謎の夢
目を覚ました場所は、見覚えのない部屋。周囲には不気味な家具が並び、謎の男の子から受け取った一枚の写真。その写真が、主人公を未知の世界へと引き込んでいく。何もわからないまま、現実と夢の間で揺れ動く主人公。すべてが謎に包まれたまま、物語は進んでいく。
目が覚めると、見慣れないベッドの上だった。
「あれ……? ここはどこだ?」
慌てて飛び起きると、自分が寝ていた場所がまったく知らない部屋だと気づく。
そのとき、目の前で俺の様子を見て笑っている男の子がいた。
「ここは、どこかな?」と尋ねると、男の子は何も言わず、ただ微笑んで一枚の写真を差し出してきた。
受け取った写真を覗き込む。
地面に落ちた手袋がピースサインの形で直立している。
だが、指の先は三本折れており、どこか不気味な印象を与えていた。
「なにこれ?」と写真を持ったまま顔を上げると、男の子の姿はもうなかった。
「え……どこ行ったんだ?」
慌てて周囲を見渡すが、誰もいない。
ベッドから降りると、店員らしき人物が目に入った。
「すみません、ここはどこですか?」と声をかけると、店員は少し驚いた顔で言った。
「ここは家具屋ですよ。看板見て入って来たんじゃないのか?」
「え?」
急いで店の外に出ると、そこには平屋の一軒家が広がり、外には確かに「家具屋」と書かれた看板が立っていた。
俺はなぜここにいるのか理解できなかった。
店内に戻ると、見渡す限り新品の家具がずらりと並んでいた。
ベッド、テーブル、椅子……さまざまな木製の家具が、整然と配置されている。
「素敵な家具ですね。木の香りがして、すごく落ち着きます。」
そう声をかけると、店員は自慢げに笑った。
「お、わかるか。この香り。この家具、全部俺と息子で作ったんだ。ゆっくり見ていってくれ。」
「へぇ、そうなんですね。」
店内を歩き回っていると、店員がふと俺の手元に気づいた。
「その写真、なんだ?」
「ここで、男の子からもらったんです。」
そう答えると、店員は眉をひそめて言った。
「男の子? この店、今は俺一人でやってるんだよ。誰もいないはずだ。」
その言葉に鳥肌が立つ。
「え……だって。」
全身に寒気を感じながら、写真を再び見つめる。
「この写真、見覚えありませんか?」と店員に見せると、彼は無表情のまま首をかしげた。
「なんだこれは? あんたの趣味か?」と冗談めかして言う。
「違います。」ときっぱり答えると、店員は真面目な顔で頷いた。
しばらく沈黙が流れたあと、店員が提案した。
「まあ、考えても分からんし、何か飲み物でもどうだ?」
「え、いいんですか?」
「もちろん。」
笑顔を見せた店員は家の奥へと歩いていった。
俺は言われた通り、白い丸いテーブルの前に座る。
大・中・小と並ぶ三脚の椅子が、妙に気になった。
家族のために揃えたのだろうか——そう思い、自分を納得させた。
奥の方で火をつける音が聞こえ、やがて店員が戻ってきた。
「そういえばあの写真、指が三本折れてるだろ? だからスリー。残り二本でピース。つまりスリーピースってわけだ。」
そう言って笑う。
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、ピースサインで直立してるしな。折れてる指が三本……スリーピースだろ?」
店員は自分の冗談に満足そうに笑っている。
俺は納得できないまま、黙ってコーヒーを受け取った。
「美味しい。」
一口すするたび、なぜか懐かしい気持ちが込み上げてくる。
「あれ……?」と店員を見上げた瞬間、記憶が蘇った。
この店に、来たことがある。
この椅子で麦茶を飲んだ、あの男の子と——。
思考がぐるぐると混乱する。
気をまぎらわそうと、「息子さんは今日お休みですか?」と訊ねると、店員は少し悲しげな顔をした。
「息子は、十七年前に亡くなったんだ。」
静かな声が続く。
「地震で瓦礫に埋もれてな。生きてたら、お前さんより二つ上くらいだろう。」
言葉が胸に重く響いた。
「そうだったんですね……。」
沈黙が流れ、店員は気まずそうに笑った。
「しんみりさせちまったな。悪い。ほら、謎解きの続きだ。」
スリーピース——あの言葉の意味は何だ?
そして、なぜ俺はここに連れてこられたのか。
考えても仕方ない。
「店内を見てもいいですか?」と尋ねると、店員は快く頷いた。
「おう、ゆっくり見ていってくれ。」
再び店内を歩き回り、最初に目を覚ましたベッドに戻る。
腰を掛け、もう一度写真を見つめた。
「店員が言ってたスリーピース……スリーピー? 眠い?」
そうかもしれない、と言葉が頭の中をぐるぐる回る。
「でも、なんで家具屋なんだ? 自分の部屋のベッドで寝てたんじゃ……。」
考え込むうちに、疲れた体をベッドに預けた。
その瞬間、枕元で何かが落ちる音がした。
見ると、そこには一枚の紙が落ちている。
表にはQRコードの一部、裏には不思議な数字が書かれていた。
「QRコード? そして、この数字は……?」
37.921179, 139.210791。
その数字の意味は分からない。
再び目を閉じると、部屋の景色が一変した。
目を開けると、いつもの自分の部屋が広がっていた。
「戻ってきた……! 夢だったのか?」
そう呟きながら辺りを見回すが、あの紙はどこにも見当たらない。
ほっとしたのも束の間、枕元を探ると、そこに——夢で見たQRコードの一部と数字が書かれた紙があった。
「……なんで? あれは夢じゃなかったのか。」
怖くなった俺は、紙を鍵のかかる机にしまった。
もう、思い出さないように。
現実と夢が交錯する中で、主人公が求める答えは見つかるのか。謎めいた写真、意味深な言葉、そして静かな店の中に隠された秘密とは。すべてが謎に包まれたまま、物語はあなたの想像力に委ねられる。




