第四十九話:風で氷を巻き散らしちゃえ作戦
説明しよう!「風で氷をまき散らしちゃえ作戦」とは、御琴とホノカの合わせ技に風魔法を応用する作戦である!
剛速球で飛んでいる氷を風で打ち砕き、細分化して敵の体内で破裂させると言うなかなかのえげつなさを誇るのだ!
「まずは土台作り!」
御琴は両手から溢れんばかりの氷塊を創り出す。——心なしかその出来栄えは、いつもより乱暴なものとなっている気がする。
「私の出番ね!!」
空中で停滞するそれと同じ数だけ火の粉を用意して、ホノカは一つ一つ丁寧に着火した。
(ボッ…………ジュジュッ……)
文字通り尻に火が付いた状態で氷塊たちは垂直に跳び上がる。
「仕上げに入ろう!!!」
「りょーかい、任せとけ!!!」
待ち焦がれていた『スーゼファルカ』組。三日月形の風の刃を徹底的に浴びせ、拳ほどの大きさの氷塊を一瞬にして粉塵に変貌させた。
「よっしゃ!上手くいったね!!」
御琴はホノカと顔を見合わせハイタッチをした。彼女の目論見通り、氷の粒子は無事<強欲>の隙間だらけの腕に吸収されて行く。
(シュウゥ……パキパキパキィィ…………)
暴風で出来た腕と言うかっこうの的を母体とし、霜はこっそりと組織を支配下に置いて行った。仮に<強欲>が異変に気付いたとしても、奴の鈍さでは駄目になった腕を切り離すことが関の山だろう。
(ふふん!私ったら冴えてる~)
技が決まったビジョンを描き、優位に立ったつもりで居る御琴だが——自身がまだ窮地を脱していないことを忘れてはないだろうか。
「…………てばっ……!御琴ってば!」
手相の代わりに渦巻く、風の紋様が浮かぶ巨大な掌はもう目と鼻の先にあった。
「そろそろ破裂させないと!!!」
呑気に妄想の世界に浸っていた御琴は、切羽詰まったホノカの声で現実へと引き戻された。
「……いけない、そうだった!」
矢庭に掌を合わせ、花のように指先だけを開く御琴。この動作がどのような意味を成すのかはさっぱりだが——今はあれこれ言及している暇はない。
全員が技の成功を切に願い、彼女の一挙手一投足に熱い視線を注いでいたその時
「必殺番号第一……!!!」
御琴の謎の掛け声と共に、<強欲>の腕周りに白い輝きが集中し始めた。——経緯はどうであれ、技自体の成功の兆しは見えている。
(ミシミシ……ミシ…………)
一寸また一寸と接近する度に、腕はひびの入った窓ガラスのような音を奏でた。
それを聞いた御琴はほくそ笑み、ずっと言いたくてウズウズしていた決め台詞を腹の底から発した。
「狐雨大爆発ッッ!!!!!」
いまいち締まらない技名(当の御琴は最高にイカすと思っている)を言い終えるのと同時に、<強欲>の腕は爆散四散する。
(シュウゥウゥゥッッッッ……!!!)
さながら水に浸けられた凍結乾燥材のように、ほろほろと舞う怪物の破片。否が応でも体にまとわりついてくる執拗さに生理的な嫌悪感を感じつつも
「上手くいってよかったぁ…!!!」
「アイツも俺達の実力を思い知ったんじゃないか!?」
「うっ…………ほっとしたら急に吐き気が……」
勝利の雄叫びを上げる一行、彼等の間を流れる空気は明朗になる。——強張っていた腹筋が緩み、ここに来て体内のリバースが爆発しそうなホノカを除き。
「喜ぶのはまだ早い!我々は無数の腕の一本を撃退したに過ぎないのだぞ!!!」
油断をする一行にナシュイは喝を入れた。大元を絶たねば、今のような不意打ちは何度でも起こりうるからだ。勝って兜の緒を締めよ、の精神で戦いに臨む必要がある。
「真面目ちゃんが正しい、今回ばかりは気を緩めないようにしないとな……ところで赤いお嬢ちゃん……?げーの調子は大丈夫そうか?」
「……あんまり」
————行く手を阻む暴風と悪戦苦闘を続け、御琴達は何とか旧『スヴァボーダ城』に引き返すことが出来た。そして、廃墟の中や瓦礫の影に身を隠すと、ベルギアと<強欲>の壮絶な戦いを見守っていた。
「うわぁ……ここまで来たのはいいけど……」
使命のために戦う風神に、本能のまま暴れる七叡星。互いに一歩も譲る気配はない。
「どのタイミングで入ればいいのかな……」
御琴は頭を抱えた。作戦会議の頭にナシュイが述べた通り、下手に動いてベルギアの足枷になっては本末転倒である。
適時の参戦の好機を逃さないよう、両者の動きを目で追っていたが——そのチャンスは突如として到来した。
「俺様はエレーナの魂を救い出し、あいつらを無事に逃がさなくてはならないのだ……貴様との戯けもこれまでッッ…………!!!」
厨二心をくすぐる鎧を身に着けたベルギアが、<強欲>の体内に潜り込んで行く。
「あぁっ!!!絶対今だ!!!!!」
劇的な戦況の変化に乗じて、御琴一行も物陰からの攻撃を開始した。
(ビュウゥゥウウアァアァアァアアア…………!!!)
体内と体外両方からの攻撃を喰らってはひとたまりもない。にっちもさっちも行かずに、悶え苦しむ<強欲>相手に——第二次御琴班は、血も涙も無い集中砲火を浴びせ続けるのだった。




