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代神栞  作者: 神代栞那
芽生え始めた絆
9/10

生徒会

(生徒会室で)


可惜かっし、後で先輩に無茶なことしないでよね?」

雪子が左側のポニーテールをつけた女の子に向かって心配そうに言った。


「わかってるわかってる、ゆきこうるさいなあ?」


「はあ?!ちゃんと話してやってるんだから跪いて感謝するのが筋だろ、それってなんだその態度!」


「怒らないで、雪子ちゃん、お姉ちゃんはそんなつもりじゃないんだから」


だらりとした声を出したのは右側のポニーテールをつけた女の子で、顔はめちゃくちゃ精緻で、弱々しくてだらしない口調が可愛さを全開させている。


「やははっ、つまりそういうことよ…」

左侧のサイドポニーテールの女の子は片手で頭を抱えながら楽しそうに笑った。


「お姉さん、見てよ、可惜が!」

雪子はすぐさま振り返り、生徒会长専用の椅子に座っている輝夜に助けを求めた。


「それはいったん置いといて」

輝夜は頭を両手に乗せ、深い思慮があるかのように言った、

「まずは、私たち学生会の威厳を見せなきゃね!」


「いったん置いといてってなによ…」

雪子はうつむいた。


「私たちの生徒会に威厳あったっけ? やはは~」

左ポニーテールの女の子はウキウキしながら片手を挙げた、

「でも賛成!」


「可怜ちゃん、あとでちょっと回避してくれない?」


そんな可怜の様子を見て、雪子は危機感を覚え、それに彼女も後輩なんだから!


「はふ?」

可怜は可愛らしく首をかしげた。


「で、何か良いアイディアある?」


「ハイハイハイ!」


「可惜は却下」


「(ガクッ)」


可惜のテンションdown!


「忘川さん、何か良いアイディアある?」

輝夜はずっと静かに座っている恋に話を振った。


彼女は少し躊躇いながら自分の考えを述べると、それを聞いた輝夜は妖しく笑った。


「採用!」


(乙女喰の視点)


なぜ雪子が自分で生徒会室へ来いと要求したのか。喰が思いついた可能性は一つだけだ――そこで『能力』やあの『任務』について話すためだ。


だがわざわざ生徒会室とは? なぜ他の場所じゃない? ということは、生徒会にも能力者のメンバーがいるはずで、よほど高い確率でそれが有瀬会長だろう。


能力者ではないメンバーはもういないよな? だとすれば、忘川さんも生徒会にいるはずだ。でなければ、全校の中で俺一人だけに通知するというわけがない。


喰が生徒会室の前に来ると、足を止めた。一般的な状況なら、普通にノックするのが最善だろう。


だがそうすると、どうにも主導権を失った気がする。


室内には三人いるはずだ。三人を驚かせてやろうと、深く息を吸い込み、すぐさまドアノブを握って押し開けた。


「Ciallo~!」張り切った声が響き、忘れずにポーズを決めつつ。


眼前に広がったのは、動きを止めた三人だった。


雪子と恋がそれぞれ机の両端に位置し、その机は現在斜めになっている。どうやら二人はその机を移動している最中らしい。


一方の輝夜は傍らの椅子に座り、手で頬杖をつき、まさに呆然とした顔でこちらを向いている。


「せん、先輩?」


「ねえ、乙女さん?」

輝夜の呆けた表情が消え、黒い笑みを浮かべて言った。

「ノックというマナーを知らなかったわけ?」


「ひぃっ——!」会長ってこんなに怖かったっけ?


「やはっ、この先輩面白い!」


明るい声が右側から響いた。ようやく喰は気づいた――ドアの右側に瓜二つの少女が二人、立っていたのだ。


え、双子?!カワイイ!!まさかこんな所で美少女双子ちゃんに出会うなんて!


