前世の家族
改訂中
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食糧を馬車に乗せ、村見て回った。焼け落ちた村々、荒らされた畑、食糧を渡しても一時しのぎにしかならないかもしれない…。
義雄は仕方なく領地をもらったが資金的な基盤が出来ていれば喜んで引き受けただろう。
領内の住民達のしばらくの間の食糧が確保され。
バーク少佐達に「リナに何人も乗れないから」と言い留守番させ。
義雄はリナに乗り、領内を地図と見比べながら空からデジカメで写真を撮り回る。たまに地上に降りて探索しながら魔法で印と魔法陣を地面に刻んでいく。
そんな日が数日続いた、ある日。
昼前に仮役所に戻ってくると、人が大勢来ていた。
「あっ、閣下。ちょうど良いところに、この若者達は、町の青年なのですが、仕事が欲しいそうで…、町がこんな状況で仕事も家も無く、困っているそうです」
「俺は自警団の代表をやってるギムてもんだ。あんたが新しい男爵様か?」
おそらくこの集団の代表らしい、がっちりとした黒髪の中年ぐらいの男が話しかけてきた。
「ギム、男爵閣下に無礼だぞ。しっかり敬語で話せ」
サントスが怒鳴る。
「サントスいいよ。ギム、話やすい言葉でいい。僕が新しい男爵だ、話を聞こう」
「すまねぇな旦那、俺はこんな話し方しかできねぇからよ。それでよ、食い物を恵んでもらってばかりじゃ申しわけねぇからよ。何か俺に出来る事がねぇかって聞きに来たって訳よ」
「そうか…、丁度いい。ギム、何人集められる?」
「そうだなぁ、明日の朝までに300人てっとこか」
「わかった、金は払う。明日の朝までに出来るだけ集めてくれ、男女、種族は問わない。働けるものなら誰でも良い」
「…で、何をするんだ?それで集めるやつを考えるから教えてくれ」
義雄はデジカメの写真を元にPCで作った、新しい地図を広げサントスとギムに見せる。
「これは…、かなり正確な地図ですね」
サントスが感心しながら言う。
「まず、最初にここから、ここまで領地を囲むように石垣を作る」
サントスとギムは唖然としている。
ヨシオが言った壁の範囲は、ほぼレオン領の平地を囲むように石垣を作ると言う事だ。
「ホントにやるんですかい旦那…」
サントスはまだ固まっている。
「あぁ、これはモンスター除けの意味だ。勿論、戦争の時にも有効だ。だが1番大きいのは農民が安心して農地として平地を利用してもらう為だ」
「閣下、これを作るには莫大な予算が必要です。我々の予算では足りません」
「あぁ、サントスそれは俺が出す、安心しろ。それより人出が欲しい、何とかできないか?」
「わかったぜ、出来るだけ集めよう。だがこれ以上は農民も使わないと無理だぞ」
ギムが答える。
「しばらくは農業ができないが仕方ない。農地を焼かれた物を中心に集めてくれ。それでも足りなければ、周辺の村から集めよう。
それと…、サントス」
義雄は金貨が100枚入った袋をサントスに渡す。
「とりあえずこれを使って、足りなくなったら僕に言ってくれ。
……しばらく部屋で休む、領内を回って疲れたのでね。あと、今日は部屋に誰も通さないで、ゆっくり寝たいんだ」
「分かりました、閣下」
「ギム明日の朝、仮役所の前で待ってるよ。とりあえず明日は瓦礫の撤去だ」
義雄はリナと共に部屋に入る。
ギムは苦笑いしながら「お楽しみか」と言い、人を集めに外に行く。
サントスは黙ってその様子を見ていた。
部屋に入った義雄はリナに話しかける。
「リナ、すまないが留守を頼む」
リナは明らかに不満な表情になり。
「私も、ヨシヒコの故郷に行ってみたいです」
「落ち着いたら連れて行くよ、何かお土産買ってくるから今日は待っていてくれ」
「分かりました…、約束ですよ」
リナは渋々返事をする。
義雄はリュックを背負うと笑顔で「あぁ、約束するよ」と言うと、ステンレス板の魔法陣とは別の魔法陣を魔法で空中に作り、その中に消えた。
