ファンと僕と
「晴、おま、どした!?」
雪人が驚きと戸惑いを含んだ声で僕に詰め寄る。
「んー、僕にもよくわからないんだけどね?なんかステージからみんなの姿を見たらさ、僕の悩みなんてちっぽけだなってやっと割り切れたっていうかさ?気持ちが軽くなったんだよね」
「……ずっと待ってたんだぞ、晴」
「晴くん、本当に大丈夫?」
風花は僕のことをまだ心配してるみたいだけど、本当に問題ないんだよね。なんでなのかわかんないんだけど。
「いやぁ、本当に大丈夫なんだよ。今までなんだったんだ?ってくらいさ。2人とも、心配も迷惑もかけて本当ごめんね」
安堵する2人の表情に、僕は改めて申し訳ない気持ちを抱く。だけど、いつもよりよっぽど気持ちは楽なライブ終わりだった。
雪人、風花と僕は家の方向が全然違うので、ライブの打ち上げは後日にして今日は解散した。
なんだか気持ちの高まりが治らない中、気を取り直して家への電車に乗り込む。
でも幸か不幸かそこには僕達のライブTシャツを着た子達が乗っていた。
「今日のSTのライブほんと良かったね!」
「私も初めて見たけど、見に来てよかった」
そんな興奮気味な声に嬉しさがこみ上げるけど、さすがにここで身バレなんてことは避けたかった。恥ずかしいもん。
だけど、そんな僕の願いとは裏腹に運命っていうものは僕達をつなげたがるようで……
「……あっ」
2人組のうちの1人と目が合ってしまった。
終わった。ここでバレてしまうとちょっと面倒な事態になってしまう。そう身構えたけど、その子は少し笑ったかと思うとまるで気がついていなかったかのように僕から視線を外してもう1人の子と会話を再開した。
多分だけど気を遣ってくれたんだろう。その優しさが今はありがたい。
そして僕が降りる駅に到着すると、気遣ってくれた子の方だけが同じ駅で降り立った。なんなら出口も同じみたいだったので、いつもはしないんだけど、さっきのお礼も兼ねて話しかけることにした。
「そこのキミ!今日、ライブ見にきてくれたんだよね?」
「は、はい!!えっ、なんで話しかけてくれたんですか?」
「ん?いや、さっき電車の中で僕と目が合ったのに黙っててくれてたでしょ?それのお礼、かな?たまたま同じ駅、同じ出口に来たわけだしさ?」
「そうだったんですね……そんな、お礼とか気にしなくて大丈夫なのに」
「僕もいつもだったらスルーしてたかもしれないんだけど、今日はなんだか心地いい気分だから、キミにもお裾分けしたいなって」
本当、いつもだったら言わないようなこと言ってる僕に、女の子は笑みを浮かべて僕のことを見ていた。
今日は、もう一歩だけ前に踏み出してみようか。
「あのさ、お礼ついでにもし良かったらどこかでお話しない?」
僕の未来が大きく動く音がする。
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