「はあ…」

輝夜が溜息を交え、諦めたように言った。

「カレン」


「は~い」

右側のポニーテール双子がだるそうな声で応えながら、喰の面前へ歩み寄る。


「先輩、ごめんなさい~」

そう言いながら、大きく開いた片手を喰に向けて差し出す。


「?」


「かっし」


「え?」


少女の言葉が終わる途端、喰の両足が床から離れた。


まるで誰かに押し出されるように、身体が浮きながら後ろへ倒れ込んだ。お尻が床にドスンと叩きつけられた。


「やは~、私たちも準備必要だしね」左側のポニーテールの双子が悪戯っぽく笑った。「先輩一旦退避しててよ~」そう言い切るとドアを閉めた。


喰は立ち上がり、お尻をぽんぽんと叩いた。それほど痛くない。


周囲を見回す――幸いこの時間の廊下には誰もいない。


周囲を見回す――幸いこの時間の廊下には誰もいない。


もし他の生徒に生徒会室の前から吹き飛ばされるところを見られたら、どんな噂を流されるか分かったものではない。


さっきのは何だ?あのだるそうなオーラの双子は接触していなかったのに、衝撃を受けて後ろへ転んだ。


(これも念動力?いや、念動力で操られる感覚とは違う。)


よりむしろ...斥力だ。


それにこの双子は中にいる全員の面前であろうと能力を使った。むしろ会長の指示だった可能性が高い。


ということは、会長だけでなくもう一人の双子も能力者なのか?


……そういえば「カッシ」ってなに?


(有瀬輝夜の視点)


椅子に座った輝夜は足を組み、手で頬杖をつきながら先ほどの出来事を回想していた。


まさか乙女喰さんがそんな人だとは。


あの非常識なドア開け方に、「しあ」とか訳のわからない叫び。


同級生として全く知らなかった。そう思うと自然に足を組み替えた。


「こんな会長はまさに氷山美人ですね…」

と可惜が思わず漏らした

「元々美人でしょう?」

「やはは、本人がそう言うのはちょっと…」

「この先輩ったら……お姉さん、準備オッケーだよ~」

「よろしい」

輝夜はかすかに笑みを浮かべ、

「可怜」

「はい~」

と可怜が応えながらドアを開けた。だが、ドアの外には誰もいない。


首を左右に伸ばして覗き込み、ぼんやりと輝夜の方に向き直って言った。

「いない」


「え?何がいないです?」

「先輩が」

「……はあ?」

輝夜の顔には震撼と疑念が刻まれていた。


「やはっ、この先輩まさかこのまま帰っちゃった?じゃあわたしも退勤できるね?」

可惜はいつの間にか恋に寄りかかり漫画を読みふけっている。


「お姉さん、ご心配なく!妹であるアタシが見て参ります!」


雪子が提案するとすぐにドアへ駆け出した。先輩が何を考えているかは分からないが、これ以上姉ちゃんを怒らせるわけにはいかないのだ 。


しばらくして、戻ってきた雪子は急いでドアを開けようとはせず、そっと隙間を作って首だけ出した。


羞恥で顔を赤らめながら、か細い声でひとこと放った

「シアロー~」


誰にも気づかれることなく、まさかこんなことをするのにこれほどの勇気が必要だとは。


少なくとも雪子はあんな大声では叫べない。


深く息を吸い込み、勢いよくドアを押し開けると、輝夜の面前へ進み出て兵士のように直立し敬礼した。


「報告します。アタシは先輩の教室へ行き、クラスメイトから聞いた話では、先輩は既に藍先輩と帰宅したようです」


「……はあ?」

輝夜の瞼がぴくっと痙攣した。


「やっはぁ~退勤退勤!」

可惜は漫画本をぱたんと閉じた。


「え?も、もう帰るんですか?」

何もできなかった気がして、恋は少し物足りなさそうだ。


「さすが先輩らしいやり口ですね……」

雪子は憮然として言った。こんなことをされても、相手が先輩なら納得できると彼女は思う。

「仕方ない。お姉さん、アタシたちも帰りましょうか?」


「ふふっ……」


普通ならこんな状況で帰宅を選ぶ者がいるか? ありえないでしょ!ましてやこの私が生徒会長として要求したというのに、勝手に帰るだと?


「ふふふ……」

輝夜の笑みがますます深まる、

「My Lovely Fantasma」(私が為に生まれし物語)


(乙女喰の視点)


