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第四十七話:結成!第二次御琴班!!

 先程の冷たい感触、彼女の()の力に起因するなら納得——している場合だろうか。


「何だ……この光景は…………!」


 <強欲(パルテノス)>に代わって佇んでいたのは、山を丸呑みしたかのように極大な氷塊だった。真ん中には()()か何かで出来た大穴が開いており、体の芯まで浸透する勢いの冷気がそこから放たれている。


「えへへ、びっくりしたでしょ?」


 あどけなく照れ笑いをする御琴とは対照的に


()()()()なんて可愛い言葉では片付けられないぞ!!!」


 ベルギアの表情は青白いものとなっていた。彼が驚くのも無理ない、眼前の巨大氷塊の正体こそがあの<強欲(パルテノス)>であったのだから。


「まさかここまでやってのけるとは……」


 感心と驚愕の情緒が入り乱れ、喉がつっかえたベルギアは小声で呟く。

 彼女がそれなりに強く、伸びしろがあることには前々から気付いていた。——しかし、この短期間で七叡星を仮死状態に持っていく程に成長するとは思ってもみなかった。


「私()()じゃこんな凄いこと出来ないよ?」


 彼女一人では出来ない——含みのある言い方によって、ぼんやりとしていたベルギアの頭の中に最も重要な疑問が芽生える。


「……そうだ!!!皆は無事に旧都を離れられたのか!?」


 自分が<強欲(パルテノス)>からの脱出が遅れたばかりに、班員達の身を危険に晒してしまっては、()()()()も甚だしい。

 唯一、無事が確認出来ている御琴に現状を尋ねるベルギアだったが


「お生憎様、誰かのお陰で何人かここに残されちゃったわ」


 その質問に答えたのは、彼女とはまた別人の声だった。つっけんどんな言葉に釣られ振り返ってみると——そこにはホノカ、ナシュイとラードゥ、彼等が抱える班員達の姿が。主戦力となるメンバーが一堂に会し、各々が武器を片手にしたり顔をしていた。




 ——数時間前の作戦会議に時は遡る。


「ちょっと待って、私はここに残りたい」


 一同が退却ムーブに包まれる中、残留の意を示したのは他でもない御琴であった。先ごろの調査への立候補と言い、どうも彼女は例外的な行動を取りたがる節がある。


「御琴!あんた何言って!!……駄目よ、これ以上の無理はさせられない!!!」


 ホノカは御琴を引き留める。石像(タロース)との戦いで御琴は各部を負傷し、とても万全とは言えない状態だった。彼女を心配するホノカには、当然見て見ぬ振りなど出来る訳が無い。


「私もホノカに賛成だ、君も負傷者の一員……どうか地上で安静にしてはくれないか?」


「一応俺からも……適切な療養を受けないことは体にとって毒だぜ」


 ナシュイとラードゥをはじめ、他の班員達にこれに同調し退却を促す。彼等には一切の悪気は無く、ひとえに御琴を思っての発言だった。


「でも……」


 あたかも魚類のダツ如く口を尖らせる御琴。仲間達の思いやりを素直に受け入れつつも、彼女はどこか納得が行かない様子。


「…………やっぱり、皆にはちゃんと話した方がいいかな」


 訓練中は予定が大詰めだったため、お互いについて紹介し合う機会に恵まれなかった。故に調査班の仲間達にはまだ、自身が記憶喪失であることを伝えられていない。


「勝手でごめんね、私……実は自分のために調査に参加してて……」


 原理はまるで謎だが、<強欲(パルテノス)>が記憶を紐解く鍵になると直感で分かる——そう伝えれば、皆も思い直してくれるだろうか。僅かな期待を胸に、御琴は実情を語りだした。


「……そうだったのか」


 誰にでも、人には言い辛いことが一つや二つはある。御琴がここまで動機を話さなかったのを咎める者は一人として現れなかった。


「…………けど君一人だけを置いて行く訳にもいかない、どうしたものか……」


 自国の問題解決に、私情がきっかけとは言え積極的に貢献してくれた御琴。彼女の意思を『スーゼファルカ』人達は出来るだけ尊重したかった。

 熟考の末、導き出された結論は——ナシュイ率いる弓隊と医者見習いラードゥ、親友兼保護者のホノカを部下に添え、『グラニーツァ』に残る御琴を援助するというものであった。


「これが私達に出来る最大限の譲歩よ……もう!感謝しなさいよね!!!」


 居残り組代表(ホノカ)はいつも通りのツンデレ構文で御琴を小突く。


「【ハーデース】捕虜の身柄は、我々が責任もって留置所に引き渡します!」


「彼等の上司……【卿相(デスティーノ)】の動向についてもお任せください!必ず尻尾を掴んで見せます!!!」


 地上に戻ることとなった非戦闘員の者達は、ナシュイに代わって【ハーデース】関連の事後処理をする役を買って出た。


「皆……ありがとう……本当にありがとう……っ!!」


 得体の知れない自分のために、知り合って間もない人々がここまで親身になってくれることが嬉しくて仕方ない。感謝を述べる御琴の瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと溢れていた。


「そんなに畏まるなよ!これも全部班長の人徳だ!!!」


「あんたの明るさと勇敢さに触発されて、私達は今ここに居るんだからさ」


 口々に応援の言葉を投げかける班員達。本人の自覚なき所で、彼女は未知の脅威に立ち向かう『スーゼファルカ』人の()になっていた。

 御琴は涙を拭い、第二次御琴班の発足を声高々に宣言する。


「よし!安心して地上で待ってて!!!風神様と一緒に、絶対あいつを追っ払ってやるから!!!!!」


 熱く背中を押されて踏ん切りはついた。ベルギアの援護に向かうべく、やがて御琴は仲間達と共に飛び立つのであった。

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