森の中で最強生物との戦い
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日本、村上家。
義雄が再び訪れて偽銀、魔法石、魔法陣の書かれた紙、契約書を一郎(前世の父)に渡し。「この契約書をコピーして一郎父さんに読んで分析して欲しい、それとこれは…」説明して今後の事を話し合って直ぐに戻って行った。
「しかし義彦の奴、突然来たと思えばとんでもない物を置いて行きおって…」
そう言いながら契約書のコピーを読み始めた、一郎は大手商社で営業マンだった。その経験から契約書を作るのも分析するのもお手の物である。
魔法石と魔法陣は、移転用で一郎が作った会社に魔法陣をセットして義雄が異世界からその魔法陣に移動出来るように渡したのだ。
「ふむ…、分析だけではつまらんな。よし!この契約書を基準に義彦に有利な契約書を作るか…」
一郎は独り言をつぶやくとPCに向かい何かを打ち込んでいく。
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7日後に義雄が再びリナが寝込んでから訪れた時には、一郎作の契約書がほぼ出来ていた。一郎が契約書を作った事に驚き、内容を確認して苦笑いを浮かべた。
物凄く簡単に言うと。米国は、契約書を見る限り、レオン領の土地が欲しいのだ。目的は研究施設を作り、薬草を育てたいみたいだ。
見返りにレオン領の開発に手を貸すと言うものだ。その他は、契約主が米国大統領直接ではなく、新設された政府機関に変わった。それに政治介入の項目が軍事介入に摩り替わっている。
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次の日には一郎作の契約書が出来上がり、義雄が引き取って行ったのを見送ると一郎は、会社を立ち上げる準備に取り掛かった。
「うむ…」
(流石に一人だとこの歳では疲れる、それに時間が掛かるな。法人登録が終われば、社員が必要だ…。でもどうやって募集するかだな、求人広告に業務内容、異世界貿易!なんて書いたらネタにされるだけだからな…)
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ナバーラ王国、レオン領。
リーザさんが来たので契約書を渡した。まさか代替案の契約書を渡されるとは思っていなかったのか、普段冷静なリーザさんが驚きの表情になる。彼女は直ぐに普段の表情に戻り、契約書を読み始める。ちなみにリーザさんが最初に持ってきた契約書の倍の文字数になっている、一郎父の話ではこれでも簡単すぎると言っていた。もっと時間が有れば米国の弁護士に依頼して米国の法律のアドバイスや検証をしてもらいたいそうだ。
まぁ一郎父の話では、これで不利になることは無いだろうとの事。
例を挙げると、米側は土地の譲渡→義雄側は借地権、他にも商会の貿易手数料のUP、異世界貿易の独占権、武器輸出禁止、などなど要求できそうな物は全て要求している。
「契約はこのままでも僕はかまいません、ですが米国が新契約を望むならこの契約内容に了承をいただきたい」
契約書を読んでいるリーザさんに話しかける。
「ここでは判断できないから時間を下さい、持ち帰って検討するわ。…この契約書新田君が作ったの?」
「他に誰が居るんです?時空の歪みを通らないと他の人に頼めないのはお分かりでしょう」
英文で契約書を書ける人間が、この世界に居るわけがない。
「…そうね、早速だけど基地に送ってもらっていいかしら」
「勿論良いですよ、あぁそれと僕は明日からしばらく留守をします。魔術師試験で移動を含めて一ヶ月位留守をしますのでよろしくお願いします」
「ええ、聞いてるわ、でも一人で平気なの?」
「はい、人目に付かないよう真夜中に街の近くまでリナに送ってもらいます。それに試験の最中は護衛でも同席できないので…、神聖デント王国の聖都にあの二人を連れて行くと目立ちますしね」
「そう…、気おつけてね。帰ってきたら基地に来て、その時に契約の話をしましょう」
「はい」
リーザさんを送り出し、出発の準備に取り掛かる。
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翌日
下水工事は思ったより時間が掛かりそうだが、予定より早く壁や道等の工事がほぼ終わり。都市型魔法陣を発動させる為、義雄は街の中心に来ている。中心の土地は空き地で役所を作る予定で城は作らない、こんな所まで攻められるようではもう終わりだ。領主公邸と軍事基地は別に作る、しかし金が掛かる。俺と同時期に貴族になった、商人達は苦労しているだろうな。あぁそうだ!詠唱だ、集中しなきゃ…。詠唱を始める。
「よし、これで良いだろう」
長い詠唱が終わり、都市型魔法陣が発動される。この魔法陣は永続型で、自然界の魔力を消費して効果を維持するタイプだ。自然界の魔力を消費する魔法陣の副作用で空気中の魔力が都市周辺で薄くなる、それでも地球の数倍の魔力の濃度はあるのだが…。
義雄の魔法陣の弱点は使いずぎると魔力が薄くなり、魔法陣が使えなくなる事なのだ。魔法陣を使った魔術だけで戦った場合だが…。
「サントス、ギム、ジョン後は頼んだぞ」
「へい、男爵様」
「「はい、閣下」」
「閣下申し上げ難いのですが…、ルイス将軍閣下から帰還命令が有りましたので、男爵閣下がお戻りなられたら帰還させていただきます」
「分かった仕方ないな…、サントスが気にする事じゃない。俺が居ない間はジョン、君が開発の指揮を頼む」
「はい、閣下」
今更だがギムは、自警団の団長で仕事は猟師と大工をしている。ギムを部下にならないか誘ったが、復興が終われば元の仕事に戻ると言っている。
ジョンはレオン領唯一の魔術師の資格を持つ人間だ、レオン領出身で貴族に雇われていたがその貴族が戦争で逃走。唖然としているときに故郷から父危篤手紙が届き、故郷に帰って来ていた。その時にギムから誘われ参加した、ちなみに父は亡くなったそうだ。彼の魔術師ランクCで、一人前の魔術師レベルだ。彼はそのまま雇って欲しいそうだ。人材不足だ、安心して店や領地を任せられる人間が居ない…。今は仕方ないと割り切るしかない。
(聖都か…、今回は試験だ。今回は…)
義雄は日が傾く頃にリナに乗り、神聖デント王国、聖都に向かって出発した。
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神聖デント王国、聖都近郊の森。
突然だが俺は最強の生物から攻撃を受けている、誰か助けて…。
「私も行きたい…です」
「だから駄目!」
「それでも行くのです」
「駄目なものは駄目!」
…今度は、瞳をうるうる攻撃だ、おっ俺のHPが削られていく…。
リナと俺でこんなやり取りが森の中で続いていた、出発前にも散々言ったのに…。
聖都にはリナの顔を知っている人間が山ほど居る、大騒ぎになるのは目に見えている。渋谷の街に人気アイドルが堂々と歩くようなものだ。リナは勇者と共に伝説の存在だ、あれからまだ16年しか経っていない、やはり連れて行けない。
「義彦の意地悪~」
リナは口を膨らませて言う。
「リナの分からず屋」
売り言葉に買い言葉である、我ながら大人気ない…。でもよく考えると、リナの方が歳を取っているよな…。
何とかリナを説得して、一人で聖都に向かう。その代わりに、試験が終われば地球に連れて行く約束をさせられた。
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