これまでの何百という下校時、喰と逸雲に会話が少ないことはあっても、今回ばかりは何故か落ち着かなかった。


「逸雲、何か悩み事か?」


「…そうね」

逸雲が足を止めた。遠くを見つめるような瞳で、

「喰、恋って何だと思う?」


一体どういう展開だ? 喰の心には疑問しかなかった。それでも長い逸雲との付き合いが即座の答えを導いた。


「逸雲、下校途中の告白なんて認めないぞ」

喰は人差し指を振りながら、当然のように言い放った

「告白するなら放課後の無人の教室でロマンチックにやるべきだろ?屋上だって悪くない、うんうん…でも古典でいくなら机の中のラブレターだな~」

そう言いながら、さっきまで振っていた手で顎を撫でて幾度も頷いた。


「どうやら諦めるしかないようね~」

逸雲は気楽な表情で喰に寄り、彼の空いている片手を掴む。両手でそれを包み込み、曖昧な眼差しでじっと喰の瞳を見つめ、薄く笑って、

「これでもまだロマンチックじゃ足りないかしら?」


「……ぐっ」

これは何の殺傷力だ!? 甘い痛撃が心臓を貫くのを喰は感じ、目をそらし逸雲の手を振りほどき、両手をあげて降伏した

「俺の負けた」


「ふふ~」

逸雲は嬉しそうに口元を手で覆って小さく笑った。


喰は力を抜いて手を下ろした。彼の目には、いつもの二人の距離感が戻ったように映っていた。


「そういえば今朝、私の机にラブレターが入ってたんだよ?」

逸雲が思い出したような口調で言う。


「ふん~」こんなのもう慣例じゃないか、

「そのことで悩んでたのか?」


「当然違うよ」

逸雲は胸の前で人差し指をクロスして否定

「あんたを祝福する方法を考えてたの」


「告白成功してないようだ、もう祝福とはな」

喰は豪快に笑おうと後頭部を掻いたが、腹部に走った痛みで顔が歪んだ。間違いない、今の逸雲の怒り弾だ。


「フラれた覚えはないんだけどね」

逸雲は拳を引っ込めた。


「逸雲、暴力は良くないって…」

喰は両手でお腹を押さえた。


「はあ…」

逸雲は呆れたように息をつき、興味深そうな口調で続けた、

「雪子ちゃんとのこと、祝福してあげるって話よ」


自分と雪子に何があった? 喰には見当もつかない。


だが逸雲がようやく本題を切り出したので、彼は即座に普段の調子を取り戻す。


元々逸雲の攻撃は痛くなかった、さっきのはアドリブでごまかしただけだ。


そう言おうとした瞬間――ほんの一瞬だが、電撃にでも打たれたかと思う衝撃が身体を走り、その場に立ちすくんだ。そして不意に振り向くと、学校の方向を見た。


「逸雲、学校に戻らなきゃいけないみたいだ」

言い終わらないうちに、喰の身体が先へ走り出す。


突然逃げ出した彼を、追いかけようにも足が竦んだ逸雲は呆然と背中を見送るしかなく、呆けたように呟いた

「はぁ?」


……


(いったい何が起きたのか?)


自分の身体が独りでに動き、来た道を逆戻りして学校へ向かう。己には何もできず、干渉不能の思考だけが唯一残されたものだった。


ただ以前のループが本当だったか確かめたかっただけなのに、この思いがけない事態は何だ?


確かなのは誰かに能力をかけられたということ、そしておそらく生徒会のメンバーだろうということ。


多分生徒会室に戻らせるための行動だったのだろう? 問題はこれがいったい何の能力か……という点だ。


もし生徒会の誰かがわざわざ追いかけて能力をかけたのなら、あまりに不自然すぎる。来たなら口頭で生徒会室へ来いと言えばいいのに?


この可能性は除外できるだろう。


そう考えると、その相手は「遠隔操作」の能力者に違いない。どうやら「念動力」「能力借用」に続く破格の新能力の登場らしい…


喰は己の無力さを痛感した。誰もがこんなに規格外の能力を持つなら、この「無能」でいったい何を守れるのか?


愛する伊さえ守れない。


というより、むしろ伊に守られているんじゃないか?


「はあ……」と力なくため息を零した。


……


生徒会室前に辿り着いた時、ようやく身体の制御権を取り戻した。意思は明らかだ。選択肢は一つしかない――この扉を開けることだ。


前回の教訓はあるが、やはり手をこまねいてはいられない。深く息を吸い込み、ドアノブを握る。


軽快で速いノック音が響くと、輝夜の顔に妖しい笑みが浮かんだ。ゆっくりと言葉を紡ぐ、

「お掛けなさい」


決して臆しているわけじゃない。会長に良い印象を持ってもらいたいだけだ。第一印象は大切だと、心の中で自分に言い聞かせながらドアを押した。


……よく考えれば、会長とは同級生だ。第一印象も何もないはずなのに?


