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7.
大の字のまま天井を眺めている。
埃っぽい空気と、乱雑に積まれた本。
そこは『徽』の私室、或いは来客用の応接室。もはや応接室としての体を保ってはいないが、当初の用途はそれの筈だった。
「……なんだかなぁ」
独り言、である。
人とのお喋りが大好きな彼女にとって、自分一人で言葉を落とすというのは珍しい。
少しばかりの、思考の整頓。僅かばかりの、時間の余白。
『徽』は、その隙間に未来を想う事にした。
「目論見は大体、成功してる。考えてる事も、思い通りにいった。四十五番目の彼も、割り込みで合格させてあげられた」
──先日に、公認となり。
数日と経たずに落命した、少年の事だろう。
『徽』は名前を覚えない。個人の名前を覚えていたらキリがないのだと語ったのは、いつの『剣』に対してか。
「結局、何も変わらないんだな。私は……何をやったら良いのかな」
ただ零れていく言葉の端には、どこか諦めの色があった。
正確には、不老であって不死ではない。
彼女にだって、寿命というものはある。
それがいつなのかも、理解はしていた。
残り、六千年。
それが彼女の命だった。