義雄が使うオリジナルの魔法は、この世界で使われている魔術と魔法陣の使い方が違う。
魔法陣は何かに物に書き発動させるのがこの世界の普通のやり方だ。
そもそも魔法陣の役割は、自分の魔力を流し不足分を自然界の魔力を吸収して発動させるのだが、魔法で魔法陣を作る発想がない。
ナバーラ篭城戦で使ったビームの魔法は、大量の魔力を使う魔術で。
義雄は魔法陣を魔法で空中に何層も作り、最後の魔法陣以外は自然界の魔力を吸収して次の魔法陣に送ってを繰り返し、最後の魔法陣で発動させてビームを放つ。
自然界の魔力を使うので魔力はほとんど消費しない、誰でも使えるわけではなく空中に魔法陣を書く正確なイメージと義雄が開発した魔法陣が必要である。
この世界では肉眼で見えない気体の認識が無い為、恐らく使えない魔法なのだ。教えれば可能性はあるが…。義雄が開発した、空中用の魔法陣か新しく開発した魔法陣が必要だ。
逆に地球の人間が魔術を覚えて同じ事をしようとしても、魔法で魔法陣を作るには熟練した魔力のコントロールが必要で簡単に出来ない。
それに魔法陣の義雄レベルの知識と義雄がPCで開発した空中用の魔法陣が必要なのだ。訓練と能力しだいで使えるようになるかも知れないが…、魔法を使う事すら難しいのだから無理に近い、勇者のような存在でなければ…。
PCのデータのほとんどは魔法陣の組み合わせで、その魔法陣の画き方が分からなければ魔法陣は完成しない。
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日本、村上家。
一はその日は祭日で休みだった。
普段なら部活の練習があるのだが、今日は練習に使っている体育館が他の部活の試合で1日使えないので休みになった。
一は飲み物を取りに台所に行くと祭日で仕事が休みの父がいた。
「一今日は部活じゃないのか?」
「今日は体育館が使えないから休みだよ」
一の父は「そうか、たまにはゆっくり休め」と言い親子の短い会話は終わった。
そう言うと冷蔵庫からペットボトルを取り出し台所から廊下に出る。
廊下を歩いていると後ろから、誰かが話しかけてきた。
「一昼間に家にいるなんて珍しいな、今日は休みかい?」
「うん、おじいちゃん休みだよ」
一は、後ろに振り向きおじいさんに返事をする。
一の家は、父が長男で父方のおじいちゃんと一緒に住んでいる。
「一、義雄君とはまだ連絡が着かないのか?」
「…うん、優がアメリカに問い合わせたみたいだけどダメみたいだ。片言だしね。
それにおばさんが義雄を連れていったスミスって人と一緒に来た、なんとかって警察の人に問い合わせてるみたいだよ」
おじいちゃんは何時も義雄の事を聞いてくる。
一度や二度なら幼馴染なのでわかるが、子供のころから何度も聞いてくるのだ。
一が聞いてもはぐらかされるだけで、どんな理由か教えてくれない。
一はおじいちゃんと別れると部屋に向かう。
「そういえば、あの頃からだな」
一は独り言をつぶやくと部屋のドアを開け部屋に入る。
○ ○
村上家、リビング。
一と別れたおじいさんは、リビングに戻り、ソファに座る。
「お父さん、まだ一に義雄君の事を聞いたのか」
「あぁ、すまんどうしても気になってな…」
「気持はわかるが、一にとってはただの幼馴染なんだ。一も何度も聞かれるから不思議に思ってるんだ」
「だが和彦…、義彦はお前と同じ大事な、息子なんだ」
「わかってるよ父さん。俺にとっても大事な弟だ。最初に打ち明けられた時は、この子何言ってんだ?と思ったけどな」
一の父は苦笑いをする。
「あの子は間違いない、義彦だ。死んだかあさんも言っていただろう」
「わかってるよ、父さん。今は疑っていない」
一の父が答えると突然、リビングの床が円形に光りだす。
「なんだ?……まさか義彦が言ってた、魔法陣なのか?」
魔法陣から見覚えがある少年が姿を現す。
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