「お邪魔します」

喰がそう言いながら足を踏み入れた瞬間、左ポニーテールの双子が輝夜の面前に歩み寄り、掌を喰に向けて大きく広げた。

「かれん」


「ッ!」


喰は理不尽な引力に身体が引き寄せられるのを感じた。


その双子めがけて飛ぶ途中で力が消え、双子は素早く輝夜の傍へ戻って直立。


一方の喰は惰性で片膝を立て、目前には輝夜の交差した脚とかわいい革靴が視界を埋めた。


「ふふっ~」

輝夜はためらいなく前足首で喰の顎を掬い上げる。


一体これは何!?椅子に座った輝夜は、さも慣れたように手で頭を支え、妖しい笑みと侮蔑の眼差しで、上から喰を見下ろしていた。


まさに女王そのものだ!


「あわわわわ~~」

恋は口を両手で押さえ、小さく興奮した声を漏らした。


そんなぼんやりとした表情を見て、輝夜は達成感を覚え、より一層暗く笑った。


「踏んで!」

喰はもはや内心の衝動を抑えきれなかった。


「!?」

右ポニーテールの双子を除く全員が驚愕した。


「すみません乙女さん、さっき私の耳が幻听を疑いましたが、もう一度言ってくれませんか?」


「会長はまさにドSですね、俺にもう一度繰り返させようだなんて」

喰は右手で直接、輝夜が自分のあごに引っ掛けていた靴を掴んだ。


突然の接触に輝夜は身心ともに震わせ、彼女の顔からはもはや女王の面影はなく、代わりに紅潮と驚きが浮かんでいた。


「踏んで!」


「はぁ――!??」

雪子は我に返るとすぐに喰の元へ駆け寄り、輝夜の靴を掴んでいた彼の手を払いのけた。

「先輩、何てことするんですか!この変態バカ変態!」


「えっ……変態を二回言った?」


「そんなことどうでもいいよ!」

雪子は喰の手を掴み、恋が座っているソファの反対側に連れて行った。


「やはは~この先輩面白いね~」

輝夜の隣に立っている左ポニーテールの双子は笑いをこぼした。


「先輩バカ変態変態」

雪子はむっとしてそう罵った。


「雪子ちゃん、それ順番変えただけじゃない?」


「あはは……」

目の前に座った喰を見て、恋は気まずそうに笑うと、可愛らしくジェスチャーを交えて、

「乙女さん、ちゃろ~」


「え~それは真似しなくていいよ、忘川さん」


それは喰の思いつきに過ぎなかったのに、相手がすぐに活用して挨拶してきたので、少し恥ずかしさを感じた。


その言葉を聞いた恋は肩を落とし、意外にも少しがっかりしていた。


「先輩、先輩」

雪子は喰の服を引っ張り、無理やり自分に向かせながらいたずらっぽく笑った。

「アタシも別にやりたいわけじゃないけど、もし先輩がどうしても踏まれてほしいなら、お願いしてみてもいいんですよ~♪」


「会長?しっかりして~」

左ポニーテールの双子が輝夜の目の前で手を振り、フリーズしていた輝夜をようやく正気に戻した。


「そういえば、夜の時間帯に演じられるコントもなかなか面白いですね」


喰は有所思うところがあるように言いながら、生徒会室を見回し、ドアの傍でうつらうつらしている可愛らしい生物に気づいた。


輝夜は首を振り、組んだ脚を組み直した。


明明は彼に自分の威厳を認識させたかったのに、今ではむしろ自分が一手遅れを取ったような気分だった。


「先輩、それしか言えないの?もう騙されないんだから!」

「新しいの考えなきゃね~」

「そこじゃないってば!」


自分の妹がそんな変態と良い関係を築いているのを見て、輝夜はむしゃくしゃとした気分になり、心がむずむずした。


彼女は軽く拳を握り口元で数回咳払いをすると、一同の視線が再び彼女に集まった――もちろん、右ポニーテールの双子を除いて。


「では変態さん、ここに来た理由は分かっているのかしら?」


「あのゲームの件だな?」


やはり単刀直入に本題に入ろう。しかし会長は本当に露骨に変態呼ばわりしてきたな。


「よろしい」

輝夜はほころんだ笑みを浮かべてうなずいた。

「My Lovely Fantasma」


「!」えっ?何あれ?


