まないと動かない。加盟国は、その事を了承しないと加盟できない。加盟しないと経済的に厳しくなるのだ。
講習が終わり、金属製の魔法陣入りのギルドカードを受け取るとギルドを出る。
○ ○
その頃、神聖デント王国 ”王妃の部屋”
そこには、濃い蒼の瞳に、長いストレートヘアーの金髪でグラマーな美女が、この部屋の主。王妃ルナだ。もう40近いはずだが、まだ20代にしか見えない。
それに比べ、若い頃の筋肉質だった体は、見る影も無くマツ○デラックス並みの巨体をした国王が冷や汗を出しながら話していた。
この国の実質的支配者の王妃は、隣国ナバーラ王国との戦争で思わぬ苦戦を強いられ、いらだっていた。
「あんな小国になぜ手こずるの。早く攻め落として頂戴」
「しかしルナ。篭城されては、あの難攻不落の城を落とすのには、決め手が無い。それに敵のゲリラ部隊が、補給部隊を攻撃してくるから物資が届かぬのだ…」
国王は汗を拭きながら答える。
「そんなの農兵を盾にして力尽くで戦わせなさい。農兵などいくらでも居るのだから。それに農兵が死ねば補給が少なくて住むでしょ!早く命令してきなさい」
ルナはヒステリックに言い放つと、国王を追い出した。
「まったく役立たずばかり。でもこんな所でつまずく訳には行かないわ。また召喚しなきゃダメかしら… 召喚の準備だけはして置きましょう」
そう独り言をつぶやいた。
▽




