ドラゴンガール②
5月1日改訂、グロ注意!。、
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彼女は見つけた!間違いない。
戦場の中を城に向って走る馬車の列。
彼が乗っているのはあの馬車だ。
周りの兵士達が彼の馬車に矢を射掛け、手に武器を持ち襲い掛かっている。
彼を再び失うなんて有り得ない。そんな事を私は…、
“許さない”
彼女は怒り、咆哮する。体内の魔力が少ない人は、それだけで気を失う。
彼女は、彼を守る為に炎を吐く。運悪く炎の直撃を受けた者は、一瞬で熱で蒸発し、消えて逝く。直撃を間逃れても、近くに居ただけで鎧が真っ赤に染まり溶け出す。勿論、その鎧を着た者は無事ではすまない。
彼を襲っていた人間たちは、炎に包まれ焼かれていく。そして戦場は、炎の地獄と化す。
彼女は彼の馬車が無事か確認する。周りの人間達は姿を消し、馬車は無事に走っている。
そして、御者席に居る彼と目が合う。前と同じ、私と同じ黒い髪に黒い瞳…。彼が私の名前を呼んだ。
彼女は安心すると力が抜けていく、疲労の限界なのだ…。
力尽き意識を失った、彼女は空中で竜化が解け、人の姿に戻りデント軍の上に落ちようとしている。
戦場の視線が全て彼女に集まる。
「不味い、バークさんあとは任せます」
義雄はまだ炎が残る、敵陣を走り出す。
バーク少佐は制止しようとするが間に合わない。
デント軍はドラゴンの襲撃を受けて、兵士は逃惑い収拾が付かない。
「馬鹿な、ドラゴンだと!しかも、あのドラゴンは勇者の…」
ヘラルド将軍は馬を操り、彼女の方に向う。
ルイス騎士団は、
「閣下、魔法陣の破壊、魔術師を無力かさせました」
若い騎士が報告する。
「敵の混乱に巻き込まれるな、固まって動け。あの娘を助け撤退する」
ルイス将軍も彼女を助けるべく進軍する。
義雄は今まで自分の力を意図的に隠してきた。力を使い誰かに見られ、疎まれ、利用され、裏切られて捨てられる。それが嫌だった。
今の力は地球でPCを使い研究した魔術なのだが、魔術師が研究データを見ても一部しか分からない。何故ならもっとも大事なのは、使い方なのだ。使い方が分からなければあのデータは使えない。
勇者の力は誰にもまね出来ない。元勇者の彼でさえも。だが今の彼の力は、まね出来る力なのだ。彼の理論と使う技量があれば。
ほとんどのデント兵が逃惑う中、まだ戦う意思を失わないデント兵が義雄に切りかかってきた。地球から持ってきた日本刀で切り捨てる。前世で地獄を見てきた義雄に迷いは無い。次々と義雄にデント兵が襲い掛かる。
「ちぃ、邪魔だ」
このままでは彼女が地面に叩き付けられてしまう、それ以前にデント兵に殺される
“間に合わない”義雄の脳裏によぎる。
(守りたい者を守れなくて何の為の力だ)
そして義雄は魔術を使う、詠唱も杖も使わず一瞬で発動される。微妙な魔力の流れを見ていた者がこの戦乱の中に居たとしたら驚くだろう。義雄がほとんど魔力を使っていない事に。
義雄が放った光の柱は、あたりを包み込む。
光の柱に包まれたデント兵数千人は、一瞬で消えて無くなってしまった。そして義雄は魔術で飛び、彼女を受け止め、さっきまで光に包まれていた所に降り立つ。
ヘラルド将軍は、彼女に落ちる方に向っていたがいきなり目の前に光の柱が横切った。馬が倒れ、地面に叩きつけられる。ヘラルド将軍は、立ち上がり馬を見ると馬の頭部が消えていた…。
訳が分からず、回りを見渡すとそこに居るはずの兵士たちが消えていた。そして、ドラゴンの娘を抱きかかえる男が立っている。
「貴様が…貴様がやったのか」
ヘラルド将軍は剣を抜き、義雄に向って構える。勿論、ヘラルド将軍は義雄が勇者だった事など知らない。
「ヘラルドか…」
義雄はヘラルド将軍の方に冷たい視線を向ける。
「敵の将軍がここに居るぞ、討ち取れ」
未透視の良くなった、戦場の一角にヘラルドを見つけた。ルイス騎士団の騎士が叫ぶ、そこにルイス騎士団が押し寄せる。
「クッ…この仇はとる」
ヘラルド将軍は義雄に言い放つと、近くに主人の居なくなった馬を見つけ、乗り逃げる。
ルイス騎士団が追いかける。
「深追いはするな、まだ敵の兵数の方が多い事を忘れるな」
ルイス将軍が部下に指示を出す、ルイス将軍は義雄に歩み寄る。
「ヨシオ、君は何者なのだ…」
「ただの商人ですよ」
彼女を大事に抱きかかえたまま、義雄は笑顔で答える。
神聖デント王国軍は魔法陣の攻防とドラゴンと光の柱により。3分の1の兵が数十分の間に死に総崩れになり、生き残った兵たちも逃げ出し。ナバーラ王城の篭城戦は、思わぬ形で幕を閉じた。
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