輝夜の手の中に本と羽ペンが突然現れ、彼女はその上に何かを書きつけると、喰を見上げた。


「では乙女喰さん、あなたの能力は何ですか?」


「能力はない」


な……!?自分が抑制なくためらわず真実を口走ってしまうなんて。


本来こうした質問には完璧な答えを用意していたのに、相手はあらゆる嘘の可能性を断ち切っていた。


「え?先輩の能力って触れたものを粉々にするやつじゃないの?」


雪子が疑問を発したが、喰は依然として輝夜を緊緊と見つめ続けている。


「ふ~ん?」輝夜は眉をひそめて「では代償は?」


「代償もない」


まったくの計算違いだ。相手が「遠隔操作」の能力を持つ可能性を考慮すべきだった。


「どうやら忘川さんとは状況が異なるようですね。でも、どうして?」


「俺は特殊な存在だ。少なくともあの悪魔猫はそう言っていた」


「悪魔猫?」左ポニーテールの双子が即座に疑問を口にした。


まさかこれまで全て話してしまうとは。強制的に質問に答えさせられているのか?無力感が喰の内心を襲った。


……待て、忘川さんと状況が違うってどういう意味だ?


「ふ~ん?」


輝夜が本を閉じると、その瞬間に本と羽ペンは彼女の手の中から消え、喰は喉を締め付けられていたような緊張感がようやく緩和されるのを感じた。


「申し訳ございませんね、乙女さん。このような方法で能力を確認してしまいまして」


「い、いいえ、元より隠すつもりはなかったので」


「ふうん~?そうでしたか」


「あはは…」


喰は気まずそうに笑うしかなかった。彼はこの生徒会長に完全に見透かされているような気がした。


「雪子からあの密室でのお話を聞きました。とても興味深いものでした。ぜひ早急にお話を伺いたいところですが、まずは…」

そう言うと輝夜は傍らにいる左ポニーテールの双子に目配せをした。


「やはは~この先輩本当に面白いね~」


左ポニーテールの双子はぴょんぴょん跳ねながら輝夜の元を離れ、ドアの傍でうつらうつらしていたもう一人の双子の元へと向かった。


「わたしの名前は柔雪可惜じゅうせつ かっしです~」活発な声に続いて、慵懶な声がすぐに続く

「可怜の名前は宇佐川可怜うさがわ かれんです~」可怜は片手の拳でぼんやりとした目をこすりながら、「……先輩の見ての通り、可怜たちは双子です」

「これから先輩、わたしたちを見間違えないようにしてくださいね~♪」


「お、おぉ…」

そんな可愛らしい掛け合いの自己紹介に、喰は思わず「おふたりとも、息ぴったりだね?」


「だって双子ですもの」

可惜と可怜は互いの手を握り合い、

「ね~♪」


この学園にこんな可愛い双子がいたなんて、以前は全く知らなかった。


とはいえ、元々こういったことに注目していなかったからだ。


可惜は少しお茶目で活発だし、可怜はほんわかしていてとても可愛い。それに二人とも生徒会のメンバーだ。


そう考えると、きっとこの学園ではかなりの人気を誇っているに違いない。


「先輩が気にしてるみたいだから言うね、可怜とお姉ちゃんの名字が違うのは、両親が双子を授かって嬉しくて、それぞれ両親の名字をもらったから。実は家族仲すごくいいんだよ」


