見間違い
今日は短めホラーです!
見間違い、ってあるじゃないですか。
パッと見たものが全然違うものに見える~みたいな。
夜とか、視界が悪い所とかだと、余計にそういうの多いっていうか。私の場合なんですけど。
バイト帰りとか、夜道を一人で歩く時はイヤホンをしないようにして帰るんですね。ほら、最近物騒だから、万が一にでも付き纏いとかあった時に気付けるように。
でも深夜の住宅街ってすっごく静かなんですよ。そもそも人が全然通らないというか。
だからかなぁ。余計に周りの物陰とか物音とかに敏感になっちゃって。
少し前なんて道路の真ん中に落ちてた手袋が人の手に見えたりして飛び跳ねちゃったりして。
まあでも一度驚いた後で目を凝らしてみると案の定と言いますか、全然違うもので。手袋みたいに。
最近は夏休み前でバイト詰め込み過ぎて疲れてるのもあるんでしょうね。そういうのちょっと多いんです。
で、見間違いを繰り返している内にちょっと思ったんですよね。
「どっちが見間違いなのかな」って。
実は私が見間違いだと思ってた方が真実で、二度見した後の姿は何かに擬態した姿だったり、一瞬見た時の怖いものが消えた後の光景だったりしたら……って考えたりして。
あ、今ちょっとゾワッとしました?
佐藤先輩こういう話好きでしょ? だから先輩の意見も聞きたいなと思ったんですよ。
いや、本当にその可能性を信じている訳ではないんですけど。ただ、もし先輩がこういう話を考えるとしたら、どうブラッシュアップするのかなって。
あ、先輩の意見を聞く前に、もう少しだけ話をさせてください。
見間違いが増えたって話したじゃないですか。
一週間くらい前からなんですけど、髪の長い女の人――ちょうど私や先輩くらいの人の姿を見間違えるようになったんです。
最初は帰りに通る深夜の公園でした。近所の公園、敷地を囲むように細い木が並んでるんですけど、その一つがすっごく細長い女の人に見えて。風に煽られて左右にゆらゆら大きく揺れるんですよね。
で、思わず顔を逸らしたんです。いや見間違いだろうな、とは思ったんですけどやっぱり怖くて。
ホラーとかだと恐怖の対象が消えたと思ったらすぐ真後ろに……とかセオリーすぎるじゃないですか。
で、視線だけでもう一度同じ場所を見たんですけど、やっぱりそこには木が並んでいるだけでした。
勿論背後にもいませんでしたよ。
ただ、翌日以降も見掛けるようになったんです。
ほら、印象深く残っているものって忘れようとする方が変に記憶に残ったり、意識しちゃったりするじゃないですか。そんな感じです。
公園から少し進んだ、電柱と塀の隙間の影が女の人に見えたり。
その次の日は更に先の電柱に、朝を待たずに捨てられたゴミ袋の中身が女の人の首に見えたり。もう何でもありですよ。
見間違えた一瞬は驚くんですけど、まあ数日も続けば「ああ、またか」って変な耐性がついたりもして、取り乱す回数も減りました。
ただ気掛かりなのはいないはずの女の人を見る場所が徐々に私の家に近づいている事なんですよね。
四日前は家と同じ通りのアパートの窓に見えて、三日前はついに見なくなったなって思って家のマンションに着いた時、視界のすぐ隅が動いたような気がして。
でもそれっきりです。
一昨日も昨日も女の人の姿は見てません。
まあ一昨日は土曜日で丁度友達の家に泊まる日だったし、昨日はお昼まで友達の家で寝坊して、遊んでから帰ったので。夕方には家に着いていたんですよね。
いい気分転換になったし、疲労も回復したから変な思い込みや不安もなくなったのかなぁ、なんて思ったり。
けど、まだちょっと不安はあるんですよね~。
昨日まで楽しくわいわいしてたから急にまた静かな道を一人で通らないといけないって思うと気が重くて。
だからよかったら今日、泊まりに来ませんか?
バイトが終わるまで待たせちゃいますけど、コーヒーと軽食なら私のまかない分譲るんで。
ほら、こういうのって誰かといたら怖くなくなったりするじゃないですか。
というか寧ろ先輩は、「この辺りのものは男の子の幽霊に見えそう」とかノリノリで言い出しそうだけど。
……あ、もしかしてただお泊り会がしたいだけってバレました?
いやまぁ、怪談話にこじつけてお願いしたら頷いてくれるかなって思ったのは事実ですけど……いーじゃないですか! 久しぶりに先輩とも遊びたいですよ~!
てか先輩。さっきからめっちゃ静かじゃないですか?
いやお前が話し過ぎなんだろってね、アハハ!
あ、電話だ。ちょっと待ってくださいね。
え?
『佐藤先輩』?
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