「双子の絆って名字が違うくらいで簡単に切れるものじゃないだろうし、俺はそうは思わないな」

喰は感じたままをそう口にした。


「え?あ、ありがとう先輩…」そんな風に言われるのは初めてで、可怜は少し戸惑っていた。


「かれん」

可惜の言葉と同時に、喰は再び引力で空中へ吸い上げられ、やはり片膝をつく姿勢に。可惜はしゃがみ込むように身をかがめた。

「ただの変態先輩かと思ったのに、まさかね…可惜の好感度アップ!」


「ついでに聞くけど、好感度アップすると何か特典あるの?」


「やはは…」

可惜は人差し指を唇に当てて考え、やがて良い案を思いついたように指を立てた。「あ!踏んであげるかも?」


「お姉ちゃん、変態とはいえ相手は先輩ですよ、踏んじゃダメ」

可怜が喰の味方をしているのか貶しているのか、たぶん本人にも分からない。


「やはは~それじゃあ楽しみにしてるよ」

喰は可惜の口調を真似て体をパンと叩きながら立ち上がり、可惜も一緒に起き上がった。


「ちょ、ちょっと先輩?!」


「さっきのはお前の能力なの?」

なぜ背後からの抗議の声を無視するのか、喰自身も理由が分からない。


「そうです、わたしの能力は『可怜』です。細かく説明するのは面倒なので、要は自身で引力を発生させる能力ですね」


「可怜の能力は『可惜』で、斥力です~」


「道理で…」

これで先ほどの出来事も説明がつく。

「ところで、能力発動には相手の名前を呼ぶ必要があるの?」


「そうなの、本当に面倒ですよ。それだけじゃなく、わたしと可怜は感覚も共有してるんです」

そう言いながら可惜は手を伸ばして可怜の鼻をちょんとつまんだ。


「お前たちの能力って連携しすぎじゃない?」


「だって双子ですもの、ね~♪」


これはきっと悪魔猫がわざと仕組んだことに違いない。そうでなければ、こんな偶然が起きるはずがない。


可惜と可怜はそれぞれ引力と斥力を手に入れた。ということは、伊の念動力ってのはとんでもなく逆天な能力なんじゃないか?


だって、この能力一つだけで、引力と斥力の両方を含んでいるんだから。


「では、次」


輝夜はさも当然のように宣告すると、可惜は可怜の手を引いてぴょんぴょん跳ねながら輝夜の傍へ。喰も雪子の隣に戻って座った。


「先輩先輩、可怜ちゃん可愛いでしょ?」座るとすぐに雪子が話しかけてきた。


「宇佐川ちゃんだけじゃなく、柔雪ちゃんも文句のつけようがないほど可愛いな…」

喰は顎に手を当てながら事実を述べた。


「ふん!」


「?」


どうして顔をそむけたんだ?自分から聞いたくせに。まあいい、今はそこを考えるのはやめよう。


双子の紹介が終わったなら、次は忘川さんの番だろうな。何せ、雪子は自己紹介が必要な感じじゃないし…


喰は確認するように恋を見た。彼女は可愛らしくウインクさえしていて、どうやら全然知らないようだ。


(仕方ない、ここは自分から促すしかない。)


喰が話し始めようとしたその瞬間、この部屋にあるはずのない音が響いた。


「あら、失礼。もう僕の番でしたか?」


低く響くような、男の声とわかるその音に、しかしなぜか?


心の衝動と疑問を感じながら、喰は声のした方へ視線を移した。


それは会長のデスクの後ろにある隅のガラス張りの戸棚で、中には学校に関する資料が入っているはずだ。


「びっくりしたよ、なみなみ先輩、いるなら一声かけてよ?」

雪子は少しむっとした様子でそちらに向かって言った。


「はは、どうもすいません」


言葉とともに、彼の姿は戸棚の側面からゆっくりと前に現れた。


うつむき加減で、片手で額と目を覆い、ただ不敵な笑みだけを見せている。しかも、右肩にはなんと正体不明の生物がだらりと乗っていて、ただならぬ神秘的な雰囲気を漂わせていた。


透明化の能力!そんな映画の中だけの出来事に、喰は大きく驚いた。この時の彼の感想はただ一つ、(この人の出てき方がカッコよすぎる…)ということだった。


「僕は生徒会副会長、王城涙言おうじょう るいげん。君たちの先輩ではあるが、能力者として同士でもあるから、気軽にどうぞ」


「ああ、王城先輩、どうも」


「わ、わっ!こ、こんにちは!」

恋はどうやら緊張しすぎているようだ


「ははは…」

涙言が不敵に笑う。

「言われてみれば、君という後輩はただものじゃないな。輝夜のあの表情を見るのは初めてだ。次も頑張れよ」


「は、はあ………」

喰が軽々しく同意するわけにはいかない。会長に殺されかねないからな…


「王城先輩?」

輝夜が黒く曇った笑みを浮かべる。


「あら、どうやら余計なことを言ってしまったようだ。では、僕はこれで」


「ここにいる全員が忘川さんのことを知っているということを踏まえて、次は会長の私の番ですね」

輝夜は自信に満ちた笑みを浮かべた。


「なにあれ?!かわいい!」

雪子はすぐにソファから飛び降り、涙言の前にやって来ると、好奇心いっぱいの表情で涙言の左肩にいる正体不明の生物をじっと見つめた。


その生物はまるでイモリのようで、大きな目をして、おとなしく涙言の肩の上にへばりついていた。


「……」

妹に邪魔をされて、輝夜は一瞬言葉に詰まった。


「アルファと呼んでくれ」


「それ、なみなみ先輩が飼ってるの?触っていい?」


「痛がらせないなら構わんよ」


「わたしも触りたい~」

可惜と可怜も雪子のそばに楽しそうに駆け寄った。二人ともこの生物に強い興味を持っているようだ。


(これが女の子にモテる秘訣なのか?) 


でもあの小さな奴は確かに可愛いよな。向かい側に座っている恋だって興味津々な顔してるし。


ただ、会長の今の表情が恐いな…大人しくしている方が良さそうだ。


「むしろ涙甜ちゃんが好きそうなタイプじゃない?」


「可怜も多分ちょっと好きかも…」


この双子は人差し指で興味深そうにそっとアルファをつついた。


「コホン!」

輝夜の声が皆の行動を遮った。


「やはは…」可惜は気まずそうに笑いながら、可怜を連れて輝夜の傍へ戻った。


雪子はケラケラ笑いながら、元の位置に戻って座った。


「はあ…」

輝夜は窓の外を見てから、振り返りながら力なくため息をついた。

「もういい、今日はここまで。明日の朝また続きをしよう。では、解散」


「よーし、可怜、帰るぞ!」

可惜はすぐに生徒会室を飛び出していった。


「あ、待ってよお姉ちゃん」

ドアの外に出た後、可怜は中に可愛らしく顔を出して、「それでは先輩方、また明日~」

という言葉を残して、廊下に消えていった。


輝夜は少し身支度を整えると、入口の方へ歩き出した。


「待、待ってよ会長!」

喰はすぐにソファから立ち上がり、引き留めようとした。


輝夜は喰を一瞥しただけで、傲然と豊かでふわふわとした金髪を振りながら、喰の横を通り過ぎた。オレンジの香りが一瞬で喰の鼻腔に押し寄せた。


「あー、お姉さん待って~!」

雪子はすぐに輝夜に追いつき、振り返りながら言った。

「明日も来てね、先輩、それじゃバイバイ!」


喰の差し出した手は空中で止まった。え?ええ??この解散の速さにはちょっと…そうだ!家に帰って伊の様子を見ないと。


「それでは忘川さん、王城先輩、俺もこれで失礼します。」

そう言い終えると、喰はくるりと背を向けて出口へ歩き出した。


「それじゃ、あたしも……」

恋も立ち上がった。


「ああ、ちょっと待ってもらえるか?少しだけ時間をくれないか」


その声は大きくないが、足を踏み出そうとした喰をしっかりと立ち止まらせるには十分だった。彼はおずおずと振り返った。


「王城先輩、何かお話したいことでも?」


「ふっ、そんなに警戒しなくてもいい。僕が君たちに手出しをするつもりはないからさ」


「あい?」

恋は首をかしげて不思議そうな表情を浮かべた。


「雪子からあの密室での話は聞いたよ。道理で、君の判断力と実行力には感心させられた」


「は、はあ…」


「その何とか…田寄長嶺の能力は『能力借用』ってやつだな。この能力は僕や輝夜のよりもずっとずっと強力だ。マジで言うと、もし僕がその可能性を推理したとしても、君と同じ行動を取っただろうよ」


「……」

喰は何て返事すればいいかわからず、ただ聞き続けるしかなかった。


「雪子は僕にとって大切な後輩だ。だから、彼女を守ってくれて…感謝する」


「俺は何もしてませんよ。そんな、頭を下げないでください先輩」

相手がここまで誠実に感謝されると、喰は一番どうしていいかわからなくなる。


「そ、そんな!喰君はあたしたちを守ってくれたじゃないですか!」


「えっ!?」


まさか恋が突然そんなことを言い出すとは、喰は固まった。そして発言した本人もその言葉の大胆さに気づき、顔を赤らめてうつむいてしまった。


「ははは、そういう時は素直に受け入れろよ」

涙言は笑いながら言った。

「だが、お前が特別だからか、それとも他の理由かは知らんが、君たちは運がいい」


「その話はどういう意味ですか?」


「僕の知る限り、密室に閉じ込められるのは本来7人のはずだ。少なくとも僕と輝夜、そして可惜と可怜はそうだった」

いつもと変わらぬ落ち着いた口調で、驚くべき事実を語った。


「あいっ?」恋は首を傾げながら顔を上げた。


「つまり、ひとつの密室には、追加任務を持った二人がいるってことだ」


「……!」


密室にいた時からそんな可能性を考えてはいたが、ここで裏付けられるとは思っていなかった。


喰は内心大きな衝撃を受けながら、心中的な疑問を解くために、涙言に向かって問いかけた。


「なら、7人目は他の六人が全員会议室に着いてから现れるのですか?」


「その通り。それだけじゃない。まず、能力者が転移された阶を第二阶、主要な活动阶を第一阶と呼ぼう。全员が第一阶に移动した后、7人目は第二阶に転送される。この时、第二阶中央の障害物は消え、床は透明化する。上から下のすべてを観察でき、どんな会话もはっきり闻こえるようになる」


喰と恋は息を呑んだ。声も出せない。


「そしてさらに恐ろしいのは、その人物は『フィールドバフ』を得ることだ。つまり、第一阶と第二阶を自由に行き来できる能力を持つ。ただし幸いなことに、第二阶では武器は提供されない……」


「……」喰はただ後悔の念に駆られ、冷や汗が背中の服を濡らしていた。


もし本当にそんな人物がいたなら、密室で妹に念動力で長嶺を気絶させようとした自分の行動は、極めて無鉄砲だったと言えるだろう……


「王城先輩、その人物の追加任務も、やはり最低一人を殺すことなのですか?」


今さらこの答えがどうでもよくなっているとはいえ、喰はやはり聞かずにはいられなかった。


「ほう――どうやら田寄は君たちにそれを話したようだな?」

涙言は深遠な笑みを浮かべた。

「だが残念ながら、その者の追加任務は、生存者の能力を特定することだ」


もし涙言が自分を悪役のようなイメージに仕立てようとしているなら、彼は成功した。


なぜなら、恋でさえもその不敵な笑みに思わず息を呑んだからだ。


「えっ?」

何だその任務は?ちょっと難しすぎるんじゃないか、と喰は思わず感じてしまった。


「生存者の能力を知った後、頭の中で確認することができる。だが、一つでも間違えれば即死だ」

涙言は言葉を止め、喰を見た。

「乙女、もしお前がそんな任務を与えられたら、どうする?」


「……」


まさかここで話題を自分に振られるとは思わなかった。喰は少し躊躇い、後頭部に手をやりながら笑って答えを言った。


「俺なら確実にサボるよだって、どうやって他人の能力が本物かどうか確認できるっていうんだよ?」


(これはきっと王城先輩からの試探だったのだろう。)


喰には、どう答えれば自分にとって責任ある答えになるのか、まったく分からなかった…


というより、心の中ですでに答えを出してしまっていたからこそ、非常に恥ずかしく感じていた………


任務は生存者の能力を特定すること。つまり、逆に言えば、死んだ者の能力は確認しなくてもいいのだろう?


(これもきっと妹の神代ちゃんの小賢しい趣味なんだろうな…)


「……はは、そうか」

戸棚にもたれかかった涙言は、意味ありげな不敵な笑みを浮かべた。


え?待てよ、そういえばなぜ王城先輩はそんなに詳細に知っているんだ?


第七人の存在だけでなく、その人物の任務に至るまで把握している。


まさか…と考えただけで、喰は思わず一歩後ずさってしまった。


「安心しろ、僕はその第七人じゃない。だから、そんな恐い顔で僕を見なくてもいいんだ」


「…ご、ごめんなさい」

恋もそれに気づいたかのように、小さな顔を雪のように青ざませていた。


「その後の話はまた今度にしよう。ただ、神代アイリの任務がそんなに単純じゃないってことを伝えたかっただけだ」


そう言いながら、「では、こんなところだ。明日な」


涙言は入口に向かいながら、後ろ手に軽く手を振ると、その姿が徐々に透明になっていった。


ま、まじでカッコいい退場の仕方だなあ!!これはまさに喰がずっと憧れていたもので、自分も体験してみたい!


「お、乙女さん…」

その時、恋が声をかけてきた。

「前からずっと機会がなくて…ありがとうございました」


「……え?何が?」


「つ、つまり密室の件について…」

恋の小さな顔がさらに赤らんだ。


「そういえばさっき、普通に俺のことを『喰』って呼んでたよね?」


「あいっ?……」

さっきのことを思い出し、恋の頭からは湯気が出そうだった。


「へえ~~~~」

そんな可愛い反応を見て、喰はもっとからかいたくなった。


恋といえども、そんな感嘆の声を聞けば、相手がからかっているのだと気づく。彼女はむっとした様子で出口の方へ歩き出した。


「もう行きます!」


喰は悪戯っぽい笑顔を浮かべて、すぐ後に続いた。

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